2002年9月17日(火)

「歌に歌に歌に」ではなく(つづき)

かつての編集者は、活動や運動のオルガナイザーでもあった。本や雑誌は、それだけのためにあるのではなくて、何かを組織したり、実現したり、ネットワークを作り出すメディアであった。本というものは、知識を固めたものであるが、それでも、そこから、議論が生まれたり、批判が生まれたり、何かが生まれた。

たとえば、「くまのプーさん」を訳し、自身でも「のんちゃん雲に乗る」などの児童文学を書いた石井桃子は、児童文庫という私設図書館の運動家でもあった。そして、岩波書店の編集者でもあった。この本と前川氏の『市民の図書館』が、図書館を作る運動のバイブルであるということを考えると、面白い。

柳田国男は、「郷土研究」という雑誌によって、民俗学を作った。学者であり、活動家であり、編集者でもあったといえよう。そういう意味では、自分もその列に並べるのはおこがましすぎるが、古典的な編集者、あるいは編集者の本道にいるのかもしれない、などと思ったりするのである。ひょっとすると私はけっこう偉いのかもしれない。いや、絶滅寸前の種なのか、それともこれから復活する新種の先駆けなのか。

もし、突然変異だとすると、待っていても突然変異は現れないだろう。ということなら、意識的にその遺伝子を伝えていく必要があるのかもしれない。というのは、いま、実は、研修と言うことを考えているのである。オリンピックセンターで、大妻女子大学リーダー研修ということで、楽しそうで、晴れがましい笑いを浮かべた彼女たちが、ぞろぞろでていくのを加藤哲夫さんを待ちながら眺めていて、ふと思ったのである。

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