ひつじ書房の2013年の抱負

2013年1月22日(火)

2013年の抱負その1

日本語学の臨界領域に関わる企画を立てる。

現在の状況から考えると日本語学の研究書のジャンルの読者は、減少の傾向にあると思われます。その理由の1つは、日本人大学院生は、研究職を志してもなれないという現状があるからでしょう。

竹内洋「第一回 高学歴ワーキングプア  教養難民の系譜(1)」
http://www.nttpub.co.jp/webnttpub/contents/university/001.html

舞田敏彦「大学教員市場の開放係数」
http://tmaita77.blogspot.jp/2013/01/blog-post_13.html

大学での研究職が減れば、大学以外での教育職を勤め先にすることになり、多くの方が、高校や中学での教育に関わる部分で研究に関わっていくことになるでしょう。したがって、今後は、出版でも教育と日本語学の連携、連絡、協働が重要になってくると思います。

その観点から、中学校や高等学校の教育との関係性の強化が、私は重要だと思います。学問と教育は、もっと近づいていくべきです。この方向が、学術出版社にとっても進む方向です。社会と学問の関わりを重要視して、まずは研究と教育の接点の世界に力を注ぐということ。また、このことは、出版社として専門の研究と社会をつなぐ学問コミュニケーションに関わると言うことであります。

この観点から、日本語学にかぎらずことばの出版社として国語教育分野、英語教育分野で、ことばと教育に関係した分野に関わっていきたいと思っています。言語技術は重要であると思っていますが、技術だけではなく、情緒的、芸術(芸能)的な側面もあって、文学と言語学の臨界領域、文学研究と言語研究の中間的な領域を学問ジャンルにしたいと思います。また、市民の日本語を巡る研究。ワークショップ研究、衆議の日本語、共生日本語という新しいテーマ設定。これと関連して、談話分析、コーパス研究のジャンルの研究書・入門書を出していきたいと考えています。

とはいっても、連携したらいいと私の思うそれぞれの領域に、言語研究が関わることは、容易なことではないでしょう。言語教育と言語研究ですら困難なのですから。さらに難しい様々な溝があります。断絶の溝を何とか埋めて、連携ができるよう出版活動を行っていきたいと思っています。

念のために申し上げますが、ピュアな日本語学の研究を、軽視するという意味ではありません。大事にしていきながら、出版分野のバランスをとるということを考えているということなのです。

2013年の抱負その2

「電子学術出版」の実験を行います。

◎電子学術雑誌

神戸大学の定延先生が中心となって進めていらっしゃる日本語音声コミュニケーション教育研究会の電子雑誌『日本語音声コミュニケーション』をPDFで電子的に出版します。音声ファイル、動画ファイルの扱い方の実験を行います。媒体として、問題なく閲覧できるかどうか、実現するための方法や注意点などを洗い出します。ライセンスの処理の仕方についても、PDFはネットワーク型の管理ができないので、個別に閲覧者名をファイルに埋め込むなどなどの手作業が必要となります。その取り扱いの実際をやってみることで稼働するあり方を検討します。

◎英文研究書

遠藤喜雄先生編のカートグラフィーについての英文研究論文集を、紙の書籍を作るとともに、kindle(ePub)形式で作ります。amazon.comで販売できるようにします。amazon.comの取引口座を作ると言うことです。これが問題なければ、英文学術書を刊行していくことができるようになります。このamazon.comでの販売が上手く行けば、海外の英文学術出版の企画を進めていくことができるようになります。

この1年で、採算の採れる事業として成り立つかと言えば、難しいでしょう。2013年としては、実験プロセスと結果をノウハウとして蓄積します。3年以内に、一定の足がかりを得ようと考えています。


執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。



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