1997年8月1日A 書評ホームページ好調

書評ホームページのアクセスが、好調である。ひつじ書房よりも、一般性が高いということだと思う。たぶん、今日中にひつじのアクセス数は追い抜かれることになるだろう。また、Yahooで、書評ということばで検索しても、数カ月前はほとんど無かったのに、久しぶりに見てみたら、かなりの数に登っているのに驚いた。時機は、熟したといえるだろう。

Internetの世界ではプッシュということが、盛んにいわれている。情報を今までは取りに行かなければならなかったのに、届けてくれるから便利だ。テレビの放送に近いから、広告も取れるということのようだ。しかし、ちょっと待ってほしい。テレビと同じであるなら、テレビの方がましだ。今、我々が行っている実験、新しい試みは、市民革命の中にある。市民による革命であると同時に、市民を作る革命でもある。

情報を、ただ享受、消費するのではなく、発信も同時に行うというのが、この中の重要な点だ。書評のページも基本的にはこの発信と受信の間を取り持つということをねらっている。ただ、単なる書評情報誌ではない湯川理論の中間子のようなものをめざしたい。

 1997年8月1日B サーバーの午前中の不具合

本日の午前中、サーバーがアクセスできなくなっていた。サーバーにつけたカウンター用のNetCloakというソフトの期限切れが原因であった。とはいうものの、これは数日前にはずしていたはずなのだ。すでに、別のソフトによってカウンターの表示は行っていた。まさか、はずしたあとも影響するとは思っていなかった。この時間にアクセスした方にはまことに申し訳ないことであった。すみません。

 1997年8月1日C パソコンを使える税理士さんを募集中

いままでの税理士さんは、エクセルも知らない方だった、やはり、会計の一部か、かなりの部分をパソコン化したいと思う。できれば、マックのソフト、財務革命が使える人がいいのだが、そういう方はいらっしゃらないだろうか。ということで、税理士さんを募集中である。

 1997年8月4日 紀要の話し

『人文学と情報処理』の次に出る号に、「紀要論文の電子化とインターネット」というタイトルで、執筆した。興味がある方は、ぜひこの特集を購入してほしい。発行元である勉誠社の連絡先は、03-5351-3141である。一応、私の書いた部分は、kiyou2.htmlで、読むことができるようにしたが、ぜひ、購入して読んでいただきたい。

 1997年8月5日 東京堂の小島さんの出版記念会

昨日、小島さんの出版記念会が、岩波セミナールームで開かれた。小島さんの本に取り上げられていた10社の方、それから、出版労連の関係者、東京堂の同僚の方や、友人が集まった。直接、お会いするのは初めての出版界の大先輩(影書房の松本さんによるとシーラカンス)も祝辞を述べられて、なかなかなごやかないい会であったと思う。

大先達が、義や志ではなく、行きがかりで生き延びてきたという発言をしていたのは、笑いながらであったゆえに重いことばであると感じてしまった。生き延びよ、生き延びなければ、ならない。やはり、それを肝に銘じよう。

小島さんの本にも登場する現代企画室の太田さん、リベルタ出版の田悟さんは、ひつじの入居している興新ビルの住人である。聞いたら、ホームページも作る気のようなので、ご指導させていただこう。

 1997年8月11日 7日、影書房の松本昌次さんに会ったこと

小島さんの紹介で、小島さんのパーティで松本さんに会った。そして、休日であった小島さんと影書房を訪問した。その目的については、今はちょっと伏せることにするが、そのことについては近い内に報告できると思う。

松本さんは、元未来社の編集長で、野間宏の紹介で、未来社に入社した後、花田清輝や埴谷雄高などの本を出し、人文書の出版では一家をなしている方だったにもかかわらず、自ら影書房を興された方である。花田清輝の本、『アヴァンギャルド芸術』だ、編集したとき、若干25歳であったというから、驚く。処女編集が、この本とは。多くの人文書の源であるこの本を編集した方が、とても元気で、気取りも何もなく、缶ビールをついで下さったのは。言っていることばがとても陳腐であるのが、残念だが。本当に驚くべきことは、そのしなやかさと持続力だろう。

お会いできただけでも、ミーハーな喜びを感じてしまう。

昨年無くなった小川道明さんの本『棚の思想』をいただいてしまった。4月から急に外税に変えた出版社、書店、取り次ぎの人々は、小川さんに対してどんなことばをかけられるだろうか、とおっしゃったが、まさにその通りである。消費税が導入されると決まったとき、小川さんや未来社の西谷さんら少数の人が、外税にすることを訴えた。その時の大きな誤りが、今回も繰り返されたのだ。

 1997年8月13日 再販制が守られても、価格は破壊される

本日の日経新聞によると小学館が、文庫本を秋にスタートするようである。これは、再販制は、守られても、価格はどんどん破壊されていくということではないだろうか。私は、本の定価を下げ、回転率優先の経営を書店に強いるこのような文庫本政策は、本の価格というものへの信頼を破壊すると言うことでは、再販制以上の問題では無かろうか。再販制が破壊された場合は、書店が、定価をつけることが出来る。しかしながら、再販制が維持された状態で、低価格商品を押しつけてくることは、書店の主体性を奪った上での、定価支配と言うことになるのではないだろうか。

 1997年8月14日 価格が、破壊されると

低価格の本を書店にどんどん押し込むとどういうことになるだろうか。安い商品だから、1点1点内容を見たりということが、できない。右から左に流すように「処理」をしなければ、人件費が出ないことになる。ということから、アルバイトを使って、単に水道のように商品を流すということになっていく。大手出版社が、自分の利益だけを追求して、低価格の本ばかりを流していくのは、害毒だと思う。

これは、再販制が崩れること以上に、大問題なはずだが、書店人もだれもが、追求しないのは、再販制論議に隠れてしまっているからだろうか? 低価格商品も、再販制が崩れていれば、書店サイドで値段を上乗せすることもできる。書店の利益水準を下げる商品を、押しつけられるのも、再販制の害毒ではないだろうか。

 1997年8月19日 松柏社 森さんを訪ねる

書評ホームページに、広告と簡易ホームページを作らせていただくため、森さんを訪ねた。話が盛り上った。簡易ホームページは、こちらです。どうにかご出稿くださりそうな感じです。 

 1997年8月20日A 松田さん、来る。

筑摩書房の中興の祖にして、天才編集者である松田哲夫さんが、ひつじを訪問された。筑摩の方ではなくて、現在、刊行されている『季刊 本とコンピュータ』の編集委員として次号の記事で、ひつじを取り上げて下さるとのことで、取材に来られたのである。松田さんは、多くの方がご存じのように、『文学の森』という新しいタイプの文学全集を成功させ、また、マンガをそれまで比較的堅い出版社と思われていた筑摩で刊行するに当たって力をふるわれた方である。20年前には片隅に置かれていたサブカルチャーを、出版の文化の中に位置づけるとともに、そっちの視点から、文化を再構成した方だと思う。私は、筑摩ほどの規模もカンバンも流通網もない中で、本を作っている。その中で、何か今までと違ったものを出したいと思っている。様々な問題を解決していかなければならない。私にできるだろうか。

今回、自著『編集狂時代』(本の雑誌社)を下さったが、その日の晩に読んでしまった。いや、恐るべき方です、本当に。まだ、お読みになっていない方は、ぜひ一読をすすめます。

 1997年8月20日B 地方小の川上さんに会いに行く

地方小には、創立以来だから、7年強お世話になっている。本の出荷は、月に2度ほどくる地方小からの注文を、段ボール箱に詰めて、地方小に送るだけで、その後、全国に送るのは全て地方小を通して行っている。遅いと言っても、全国の書店から注文を受けられるのは、地方小のおかげなのである。ただ、どこから注文が来たか分からないこと、常備ができないことなど、もう少し展開を広げたいと思った時に、少しではあるが不満はあるのである。スイマセン。本当に大変お世話になっています。まだ、わからないが、一応、日本の大手取り次ぎであるトーハンと日販に口座を開設するお願いに行くことにした。川上さんには、そのことを申し上げに行った。もちろん、うれしい顔は、されない。「話しは、聞きました。」とおっしゃった。

 1997年8月22日 21日、納涼大会(ひつじの)

スタッフ全員と納涼大会に行った。茗荷谷の和という焼き肉屋さん。彰国社の編集の鈴木氏のおすすめであった。たしかに、安くておいしかった。会のあと、近くを歩いていたら、筑波大学があった。別にトリップしたわけではなく、東京教育大学の跡地なのでしょう。そのそとに、銅像(?)があり、これがなかなか面白い物で、鯉をモチーフにしたという人間の頭の張り付いたサカナや、一角獣があった。近所のみなさん、サカナに4人も乗って騒いでいたのはひつじ書房です。スイマセン。

 1997年8月27日 第4回 日本語DTP組版研究会

今日は、日誌というよりお知らせである。

**********************************************************************

【第4回 日本語DTP組版研究会】

○テーマ 「活字組版は継承されたか」

      ・本当に活字組版はすごかったのか。
      ・電算写植になってその優れた点は受け継がれたのか。
      ・DTPになって日本語組版の良い点が失われたのか?

○講 師 小駒勝美(新潮社辞典編集部)
     境田稔信(校正者・日本エディタースクール講師)
     進行役:秋田公士(法政大学出版局編集者)

○日 時 9月5日(金曜日)6時半より8時半まで

○場 所 東京電機大学11号館16階大学院会議室(1603)

○主 催 日本語DTP組版研究会

○共 催 NETPUB(ネットワーク出版研究会)

     大学出版部協会編集部会ネットワーク出版研究小委員会

○会 費 1000円(テープ興し代)

 会費はテープ興し代とさせていただきます。出席者には後日,PDFファイルで
 の記録を無料でダウンロードできるように,パスワードを当日,申し上げます。

○主な内容

 活版,電算写植,DTPと変遷をしてきた日本語組版について,校正者であるお
 二人に,編集者である秋田さんが進行役となって,ざっくばらんな話しをし
 ていただきます。

 その話しの中で,諸組版の実際を検証し,冷静に,組版の問題点,課題を語
 り合いたいと思っています。

 

○参加方法

 本会に出席される方は、電機大出版植村(TDU00028@niftyserve.or.jp)か,
 ひつじ書房松本功(isao@hituzi.co.jp)まで,メールでご連絡下さい。

 当日の飛び込み参加も可です。

**********************************************************************

日本語DTP組版研究会は,特に書籍の組版を考えようと有志で月に1度ほど集
まりを持っている会およびメーリングリストです。

NETPUBは,学術出版とインターネットを考えるために作られました会およびメ
ーリングリストです。

大学出版部協会は,23大学出版部が加盟する協会で,下部組織である編集部会
の中で,インターネットと学術出版についての研究会を持っています。

***********************************************************

 1997年8月28日 ゆっくり行こう

8月も忙しく日々が過ぎた。もう早や8月も終わりである。慌ただしい中で、どうにかやり過ごしたという感じである。いつになったら、余裕たっぷりで過ごせるだろうか。

今日は、新しい池袋のジュンク堂の開店の日であった。池袋では、激しい書店の競争が行われている。ジュンク堂は、専門書を扱うことを宣言している。専門書を出している出版社にとって、新しい状況が生まれてくるだろうか。

9月には、トーハンと日販の口座が取れそうな感触だが、取れたら取れたで今まで無かったに等しい書店政策が必要になる。営業であちこち交渉に行かなければならないこともあるだろう。しかし、本のことを考えている人に会うのは、楽しみだ。ひつじの初志を失わず、ゆっくり地道に行こう。




日誌 97年7月

日誌の目次へ
ホームページに戻る


ご意見、ご感想をお寄せ下さい。

房主
isao@hituzi.co.jp
(だいたい、届くようです。)

万一、届かなければこちらへ。

房主(jbc03436@niftyserve.or.jp)