2008年3月29日(土) 【出版】21世紀における学術出版の「校正」技能の養成はどのようになるか以前は、活字で組み直していたということから 1)文字の照合の正確さ という点が重要視されていたと思う。 1)については、赤字が多く入った場合などには重要さは変わらないが、初校の本文組という点では、著者のデータがそのままページに組まれるので、ほとんど必要なくなった。 問題が起きるのは次の場合である 〈1〉データ自体が不完全である場合。1-1 著者の書いた原稿とデータの不一致、つまりバージョン違いである。 1-2 印刷所が使えない書体を使っている場合。論理記号やギリシャ文字や発音記号など 1-3 著者のワープロで打つ文字が、印刷の際には使えない場合。あるいは厳密な意味では使えない場合。著者はシングルコーテンションマークとしてプライムを使っているが、それらは正しいシングルコーテションマークに替えないといけない。 1-1については、原稿をもらう段階での確認事項であるし、もし、受け取ったものが古い版であることに気がついたら、校正を即座にストップして、著者に正しい版を送ってもらうことになる。 1-2,1-3はその学術書の分野で何が正しいのかの知識がなければ、校正できない。 〈2〉印刷所の作業上のミス。2-1 見出しの設定の際に誤って行頭の文字を削除してしまうケース 2-1は組版所がどのような作業を実際に行っているのかを知らないと行けないし、その他は、組版のルールを知らないと間違っているとか、こうした方がよいと言えない。さらに、組版ソフトの性質についての知識も必要である。 2)3)は、原稿入稿の前に著者自身でwordや一太郎で、表記チェックを掛けてもらった方が確実。表記のルールについては、出版社と相談でということになる。 このようにしてみていくと、比重は活版時代とは違って、組版ソフトの仕組みやフォントの知識、表記のルールやチェックするためのソフトの使い方のようなことの方が根幹ということになると思う。 とすると、これから校正を学んでもらおうとした場合、どういうことから学んでいってもらったらいいのだろうか。 〈3〉割付指定のミス。割付指定のミスを見つけたり、あるいは根本的な欠陥があった場合に対処するためには、本の仕組みについて知っていることが必要だと言うことである。前扉と扉の意味関係や、目次というのはどういうものであるのか、本文における見出しの意味であるとか、版面というものの仕組み。次に、学術書としての、組版ルールである。( )の扱いとか、イタリックの扱いであるとか、生成文法では下付文字の意味は重要であるのか、たまたま、執筆者の好みの問題なのか。 (1)本の構造について(2)学術書としてのあり方これは勉強するしかないわけで、そのためにButcherとA Manual for Writersの勉強会を行っているわけである。 そうすると文字語彙表記に対するチェックするスキルと組版ソフト、デジタルフォントの処理するスキル、学術書の組版の知識が大事だということになる。エディタースクールでやっているような文字照合ではないということかもしれない。素読み校正ということも言われているが、それは「文字語彙表記に対するチェックするスキルと組版ソフト、デジタルフォントの処理するスキル、学術書の組版の知識」を踏まえたものでなければならないということになるだろう。 どうやって教えたらいいのだろうか。 文字照合が出来た上で、構造的なものもというステップで進むのがよいわけだが、文字照合が最終的な目標と思ったり、組版ソフトを使いこなすということの意味が、分からなかったり、分かることが重要だと言っても、理解できないと困ってしまう。校正とは原稿照合のことであると信念を持っていて、現在の校正はInDesginが分からないとだめだと言っても、受け付けないということがある。 とすると文字照合はあくまで一つの要素であって、その仕事のたいはんはワープロレベルで済ませてしまうことがおおむねできるわけで、総合的な本作りの中での一つのスキルに過ぎないということを認識するためには、順番として先に本というものの構造を優先するべきなのだろう。 そうすると今までであれば、まず、エディタースクールの校正講座に行ってもらって、それからというやり方にしていたが、それとは違うやり方が求められるということだ。 課題は分かったが、それでは、どうやって教えたらよいのだろう? 執筆要綱・執筆要項こちらをご覧下さい。 「本の出し方」・「学術書の刊行の仕方」・「研究書」・スタッフ募集について・日誌の目次 日誌の目次へ
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