恋する者の孤独と、滑稽と、悲劇にささげられた1冊
今春、ひつじ書房としてははじめての、ジェンダーに関するテキストを刊行しました。
その名も『恋をする、とはどういうことか?』。副題の「ジェンダーから考える ことばと文学」がついていなければ(ついていてもか)、なかなか刺激的なタイトルです。
本書の「はじめに」には、「「恋におちてしまった」と感じた「私」は、「私」をつぶさに分析し始める。」と書かれています。このすこし冷静になるかんじ、みなさま覚えがあるのではないでしょうか。
…いずれにしても、「恋」は「私」を中心として、ほかの誰か(何か)と関わることであろう。そのことは当然、相手に対する深い関心も引き起こすが、同時に、自己に対する、それまでには思いもしなかったような疑問や関心を、引き出してしまう可能性が高い。「恋におちてしまった」と感じた「私」は、「私」をつぶさに分析し始める。相手のことを考えて高揚する気持ちがあったとして、それを生み出している私の頭の中はどうなっているのか、それをどのように表現すべきなのか(したいのか)。あるいは、…(本書「はじめに」より)
本書には、「 」が多用されています。ジェンダーを学ぶということは、「恋をするとは、どういうことか?」という超難問にたちむかう武器として携えることであり、また、新たなものの見方としての「ジェンダー」でもあります。「」で括ることで、いままでの既存の考え方や枠組みから抜けだし、新しい世界へとびだせる1冊となっています。
著者の先生方は、編者の高岡尚子先生をはじめとする奈良女子大学文学部の先生方(岡崎真紀子/小山俊輔/鈴木広光/高岡尚子/中川千帆/野村鮎子/三野博司/吉田孝夫〔敬称略〕)です。奈良女子大学で開講された授業で、「「ジェンダー」の基礎について学び、考える授業に、「あなたと恋におちる時」というサブタイトルをつけたところ、受講学生の数が激増した」とのこと。さまざまな専門分野をもった著者らによる、文学作品をあじわうときや、映画を鑑賞するとき、さまざまなとき自らの視点をくるりと転回させるヒントがかくされています。
本書のデザインを手がけてくださったのは、小川順子さん。読みやすくて、すてきなデザインにしていただきました。また、本書のカバーをはじめ、本文中にもかわいくすこしくすりとするようなイラストを描いてくださったのは山本翠さん。
この場を借りて、お礼申し上げます。
「女性」だけではなく、「男性」にもぜひ読んでいただきたい書籍です。ぜひ。
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