原稿を書かれた方から、メールの添付でいいですか、ときかれることがあるが、最近は、上のように「たいへん、お手数ですが、郵便で送って下さい」と申し上げることにしている。その理由は大きくは2つあって、ひとつめは文字化けと体裁の異動を避けるためだ。ひつじ書房は、言語学の出版社であるので、英語や中国語、韓国語が原稿に入ることが少なくない。発音記号などもある。著者の手元のパソコンの画面では問題がなくても、こちらで打ち出すと文字がおかしくなっていることがある。言語学だと、グロスといって、単語のあたまを次の行の単語とあわせることがあるが、このようなものも、本文に使っているフォントの大きさがちょっと変わっただけでもずれてしまうこともある。したがって、著者が自分の目で意図通りに打ち出されていることを確認したものでなければ、その原稿が著者の意図通りであるかは判明しないので、受け取らないことにしている。正しい原稿だと思って、割付をし、印刷所もそれにそってゲラをだして、著者の意図通りではないので赤字で直しがたくさんはいってしまうと、無駄な仕事になってしまう。pdfなら大丈夫という方もいるだろうが、それは迷信である。pdfでも化けていることは少なくなく、たとえば、Mac OS X付属のpdfビュウワーで見ると文字化けということもまれにある。打ち出した時に文字と文字の間の感覚がやたら詰まっていたりということもある。だから、基本的には打ち出されて、本人の目で確認されていない限り、信用しないのである。ひつじ書房ではハードコピーをデータといっしょにいただくのが原則としているが、本人以外の方が打ち出しては意味がないので、この点は念のため申し上げる。皮肉なことに、手書きの原稿の方が、確実ということになる。
もう1つは、私たちのメールボックスには非常にたくさんのメールが入ってくるために、見落としたり、探し出せなくなったりすることが非常に多くなってきているということがある。注文のメールから、お問い合わせのメール、企画のための調査それからスパムメールもたくさん。一括して1回であればいいが、メールは気軽なツールなので、できあがったところから、原稿を分散して、何度も送って下さることがあるが、この場合など、間に他のメールにはさまって届いている訳なので、見つけていっしょにそろえるのも手間がかかる。メールソフトの検索は、遅くて使い物にならないし…。メールの森の中から、必要なモノを探し出すのは一苦労なのである。
仕事はできるだけ効率的に行いたい。1冊7000円で500部という研究書を作っていると、本を1冊作って、全てが売れても、総定価で350万円である。問屋さんには67パーセントで卸しているから…。学術書はそんなにたくさん売れるわけではないので、多くの種類の本をみなでこなしていくことになる。効率を図っても、仕事は毎日10時11時になりがちである。原稿とデータを照合して、手間をかけずに印刷所に入れられる状態というのが、とても大事なことなのだ。ここらへんについては、ひつじ通信でも書かせていただこうと思っている。
念のため、申し添えるとひつじ書房は1993年にDTPに取り組み、1995年にホームページを作り、1998年にT-Timeを発売した。かなりネットには先進的に取り組んでいる出版社である。
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