2013年10月10日(木) 相見積もりの見積もりだけのご依頼について------------- 最近、ある方にお伝えしたことを、文面を少し変えて掲示します。 ------------- 出版社は、企画を立て、企画を出版するという事業をなりわいにしておりますので、見積もりをただ、作ると言うことはございません。出版しようという考えがなくて見積もりを作るということはありえません。ですので、内容を検討をしないで、国文学の出版社のある出版社のように、依頼があれば見積もり書を作るということをHP上で告知している出版社もあるようですが、印刷所であれば、そのようなことはありえることですが、出版社の事業のやり方ではないと私は思います。 したがいまして、ひつじ書房では、科研に申請する場合に、企画の内容について検討することを行いまして、ひつじ書房が出版社としてリスクをおかして、刊行したいと考えた場合のみに、出版することにしています。 内容を検討しないで見積もり書を作るというのは、出版社としてはとんでもないことです。ひつじ書房ではそのようなこと、出版社にとっては自殺行為だと思います、はしておりません。印刷所ではありませんのでそのようなことはいたしません。 内容を検討しまして、学術書の企画として、採算が採れる書籍となりうるのかを検討しまして、その上で、企画を進行しています。出そうと思っても、採算が取りにくいと考えました場合に、研究成果公開促進費の申請をお手伝いします。 採算を採ることはなかなか難しいと考えています。研究成果公開促進費についても、上限でも製作実費の65パーセント程度しかされません。助成額だけでは全く足りないのです。したがいまして、ある程度売れると判断いたしませんと、刊行を決断することは困難です。著者の方にご負担をお願いすることもあります。本年の科研でいいますと、補助額が申請額の4分の一ということもありました。その場合をどうするのかなども事前にご相談する必要があります。 また、根源的な問題として、この見積書の様式には根本的な欠点があります。出版社が出す見積もりでありながら、印刷製本紙代しか記入する欄のない見積もり書だということです。コストだけしか書く場所がありません。機能、出版社が何をするのか、どういう貢献をするのかを記載する箇所がありません。これは物品納品用見積です。物品の役割、機能が同一であるという前提での見積もり書です。500mlのビーカーを500個納品する時にいくらかかるか、という時のための見積もりです。 たとえば、ひつじ書房は言語学の書籍を出版しています。日本各地で開かれる関連学会に本を持って行って販売したり、広報活動を行っています。10000件ものダイレクトメールなどでの学会員への告知などの広報宣伝活動も行っています。海外の学会へ、数十万円をかけて出張することもあります。たとえば、来年はミネアポリスで開催されるアメリカ言語が会に数十万円をかけて出展します。言語学について勉強したり、英文書籍を造るために欧文編集の勉強をしたり、欧文フォントの勉強をしたり、発音記号のフォントを独自に開発したりもしています。当然のことだと思います。問題は、編集の実際の能力も、問わない見積もり書で、値段を競うということを求めるという、全く理不尽なこととになっているということです。 助成額と販売額のトータルで採算を採ります。見積もり書は、そのような考えに基づいて、丁寧に金額を計算して割り出すことになります。ひつじ書房は、学術書で生きていますので、見積もり書の金額の安価なことだけで評価する方法は、非常に問題だと思います。発行する気持ちのない書籍の見積を作るというのはおかしなことですので、他社で刊行するものについての見積を依頼されて作ることはしていません。 追記京都大学での申請の場合、京都大学学術出版会は、3社見積もりをしないで、1社のみの見積もりで申請を行っているとのことです。その社を選択する合理的な理由をきちんと説明できればいいということで、理屈にかなったことをきちんと出来ている例もあることを記しておきます。 しかしながら、多くの大学では、いささか過剰防衛のけらいがあり、もっとも安価な見積もりであることを刊行を助成するときの条件と考えているということがあります。これが実際です。したがいまして、所属大学を通して申請する場合は、複数の見積もり書が必要ということになります。 ひつじ書房は、優れた学術書の世の中に公開することを第一優先して出版活動を行っています。不合理と考えることについては、機会がありますごとに、批判を行いますとともに、現実問題としては、それを乗り越えないといけないことであれば現実的に対応しようと考えています。その意味で、必要があれば、見積もり書を複数揃えて申請するということには対応します。ひつじ書房は、見積もりを複数作ることに対して、反対しているので、研究成果公開促進費の申請ができない、とお考えになることはありません。念のため、ここに記しておきます。 ただ、この時期に申し上げたいことは、11月に申請する書類を作成するのにこれまでお会いしたことのない場合で10月になってからのご相談に対応することは、たいへん困難であるということです。企画の内容を検討しますのに2ヶ月はかかります。理想を申しますと8月のはじめまでに、ご相談をはじめたいです。また、この相談のためということもありまして、オープンオフィスという研究書の出版の相談会を行っていますので、今まで一度もひつじ書房の編集者と話しをしたことがない、という方でも相談できますので、その機会をご利用成されますのも、有効な方法であると思います。 ただし、研究の内容についてこれまでお話ししたことがある場合やこういう内容の研究の書籍をまとめたいという話しをすでにされているということがあれば、即座に対応することも可能ですので、企画の検討に2ヶ月間かかるというのは、はじめてお会いして、はじめてご相談する場合です。 執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。 「本の出し方」・「学術書の刊行の仕方」・「研究書」・スタッフ募集について・日誌の目次 日誌の目次へ
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