2001年2月10日(水)

シャノンに花束を!

シャノンは情報理論の創始者であり、コンピュータに2バイトで処理させることを始めた人です。そのことで、単なる計算機ではなくて、電子的な頭脳が生まれました。今のコンピュータの創始者と言ってもいいでしょう。

と同時にシャノンの通信理論は、コミュニケーション理論の根本をも作りました。言語学者であるローマン・ヤコブソンとも親交があり、情報の伝達を図示したものは、ヤコブソンの図形と良く似ています。

わたくしは、シャノンの名前は前から知っていましたが、関連性理論の序文によると、シャノンのコミュニケーション理論、コードにとって発話が「伝わる」ことに対する批判がしめています。関係性理論は、伝わらないこと伝わるとはどういうことであるのか、のコミュニケーション理論であり、その中では、新しいコミュニケーション理論が提唱されています。


シャノンの理論は、文字列が発信者から受信者に伝わることそのこと自体をテーマにしているように、図からは読むことができます。しかし、文字列が伝わることと、意味が伝わることは別のことです。これは、シャノンのせいではありませんが、コミュニケーションについての誤解を生んだのではないでしょうか。文字列をつたえることと、意味を伝えることは違います。

中島義道さんは『対話のない社会』などで、「公園では走らないで下さい」などのことばを批判しています。暴力的に要約すると彼は公徳心を説くのは余計なお世話だあるいは言葉のロゴスに戻れ、という論調ですが、それ以前に、標語が貼ってあれば、文字列が人の目に触れれば、意味が伝わるはずであるという安直なコミュニケーション観が問題なのではないかと思います。私は、こちらを批判すべきだと思っています。

もとの本を読み返してみたいと思って、たまたま文京区立図書館で、シャノンの邦訳を探して、愕然としました。区立にはないのです。そればかりか、その後、いろいろと当たってみたところ、早稲田大学の図書館にもなく(原著はあります)、学情で調べてみても、大学で108校しか入っていません。もし、大学や公立図書館が、市民にとって、学生にとって、いろいろなものごとを考え直したいと思ったときに、物事の筋道を最初から考えてみたいと思ったときに、たよりになる場所であることをめざしているのであれば、大学も公共図書館も両方とも失格と言うことになります。シャノンは、現代社会の複数の意味で古典となる本だからです。一方で、文京区ではシャノンで調べてもらった時に、情報理論の本ですがと言っているにもかかわらず、ハーレクインロマンスをさして、これですか? と聞かれたことと比較して、たまたま本があったという幸運な時をのぞいて、自宅でインターネットで検索した方がよほどいろいろなことを知ることが出来ると言うことです。今日は、自宅ではなくて事務所でwww.google.comで調べましたが、文京区の図書館よりもよほどましです。この状態では、やはり、資料費が減るのも当然のことです。


ロード・エルウッド・シャノン(Claude Elwood Shannon)プロフィール

クロード・シャノンClaude Elwood Shannon 情報理論の元祖:ブール代数をコンピュータに入れた人(「ちえの和」より)

ATTのページでの紹介



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