2005年3月8日(火)「出版再考このままでいいのか、わるいのか。それが問題だ!」という特集
2005年3月8日(火)

「出版再考このままでいいのか、わるいのか。それが問題だ!」という特集

『本とコンピュータ』第二期15号がでた。「出版再考このままでいいのか、わるいのか。それが問題だ!」という特集(?)。『本とコンピュータ』は、この号の後、もう1回でおしまいということだ。今回は、アンケートが面白かった。18人のうち、やはり、大きいところではなく、自前で商売をしようとしている人の発言が面白い。恭文堂の田中さん、鶴ヶ谷さんの二人の発言に特に共感した。田中さんは、業界のことよりも、自社が売れないことを考えた方がいいといって、出版全体に責任を転嫁しないようにという。鶴ヶ谷さんは、比較的少数と想定される読者の信頼をつなぎとめることが、重要だという。小さな身の丈のものが、大きな状況ではなく、自分でできることを見据えて自分でやるということだ。「比較的少数と想定される読者の信頼をつなぎとめる」ためにどれだけのことが必要で、どれだけのことができるだろうか。このあたりまえのことを実際にどれだけ実行できるだろうか。

賀川さんの「出版界再生なるかというが、そもそも出版界は死んでいない」という言い方と持谷さんの出版業界の繁栄に与したことはなかったという言い方も、印象的である。

どうも大状況として語ることには白けてしまい、具体的にできることを考え出して、それを実際にやってみるということが面白いし、新鮮だ。ブランドは業界にではなく、その社につくるものだ。座談会の発言は、どうも一般的だ。あまり細かいと読みにくいものになってしまうが、短くても実際に役に立つのは田中さんたちの発言である。

読書文化やリテラシーが変化しているということへの嘆き節が多いが、ではどうするのかということがないので物足りない。座談会は、50代より上の方が多いのでしかたがないか。『ピアでまなぶ大学生の日本語表現』や『文科系ストレイシープのための研究生活入門』を出したのは、ひつじ書房なりの具体的な回答だ。座談会には、実際家の発言者が少ないように感じた。その点で、恭文堂の田中さんが一番の実際家だった。座談会だと浦沢直樹のマンガを手伝っている長崎尚志さんだろう。はじめて、『20世紀少年』の最後でいつも名前をお見かけした長崎さんのご尊顔を拝したのではうれしい。

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