あけましておめでとうございます。2009年は準備の年。

2009年1月4日(日)

あけましておめでとうございます。2009年は準備の年。

2009年は、ひつじ書房にとって、2010年の20周年で考えていることの準備をするための年となるのではないだろうか。準備のための年ということは、仕込みの年ということ。

仕込みの前に種まきがあって、その種が実って、それから仕込む段階になる。出版・編集あるいは製造業がそうなのかもしれない。作るという仕事は、収穫とともに仕込みとを常に両方やっている。誤解無きように言い添えると、準備を正しく予定・計画通りに理路整然と整ってやれるわけではなく、天候不順あるいは台風や日照りもあるし、予想不能のハプニングは当然ある。運任せなのはある程度、やむを得ない。

だから、がんばり方が難しい。がんばり時を決めるのが難しい。本作りで言うと原稿を頂くまでが頑張り時で、いただいた段階で、仕事してのクライマックスは済んでいることもある。原稿を頂くことが出来て、初校が山場になることもある。山場となるところで力を込めたい。山場に力をつくしたいものである。早すぎれば、本当の山場で力が出ない。一方、待ちすぎていると山場が感じることなく、通り過ぎてしまうこともある。これでは、自分の仕事という充実感がない。山場のタイミングを見つけるのは難しい。山場を予想できれば、その仕事を自分のものとして、マネジメントできるわけだが、そんなにうまくは行かない。新人の時は、山場が分からないから、最初から最後まで力を注ぐ、あるいは頑張るべきところではないところで力を注ぎすぎてしまい、山場で力を注げないこともある。とはいうものの、全力を尽くさないと新人の場合は仕事にならないだろう。

他人事のようないい方に聞こえるかも知れないが、そうではない。頑張る私と頑張らせる私がいるのだ。また、ひとつの仕事だけではなくて、複数の仕事を同時に走らせていると同時に全てに均等に力を注ぐことは非現実的でたぶん、それではパンクしてしまう。どうなんだろう、何かを作る仕事の場合、共通することではないだろうか。力の配分は必要である。別にさぼっているわけではない。偉そうにしているわけでもない。

話しを元に戻そう。2009年は、準備の年だ。力を備える時期である。2010年に21世紀型学術出版のスタイルを提案する。21世紀型学術出版のモデルを示す。そのための準備の年にしたい。抽象的ないい方になってしまうが、そうしたい。21世紀型学術出版のスタイルというからには、20世紀型学術出版のスタイルがあったということであり、それとは違ったスタイルがあるべきであるということを主張したいということでもある。21世紀にわざわざ研究者というものになろうとするあなたたちといっしょに考えていきたい。

最後に、年末、年始に読んだ『芸術崇拝の思想』と『日本語が滅びるとき』の感想として思うことを付け加える。『日本語が滅びるとき』でふれられている『想像の共同体』で、近代国家を作る素地として、印刷・出版が、あったということが言われているが、印刷・出版が作っただけではなくて、近代国家が印刷・出版を作ったという要素もある。一方通行だけであったわけではないと考えるべきだろう。とすると印刷・出版があって、近代国家の中の学術システム、大学システムがなりたち、さらに近代的な学術システム・大学システムがあって、印刷・出版システムがなりたったわけである。近代の成り立ちは、他人事ではない、ということである。

『日本語が滅びるとき』は、日本近代文学の話しだが、日本の近代に日本語という母語で、学問ができるようにしたという奇跡についてのこととも関わる。印刷・出版産業が、日本語を作ったわけで、その日本語のおかげで日本近代文学が、成り立ったわけだが、日本近代文学が日本語を作ったということもあり、とともに日本の学問も日本の学問語を作ったわけである。日本の学問語も複線としてのテーマといえるだろう。

守ればいいわけではなく、壊せばいいわけでもない、という中で学術出版というシステムが、知の共有・促進・支援システムだとするとどのように21世紀化するべきなのか、作り直されるべきか、ということは問われているということだ。創造的な破壊ということばで実際には創造の破壊が行われた、ということを考えるなら、破壊しない創造ということを考えるべきではないのか、というのが2009年という過渡期・普請中、つまり備える時の思いである。

山場を考えつつ、セルフマネジメントして、頑張りすぎないように頑張りたい。居酒屋名店10軒制覇しよう。寄席に10回以上行こう。これが今年の抱負?

あけましておめでとうございます。今年もよろしくお引き立て下さい。


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