【出版】2007年秋、沖縄の日本語学会への出店

2007年11月22日(水)

【出版】2007年秋、沖縄の日本語学会への出店

ひつじメール通信にて発信しました内容に少し手を入れたものです。

沖縄で開催された秋の日本語学会に出店してきました。沖縄ということは、東京から、かなり遠いということです。出張の計画を立てる際に気になっていたことは、お客さんが沖縄まで来てくれるのだろうか、ということでした。展示のための出張費を掛けて出向いて、お客さんが来てくれない、あるいはとても少ないのなら困ったことになります。ひつじ書房は、この秋には新刊を結構出しているので、学会で売りたいという気持ちがありました。うーん、積極的に売りに行こうか、出張費を節約するべきかどうしようか、と悩みましたが、しかし、ひつじ書房は、沖縄には先生方がたくさん来られるのではないか、という無鉄砲な仮説をもとに、私を入れて4名を投入しました。

参加された方はお分かりのように、非常に多くの方が学会に参加されていたと思います。お聞きしたところでは発表者はこれまでで一番多かったということです。盛況でした。来られた先生方と新しい企画の話もいくつかできましたし、やっぱり行ってよかったと思いました。見たところ、書籍の展示場所に寄って下さった方もたぶん、昨秋の岡山の時よりも多かったと思います。これは参加した出版社が少なかったので、会場に近い場所に展示場所を設営されたこともプラスの理由かも知れません。お客さんが来ないのではないかと心配していたわけですが、結果として、多くの方にお店に寄っていただくことができました。商売というのは、お客様あってのものですので、人が多く来てくれるととてもうれしいのです。

日本語学会に比べると、一週間前に名古屋大学で開催された英語学会は、会場が2エリアに分かれていて、一方はかなり遠く、広い中庭の部分を隔ててた場所にあってとても苦戦しました。遠い方の会場の方が発表は多かったようです。学会自体への参加者は、多かったのだけれども、書籍の展示場所まで来るのが難しかったのだと思います。土曜日の一日目は多くの方にはお寄りいただくことができませんでした。吉峰が書いていますように大会運営の先生方のお取りはからいで翌日の日曜日には来ていただくことができ、最終的には、昨年よりも、お客様に来ていただくことができましたので、ほっとしました。

出した本の反応については、研究書を出している出版社としてはとても気になるものです。研究の内容が優れていると信じていても、実際に読者の方がいて、本を買って下さることで、経済的にも助かるわけですし、その本を出したことの意味が実感できます。実感できれば、編集者のモチベーションも上がります。出版社にとって本を出すということは、読者の方々へのオープンなプロポーズのようなところがあり、受け入れてもらえるかどうか、いつもどきどきしながら本を出しています。このプロポーズを受け入れてもらえたと実感できるとやはり出してよかったと思います。どんな優れた本であっても、実際に買ってくれる方がいることで、支持している方がいることを実感できます。いつもいつも相思相愛というわけにはいきません。

刊行に際して、出版助成金をいただいて刊行するということもあります。そういう場合は、助成金という後ろ支えがあって刊行するわけですが、助成金というのは制作費のある部分しか助成されないのです。したがって、編集者のコストであるとか、書店に流通させるためのコストというものは、出版を続けていくためには、助成金だけでは十分ではありません。やはり売れてはじめて、出版社としてのコストが回収されますし、ビジネスとしてなりたっていきます。

ですので、学会にいって、売れてほしいものが売れてくれるとほっとするのです。だから、みなさんが支持する研究についてはどうぞポジティブに買って下さい。それは単なる購買行動ではなく、支持を表明する投票のようなところがあるのです。投票といってもいいですし、あるいは「出資」のようなところもあります。支持があつまると、出版社としても読者の応援が実感できます。それは、その研究に対する支持を可視化するということです。一方、書籍の内容とは別に、実際の売上げは会場が良い場所にあるかどうかということに大きく左右されます。優れた本であって本来支持してくれる人が多いはずでも、場所が良くないとそれが目に見えないのです。本来見えてしかるべき反応を感じることができないことになります。そういう重要なことであるのに場所などは、外的要因によって影響されてしまうという不安定な要素があります。

出版活動にとって、地の利を得るということはとても重要なことなのです。そうだとしたら、よい場所というものを確保するために、学会に具体的にお願いしていくことが必要でしょう。学会の大会運営に関わる先生方に、きちんとお願いするということが大事なことであると実感しました。行ってみて、場所が悪かったではあまりにも運まかせです。風来坊? 今までは、そういう考えだったと思います。いい場所であれば、喜び、悪い場所であれば、不運をぼやく。学会で本を売るのは、お祭り・縁日のテキ屋さんの要素はあるわけですが、寅さんでもあるまいし、それではあまりにも他人任せです。場所取りに関して、具体的な提案をすることができるようにすること、そういうことも考えるべき時がきたと思いました。そういう意味で、今回の2つの学会は私にとって学ぶべきことがたくさんあったと思います。無根拠に楽観的ではなく、実際のありかたとしてポジティブに行こうと思います。


追伸 田中君が、ポーズを取っているのは『ガイドブック方言調査』の手作りポスター(by 三井)です。プリントアウトでもなく、ペン書きでもありません。切り絵で作られています。『ガイドブック方言調査』の詳細はこちら。


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