マイナー言語研究書の旬を作りましょう
2020年2月20日(木)

マイナー言語研究書の旬を作りましょう

ひつじメール通信(2月6日)にて配信しましたものを元にしています。

東京の渋谷の西、二子玉川駅の前のショッピングモールで1月31日と2月1日に行われた「二子玉川 本屋博」に行 ってきました。本屋博のwebページには次のように書いてあります。

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「二子玉川 本屋博」は、40の個性あふれる本屋が一堂に会し、
本屋の魅力と可能性を発信するフェスです。
あの店主に会いたい、あの本屋でしか出会えない本がある、
そんな、あなたにとっての「唯一の本屋」と二子玉川で出会いましょう。
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私は、二日目の土曜日の昼に出かけてきました。たいへんな、人出で、人にぶつからないで歩くのが難しいくらいでした。40件の本屋が一堂に会しているわけですから、けっこうな人混みでした。このように、人は集まる時には集まるのだなあというのが、率直な感想です。センスのいいおしゃれな感じだったり、小さな商いにでてくる店主の人柄だったり、これまでメインと思われてきた街の本屋さんとは違ったイメージを打ち出している書店が注目されていて、小さなブームが起きていると私は思いました。扱っている書籍は、美術書であったり、文芸書であったり、心にしみる要素のあるステキな本が多いと思いますので、学術書を作って売っている私とはどのような接点があるのか、というのも問題意識として持っていました。

本屋博の画像

私は、毎週夜に通りに見かけている「青いカバ」という古本屋さんの店をのぞきにいきました。その隣の隣で、元さわや書店フェザン店の店長の田口さんの顔をみましたので、挨拶しました。盛岡に出張にいきました折に、一度挨拶をしたことがあったからです。

今は、楽天ブックスネットワークという、以前は大阪屋栗田書店という老舗の取次店(問屋さん)であったのが、楽天に吸収された会社にお勤めになり、街の本屋さんがなくなっていく中で、書店をやろうとする方々への支援をするホワイエというプロジェクトで仕事をしているそうです。少ない冊数でも、仕入れて売れるということです。結果として書店がメインでは成り立たせるのが難しくても、サブの商品として仕入れて売ることができる仕組みとも言えます。クラウドファウンディングで沖縄のことばの絵本を刊行しますので、沖縄の島には書店がありませんので、そういうことが利用できれば、美容院の後ろの棚とか、雑貨屋の隅とかに本をおけるこのサービスは願ったり、叶ったりなのですが、沖縄は楽天では取り扱っていないエリアだとのことでした。

ホワイエについてはこちら

田口さんは、書店業界では、有名人で、本も出しています。その中の一つが『まちの本屋: 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』というもので、ずっと刊行されたのは知っていたのですが、読まずにおりました。文庫化されたものを売っていいらっしゃいましたので、1冊購入しました。さっそく、その晩に読みました。

田口さんに本の売り方の師匠がいまして、伊藤さんというのですが、伊藤さんと話しをしている中で、本が書店で売れるには、売れる旬を知る必要があること、そして、その旬は、お店をお客さんを「耕す」ことによって、生まれるというのです。その耕して、旬を迎えることで書籍を沢山の冊数を売った話しは、商売人である私にとっては感動的です。そのことを自分のこととして振り返った時、学術書に旬はあるのか、ということを考えはじめました。

学術書にも旬はあります。それは、ある学問が立ち上がって、いろいろなエネルギーが生まれる時です。これは、学問ジャンルの立ち上がりということに関わります。そのことについては別の機会に述べます。それとともに、盛り上がるような旬はほとんどないけれども、勢いを作っていく必要のあるものがあります。

一般書のように爆発的に売れる旬ではありませんが、ある種の盛り上がりと勢いはありえます。300部の本であっても、ささやかな盛り上がりは必要です。ここで、前回の話しにつなげるのですが、英文学術書籍に盛り上がりを起こすにはどうしたらいいのか。まずは、タイミングですが、その本の刊行自体が大きな出来事ですので、そのことをできるだけ広く伝えることだと思います。初動は、急いだ方がよいのではないかと思います。後は、同じ立場の方を巻き込むようにしたい。マイナーな言語を研究している人は少なくないのですが、それぞれが別のマイナー言語を研究していらっしゃいまして、他のマイナー言語に興味が少ないようにお見受けします。でも、私は声を大にして言いたい。マイナー言語の研究者よ団結せよと。お互いに買い合うことで、層が広がります。お互い買い支えようではありませんか。マイナー言語の研究書が、大学図書館に50冊を超えて入ること。そのことを実現したいです。

広い方々には、まずそういう名前の言語があるということを伝えたい。そういう名前の言語が研究されているということを伝えたい。この部分はできるだけ、広く拡散したいと思います。そんな言語があるんだと知っていただくのが重要。ここでも、マイナー言語の研究者の方のバケツリレー的な、地道な伝言ゲームが重要です。どうか、そんな言語があったんだでかまわないと思いますので、お知り合いの方にもお伝え下さい。その上で、大学に所属されているマイナー言語の研究者の方はぜひご自身の大学図書館とご自身の研究室にお入れになって下さい。マイナー言語の新しい発見には、他の言語を研究している方にも役に立つトピックが少なくないでしょう。すいません、どうぞお互いに買い支えて下さい。それが地道な旬を作るということになると思います。

ウォライタ語の研究書を刊行します。小さくてもいいので旬を作りたいです。

A Descriptive Study of the Modern Wolaytta Language
若狭基道 著
菊判上製カバー装 定価45,000円+税 ISBN978-4-8234-1024-6
http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1024-6.htm

『まちの本屋』については、まだ、語りたいので、次回に続きます。

最後におかげさまでクラウドファウンディング、最初に設定した目標を越えて、第二目標も超えることが出来ました。最終的に416万5000円になりました。ご支援くださいました方々に御礼申し上げます。ありがとうございます。とともに、今回は、ご支援下さらなかった方にも刊行した暁にはどうぞお求め下さるなどご支援下さいましたら、幸いです。

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執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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