平面→立体
猫のぬいぐるみを作るのにはまっています。
なぜ突然に始めたのかというと特に理由はなく、本当になんとなくとしか言いようがないのですが、教本の型紙通りに布を切って縫ってと進めると、最初は平面だったのにその果てに立体造形が出来上がり、たいへん感動します。
なぜこんなに面白いのか、普段作っているものが平面だから…?と思ったところで、本は平面ではなかったなと思いました。ゲラに向き合っている時間が長いので、その紙面内、つまり平面で捉えがちなのですが、出来上がった本というのはまごうことなき立体物です。
本の装丁を作るときには、立体を意識することは多いです。本の束幅は何ミリになるのか、紙厚と頁数から計算します。上製本ならチリ3ミリの寸法を足して印刷データを作らなければいけません。カバーの折り返しぎりぎりにあるオブジェクトは、実際に作ると表紙の厚みによる誤差で数ミリずれることがあるけれども問題はないか、などなど。
では紙面を作っているときは? 読みやすい本は、本のノド側の開きにくさを考えて余白がとってあったり、ノンブルが見やすくなっていたり、紙面という平面の上でも、立体であることをきちんと考慮した設計になっているように思います。
もう一歩進む(?)と、ツメというものがあります。小口側ピッタリに配置した見出し、特に辞書によく付いているあれのことです。だいたいツメはベタ塗りにしますので、それがたくさん重なることで小口側にもはっきり浮き出てきます。弊社の本でつけることは稀なのですがその稀の機会に、ずっとゲラで見ていたものが製本されて出来上がってきて、小口にきれいにツメが現れていると感動します。平面が立体に越境する瞬間だと思っているのですが、どうでしょうか。
電子書籍はまた話が変わってくるのですが、まずは紙の書籍を作っている以上、これがモノになるということを意識したいと思いました。
余談ですが、昨年2023年のオープンオフィスのポスターは、本が積み上がったところを、本の天側から写したようなデザインです。
このイラストですが、よく見ると白抜きの本文用紙部分の背側が少し凹んでいて、上製本の表紙にあるミゾ(と、背のイチョウ)が再現されていることがわかります。デザインを初めて見たとき、立体物を平面で記号的にする場合にそこを拾うのかと、感動したところです。
なお、今年のオープンオフィスのポスターは、本に「扉」という形を重ね合わせたものです。
本と扉、たしかに立体にすると似ているかもしれません。
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