2009年4月28日(火) 「Google Book Search」訴訟の和解につきましてのひつじ書房の見解2004年に作られたEpic 2014というフラッシュムービーがあります。2014年にgoogleとamazonが、合併し、googleで何を検索したかということが全て記録され、何を志向したかということがコンピュータに把握され、その上で、blogの書き手に、ネット広告から原稿料が支払われることで、個人の趣向に合わせた情報が提供されるようになっていき、New York Timesなどのマスメディアが凋落していく。ということを2005年の時点で予言しているムービー。ご覧になっていらっしゃらない方は、ご覧になることをおすすめします。 http://www.youtube.com/watch?v=eUHBPuHS-7s&feature=related 「Google Book Search」訴訟で米出版業界と和解合意という新聞記事をご覧になったことと思います。アメリカの裁判なので、日本では関係がないというふうにはならず、著作権を取り扱うベルヌ条約は、国際条約ですので、日本の出版社と著者にも関係があるとのことです。集団訴訟というものが、私にも分かりにくいのですが、アメリカの出版社と著者を代表して訴訟をして、和解案が出たということです。その和解にのるかのらないかを判断する必要があります。何もしなければ、和解にのったということになってしまうということなのです。一方、もし、今回の条件で和解せずに異論を訴えたいのであれば、個別に訴える必要があり、その労力を考えると和解にのった方が現実的ということです。 ひつじ書房の立場を申し上げておきますとひつじ書房は、別途訴訟するということは現実的に無理ですので、和解にのることにします。このことは、うれしく思ってそうするわけではありません。他に現実的な方法がないと思うからです。和解に応じた上で、個別の出版物について、Book Searchに載せるかどうかを検討したいと考えています。和解では、著者も和解に応じた上で自分の作品・書籍を載せるかどうかを判断できることになっています。 和解にのることしか現実的な選択がないという裁判の結論には、アメリカ的(?)な強引さを感じます。一方、著作権者からの意思表示がないものであれば、実質的にその著作物を検索したりして使える合法的な道を作ったということについては、判断が複雑です。米国の著作権法が、著作権が生きている期間を70年に伸ばしてしまったため、本人の許諾が明確にならない場合、転載したり、使ったりするということが、非常に困難になってしまっていました。米著作権法のせいです。この点で評価できる点があると思われます。現在生きている著作権者はみな和解したということになるからです。本当に強引です。しかし、たとえば、国立国語研究所が進めているバンランスドコーパスなどは、googleから、データを入手することができれば、著作権処理などの手間が簡便化して活用できることになりますし、将来的にはgoogleの集めたデータを元に汎用性の広い辞書を作ることも可能になるでしょう。 学術出版社として気になるのは、現在、販売されている書籍が売れなくなるのではないかという点です。売れなくなるということがあれば、今後の出版を今よりも慎重にしていかなければ、ならなくなります。現時点でのgoogleの説明では、販売中のものはBook Searchには載せないということです。また、品切れのもので載せたものも20パーセントまでしか表示しないということです。一部だけということなのですが、この点が興味深いところで、20パーセントまでとした場合、検索でヒットしても見えない部分があることになります。そうなると、その本全体を見たいということになるか、見たいところが見えないのであれば、Book Searchを使うこと自体が受け入れられなくなるということも考えられます。将来のことですが、全体が見たい、探している該当部分を見たいという気持ちが起こるのであれば、書籍の販売を阻害するのではなくて、促進するのではないかという期待も生まれます。 これはどうなっていくのか、どうなるべきなのかという点を、googleによって情報が共有されていくのが目出度いと楽観的になるのでも、googleによってせっかく作った書籍が、できあがった印刷のページだけ取られていくと否定的にだけ考えるのでもなく、冷静かつ柔軟に根本的に考えてみるということが必要なのではないでしょうか。紙の書籍と包括的な検索機能というものが、協調していくものなのか、メリットの点で相反するものになるのかということが不明の中での和解なので、正直よく分からない気持ちですが、ひつじ書房のHPでも何か動きがあった場合にお知らせしますので、ご覧下さいましたら、幸いです。 執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。 「本の出し方」・「学術書の刊行の仕方」・「研究書」・スタッフ募集について・日誌の目次 日誌の目次へ
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