『韓国語citaと北海道方言ラサルと日本語ラレルの研究』ができます
円山拓子著『韓国語citaと北海道方言ラサルと日本語ラレルの研究』がもうすぐ刊行となります。
こちらはひつじ研究叢書(言語編)の第141巻であり、わたしが編集にたずさわった初めての書籍でもあります。
社長や先輩社員のサポートのもとで編集をおこない、ときには責任感と緊張で押しつぶされそうになりながらも、刊行まで無事に漕ぎつけることができ、うれしさもひとしおです。
本書では、アスペクト・ヴォイス・モダリティにまたがる多様な意味を表す韓国語の助動詞citaについて、その多義性のメカニズムを、文法的特徴や意味的特徴など複数の側面から分析しています。そしてこれらの分析にもとづいて、cita・北海道方言のラサル・日本語のラレルという3つの助動詞の対照分析をおこなっています。韓国語のcitaは日本語に翻訳しづらいときがあるそうなのですが、北海道方言のラサルを使うと、ニュアンスまでぴったりと表すことができる場合が多いのだそうです。韓国語と北海道方言に共通点があるというのは、面白く、興味深い点だと思います。
ここでは、本書がcitaに対して新たに設けた用法カテゴリーである「事態実現用法」に注目してみましょう。事態実現用法には、ある動作や状況が始まり、何らかの結果に至るまでの一連の流れの中で、特に終結の局面を重点的に述べるという特徴があります。この事態実現用法がcitaとラサルの共通点の1つであり、日本語のラレルにはない用法となっています(厳密には受身用法に類似した例において、ラレルにも意味的に重なる用例があるため、3つの言葉の関係はより複雑です)。
本書であげられているラサルを使った事態実現用法の例を1つご紹介します。
この辺りはもう雪がとけらさってる。
ここでは、話者が気づかないうちに、いつのまにか雪がとけるという事態が実現し、その事態の最終的な局面にある、という意味をあらわしています。citaにも同じような機能を持つ用例があるのですが、ラレルを使って「雪がとけられている」とは言えませんよね。
このような例文を豊富に用いてcita・ラサル・ラレルを分析しているという点も本書の魅力であります。
秋の学会に持って行くのが今からとても楽しみです。ひつじ書房の書籍出展ブースにお立ち寄りの際は、ぜひ手にとってご覧になってください。
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