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2024.6.20(木)

平面→立体

猫のぬいぐるみを作るのにはまっています。
なぜ突然に始めたのかというと特に理由はなく、本当になんとなくとしか言いようがないのですが、教本の型紙通りに布を切って縫ってと進めると、最初は平面だったのにその果てに立体造形が出来上がり、たいへん感動します。

なぜこんなに面白いのか、普段作っているものが平面だから…?と思ったところで、本は平面ではなかったなと思いました。ゲラに向き合っている時間が長いので、その紙面内、つまり平面で捉えがちなのですが、出来上がった本というのはまごうことなき立体物です。

本の装丁を作るときには、立体を意識することは多いです。本の束幅は何ミリになるのか、紙厚と頁数から計算します。上製本ならチリ3ミリの寸法を足して印刷データを作らなければいけません。カバーの折り返しぎりぎりにあるオブジェクトは、実際に作ると表紙の厚みによる誤差で数ミリずれることがあるけれども問題はないか、などなど。

では紙面を作っているときは? 読みやすい本は、本のノド側の開きにくさを考えて余白がとってあったり、ノンブルが見やすくなっていたり、紙面という平面の上でも、立体であることをきちんと考慮した設計になっているように思います。
もう一歩進む(?)と、ツメというものがあります。小口側ピッタリに配置した見出し、特に辞書によく付いているあれのことです。だいたいツメはベタ塗りにしますので、それがたくさん重なることで小口側にもはっきり浮き出てきます。弊社の本でつけることは稀なのですがその稀の機会に、ずっとゲラで見ていたものが製本されて出来上がってきて、小口にきれいにツメが現れていると感動します。平面が立体に越境する瞬間だと思っているのですが、どうでしょうか。
電子書籍はまた話が変わってくるのですが、まずは紙の書籍を作っている以上、これがモノになるということを意識したいと思いました。

余談ですが、昨年2023年のオープンオフィスのポスターは、本が積み上がったところを、本の天側から写したようなデザインです。

このイラストですが、よく見ると白抜きの本文用紙部分の背側が少し凹んでいて、上製本の表紙にあるミゾ(と、背のイチョウ)が再現されていることがわかります。デザインを初めて見たとき、立体物を平面で記号的にする場合にそこを拾うのかと、感動したところです。




なお、今年のオープンオフィスのポスターは、本に「扉」という形を重ね合わせたものです。


本と扉、たしかに立体にすると似ているかもしれません。
オープンオフィス、開催中です。研究書を出したいという方のご相談を承ります。9月2日までですが、お考えの方はお早めにご連絡ください。





2024.6.5(水)

紙面デザインも

学会で出展をしていると、ひつじさんは本のデザインがいいですね、とお褒めの言葉をいただくことがあります。
本の内容やイメージにあわせて、普段お付き合いのあるデザイナーさんや場合によっては新しいデザイナーさんにお願いをして装丁を作っていますが、なんとなくひつじ書房っぽい感じ、というのは出ているのかなぁと思います。そうやって、お褒めいただけるような装丁を作ってくださるデザイナーさんには本当に感謝です。さらに、外側の装丁だけでなく、普段何気なく読んでいる本文も、読みやすく綺麗に組みあがるように努力しているので、見ていただきたいなとも思います。

ひつじ書房の「ひつじ研究叢書(言語編)」や「Hituzi Linguistics in English」などのシリーズの全体のデザインや、最近だと『昭和前期における口演童話の変遷』(中村美和子著)の装丁を手掛けていただいたデザイナーの白井敬尚さんがこの3月に『組版造形』という本を出されました。こちらは本の外側の装丁ではなく、本の中側、組版について、レイアウトやフォントなどについて国内外の本の紙面を例にとって解説がされている内容です。

白井さんのデザインはグリッドシステムを基本として考えられているので、取り上げられている例もその観点からのものが多いですが、本文が組まれるようになってからどんな試行錯誤があったのか、どんな名作が生み出されたのかを知れて、実作業をしている身としてもとても勉強になります。グリッドシステムはシステムなので、ある意味誰でも使用することができますが、ただグリッドに揃えるというだけでは、それだけで何か素晴らしいものにはなりません、それをデザインとして見た目に良く飛躍させるのは、デザイナーさんの力量だと取り上げられている例を見て思わされます。

学生の頃に通ってた床屋のおじさんが、「黄金比というものがあって、自然物も世の中で美しくできているものは黄金比で出来ている」と言って、顔と髪の毛の比率も黄金比で仕上げれば美しくなるのだと、私が持って行った髪型見本の切り抜きとは違う何かに髪型が仕上がったことが思い出されます。ただそれに合わせればいいというわけでもないんですね。ちなみに黄金比や白銀比は装丁デザインの話でも良く出てきます。

電子書籍の時代ですが、リフロー型の書籍の場合、紙面のデザインというのは消えてしまいます。
これは紙の書籍の強みのひとつだと考えていますので蔑ろにはできません。

美しい紙面をお届けできるように、日々勉強です。



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