日本の出版業の中では取次店はいろいろと批判されている。中小出版社に対して差別的な待遇をしているであるとか、返品が汚れているであるとか、もろもろのことを言われる存在である。とはいうものの、海外の出版流通を調べていると日本の流通がシンプルであることは評価できることかも知れない。複数ある取次店の内の一つと取引ができれば、少なくとも書店からの注文を受けることができる。日本の場合、原則、書店の先に図書館があるから、取次の口座を開いて書店ルートを作ることができさえすれば、いろいろな注文に対応できる。そもそも取引してくれなければ、はじまらないわけであるが、取次店から書店、書店からとりあえずおおかたの注文に対応できるというのは道筋が一本なので、簡単である。
今、欧米(具体的には北米と欧州)の流通を何とかしようと調べているところである。Trans Pacific Pressの杉本先生にISBSを紹介されて、ここと取引したいと思っているが、ISBS以外にもどのようなところがあるのか、調べ続けている。Trans Pacific Pressを見るとISBSの他にイギリスではDAWSONというところを使っているので、DAWSONも取次店の一種かと調べてみるとこれは取次(distributor)ではなく、Library Supplier(図書館納入業者)ということである。書店へのルートと図書館へのルートが別々にあるということなのだろうか。とすると一本ではなく複数のルートがあるということになのだろう。
ひつじ書房は学術書がメインなので大学図書館にも入れたいし、教科書も出していると言うことからすると書店や大学内の書店でも注文できるようにしたい。二つのルートをそれぞれ作るべきなのか、それともdistributorを押さえれば、何とかなるものなのだろうか? 日本の流通は取次に力が集中してしまっているということであるが、それはそれでシンプルでよいのかもしれない。日本と慣習が違うので勘が働かない。とはいうものの、日本でアマゾンで売りたいと思った場合、大阪屋という取次の口座を作る必要があって、目的にあった流通が必要と言うことでは共通している点もある。
ISBSは、Trans Pacific PressやHart Publishingも使っている取次だが、ウェブサイトが頻繁にダウンしていて、つながらないことが多い。これではやはり心配だ。他にはUNIVERSITY OF TORONTO PRESSも学術出版におけるdistributorとして知られているとのこと。問い合わせ用のメールアドレスがないのは、電話で交渉しないといけないとするとかなり大変かも知れない。うーん、道はまだまだ遠い。私の知識の現状は、DistributorとLibrary Supplierの違いすら分からないという段階なので、まずはアメリカの出版産業の構造から、流通の仕組みから調べてみることにしよう。それから、問い合わせをしてみよう。
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