2001年3月27日(火)

危険な兆候

久しぶりに日誌を書く。本日、午前中から午後にかけて、自宅の引っ越し。2DKから3LDKへ。ここに4月半ばに事務所も合流する。事務所スペースは、20坪+7.5坪+3.5坪(合計30坪)から、家庭と共有の10坪へ。月額、20万円から25万円の節約となる。年間にすると240万から300万円の節約。さらに電話は、3回線から2回線へ、専用線も2回線から1回線へ(こちらは6月から)と減らす。これで、月額3万円だから、36万円の節約。

夕方、知り合いの出版社の社長さんから電話。最後に景気はどう、という話になって、事務所を縮小しますと言ったら、長話になった。採用品の売り上げが、かなり減っているということで、一致した。しかも、注文が遅い。例年なら、在庫の問い合わせは、2月末なのだが、今年は、今頃問い合わせがきている。彼の話によると、ある会社では、採用品ということで出荷したが、結局、予定していた講座が、大学の都合で開かれなくなって(人が集まらないと言うことか)、キャンセルされてしまったこともあるらしい。講座が開講されるかどうかすら、この時点でも流動的であるということだ。

しかも、英語関係の場合、他人の執筆した教科書をコピーして「プリント資料」という名前で、安く(コピー代しかかかっていなんだから)売りさばいてしまうことも横行しているという(これは別の人に聞いた話)、国語学系ではあまりきいたことがないことだ。

別の話だが、出荷をお願いしている運送会社の社長に聞いたところ、取り扱いしている出版社はみんな同様で、出荷数が大幅に減っているということである。

うわさによると建築関係のS社では、昨年よりも25パーセント教科書の売り上げがダウンだと言うことだ。ひつじのように夫婦だけで当分やっていくと決めたところは、まだよいにしろ、社員が数十人いるところは、かなりきびしいことになるのではないか。電話を掛けてきた社長のところも、倉庫を大幅に縮小する予定とのことで、手を打ちはじめているが、中堅のところは即座に手を打つのも難しいだろう。

全般的に10パーセント以上の売り上げ減になっているような感触である。大学生協の書籍部の方々、情報があったら、教えてほしい。

研究書の出版社は、教科書の売り上げで何とか持っていることが少なくない。教科書の売り上げで、利益を補填しているのである。それで堅い本を出している。状況がこれほどまでに深刻であると、出版社のいくつかにとってはこの夏が山になるだろう。研究書の出版自体が、限りなくノンプロフィットに近いビジネスとして行ってきたが、崖っぷちまで追いつめられることになる。ちゃんとした本を出していこうと思ったら、本を出して売るという出版の事業だけでは無理になっている。皮肉なことだが、脱業界的な発想がなければ、本業自体がなりたたない状況である。

私についていっても、いろいろ発言をしたり、いろいろ活動をして、本業が疎かになっていると思うひとがいるとしたら、それは間違いなのです。本業以外の別の道を見つけない限り、あと2年持たないだろう。2年程度のうちに、本業を支える別の食い扶持を見つけ、作り出さない限り、出版を続けられないだろう。電子本や情報のデジタル化の問題以前に、大学の仕組みが末期的な状況を見せ、そのことによって、実際の外堀が埋められているということである。

このことを考えても、再販制という仕組みは、壊しておくべきではなかったか。再販制は、大きいか古い出版社のためにしかならないからだ。

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