教科書が学術書の出版を支えている、と言えるか。

2013年7月27日(土)

教科書が学術書の出版を支えている、と言えるか。

教科書が学術書の出版を支えている、といういい方はあいまいだと思う。誤解をあたえるだけの発言ではないだろうか。

教科書が学術書の出版を支えているという場合、次の要素が必要だ。

●教科書の売上げで、その出版社がなりたっていること

●教科書の売上げで、学術書が利益が出ていない部分を支えると言った時に学術書はコストしかもたらさず、そのコストを教科書が繕っているという事実があること

ということになるが、どうだろうか。

ひつじ書房の場合、教科書の売上げは3割くらいである。それが他の出版物を支えているということはない。教科書は、1回作った後は、重版ということができると、学術書と違って、重版時には編集する必要がないので、売れれば、利益性が高いから、重要であるというのはまちがっていないが、それを支えているといえるのだろうか? 学術書を売っていく必要はないという誤解を与えてしまうのではないのだろうか?

学術書は採算がまったく取れないという場合、なるべく学術書を出さない方が、経営的に安定するということになり、結果としてだんだん出さなくなるか、ほとんど言い訳程度に数冊出すということになる。

こうなると看板は学術出版社だが、実際は教科書出版社である。学術書は学術書で採算を採るという努力をしない出版社は、本当の学術出版社としては存続できない、というのが私の考え。なので、教科書が学術書の出版を支えている、という出版社は、実際には学術出版社としては継続できないと思う。

教科書が学術書の出版を支えているといういい方は、その出版社の実態を見ないと本当かどうかわからない。教科書の売上げを、学術書に回すというのがどういうことか、簡単には言えない。

だから、それを一般論にして、議論するべきではない、と思う。


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