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9月

2016.9.27(火)

製本工場



いつもお世話になっている星共社さんの工場へ、上製本の製本工程の見学に行きました。

今回見に行ったのは、海老澤が先週のスタッフ日誌に書いていました、英語コーパス研究シリーズ第5巻『コーパスと英語文体』の製本です。星共社さんにお願いをして、見学させていただくことになりました。製本の工程を、しかもひつじ書房の本を作っている工程を実際に見られるという、とても貴重な機会をいただきました。

まずは、折り加工を施された折り丁が、本のページの順番になるように丁合されたものを仮止めする「下固め」の段階を見ました。背の部分に糊がつけられます。工場の長いラインをうねうねと運ばれて、糊が乾いていきます。
先には裁断機が待ち構えています。三方裁断機です。



本の天・地・小口の三方を一度に裁断し、整えます。裁断機の3つの刃が独特の動きをしていて、見ていて飽きませんでした。
続いて丸み出しの工程。先ほど固められた背を熱で温めて、糊を緩め、背に丸みをつけます。この工程はあまり意識していなかったので、妙に納得してしまいました。ハードカバーの本の背って、そういえば丸くなってるなと(もちろん、角背の本もありますが)。普段見慣れていて当たり前のことなのですが、「本の背の丸み」もきちんと段階を踏んで形作られていくのだと再認識しました。




丸みをつけられた背に、茶色っぽい「にかわ」が塗られます。接着剤です。ラインの先には表紙が待っていますが、その前に背の補強です。ガーゼのような布と花ぎれが貼られ、さらににかわが塗られます。

ここでラインが一旦下に潜っていき、また上に上がっていきながら表紙に包まれます。なかなかアクロバティックな動きです。あっという間に見返しと表紙がぴったりとくっついてしまいました。
もう見た目はまさに「本」ですが、ここでさらにひと工程。表紙の背との境い目の部分に圧力をかけて溝をつけます。これで本が開きやすくなりました。
最後に背と小口が交互になるように20冊ほど重ねられ、機械で上からぎゅーっと押されます。これで接着剤がよくなじみます。本ができあがりました。



製本しおわった本にはカバーとスリップがつけられるのですが、星共社さんではほぼ手作業でつけるとお聞きし、驚きました。


今回の見学では、さらに講壇用聖書の手作業による製本の様子も見せていただきました。星共社さんは聖書を作ることがおおく、三方金や箔押しなどの聖書製本技術に優れているとのことで、高級感あふれる大きな聖書はとても圧巻でした。

あっという間の工場見学でしたが、とても勉強になりました。見学のために、工場のラインの稼働の調整をしてくださった星共社の方々に感謝したいと思います。ありがとうございました。






2016.9.21(水)

英語コーパス研究シリーズ第5巻『コーパスと英語文体』まもなく刊行



先週、英語コーパス研究シリーズ第5巻『コーパスと英語文体』が責了となりました。昨年から刊行が始まったシリーズの、3冊目になります(順不同で刊行しておりますので、既刊は第2巻『コーパスと英語教育』と第4巻『コーパスと英文法・語法』です)。

タイトルの通り、今回の巻ではコーパスを使った英語文体研究の歴史と現状を扱っています。後半には事例研究が収録されています。例えば、共著名義で公開された文学作品の著者を、そのことばから推定する。英国の高級紙・大衆紙の言葉遣いを比較する。アメリカ大統領演説・日本首相演説を分析する。どれも身近なことばをコーパスにすることによって、新しい研究ができるようになった例と言えます。

私が特に興味深く読んだのは、西尾美由紀先生の「The Dickens Lexicon Digitalとその活用研究」です。というのは、現在あるコーパスをつかって研究をするのではなく、そのコーパスの構築から始まる話だからです。広島大学・熊本大学出身の研究者20名が、故山本忠雄博士の研究を受け継いでその資料(カード)を整理・裏付けのうえでデジタル化し、またほかのDickens作品や文学作品のコーパスとも結びつけて公開するために研究を続けています。この論文ではさらに、それを使っての研究例として西尾先生の「Many’s the NP」という慣用表現の構造研究を紹介しています。新しいコーパスはこうやって生まれるのかという息づかいが聞こえてくる論考です。

『コーパスと英語文体』は、10月1・2日に開催される英語コーパス学会で最初の販売をする予定です。書店に並ぶのも、10月初旬〜中旬ごろからになります。ぜひご覧ください。

(英語コーパス研究シリーズシリーズ紹介はこちら






2016.9.7(水)

カメは何と鳴くのか



最近、子どもが気に入っている絵本で『とりかえっこ』というものがあります。
ひよこが散歩をしながらいろいろな動物に出会い、鳴き声を交換していく、といったストーリーです。区の読書推進運動の一環で、幾つかの絵本の中から選んで頂いた物でした。

「ピヨピヨ」とはじめ鳴いていたひよこがほかの動物と鳴き声をとりかえっこし、最後に猫と鳴き声を交換したあとの物語の終盤、ひよこはカメと出会います。

「カメさん なきごえとりかえっこしよう」

さて、カメは何と鳴くのでしょう。カメが鳴くのをこれまで聞いたことがある方はいらっしゃいますでしょうか(インターネットで検索するとシューシュー、キューキュー、あ゛〜などと鳴くというかたもいらっしゃるようです)。
ネタバレは好まれるものではないと思いますが、ここでネタバレしても困る方もいないと思いますのでご紹介しますと、絵本でカメは……

「む」

とこたえます。ひよこは家に帰り「む」と鳴いて親鳥を驚かせて……、物語は終わります。

子どもはえらく「む」が気に入って、「む、む」といって毎日笑い転げています。
子どもの中ではカメの鳴き声は「む」になったと思います。

鳴き声に関しては、同じ動物の鳴き声が世界各国の言語で全く別のもので表現されているので、その生き物のほんとうの鳴き声を聞いたことがあるかという経験ではなく、ひよこは「ピヨピヨ」と鳴くという知識があってのものなんですね。
実際、「ぴよぴよ」と聞こえなくもないですが、それは私自身の頭の中に「ひよこ=ぴよぴよ」という思い込みがあるからなのかなと考えています。

自由に、別の音をあててみると面白いかもしれません。





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