ポスタルフォーラムのコンフェランスに行ってきた。3日間でセミナーに8つも参加した。学術出版は、読者が目に見える、ということがよく言われてきたが、実際には読者を目に見えるようにきちんと考えて、お知らせをだしたりということはしていない。一般書の出版社が、マスコミを使った広告であるとか、書評などのマスメディアを使った方法で本の情報を告知するのに対して、学術書の場合は、専門分野の雑誌であるとか、目録の発送や学会でのチラシの配布に重点があるということは違っているにしろ、読者に送り届けるということをきちんと考えてやっているとは言いがたい。たとえば、私の方法は、独立するまえにつとめていた出版社の方法を基本的に踏襲しているだけで、そこから発展はしていない。ということは、20年前の方法を今でも行っているということになる。
8つのセミナーの中の細野晴義さんの「顧客とのつながりを作る、DM超入門」はとてもためになった。彼のポイントは、(1)公開性の原則(2)詳細に説明をするという原則(3)人間くさいことをするという原則(4)ネットワークをつくるという原則の4つだということだ。どれも私自身、ホームページを作るときに心がけていることだ。
従来、マーケティング理論では4Pといい、Price、Place、Prmotion、Productのことだが、これからは3P+2D、つまりDialogue、Database、Price、Place、Prmotionが重要だと言う。この考えは中澤功氏による。(この方のセミナーもとても役に立った)この5つが同等に並列しているのかはちょっと違うような気もするが、作るがわが、作って決めてプロモーションするのではなく、顧客との対話と顧客情報との格闘から、製品を作ってそれを届けて行くということの意味はまさにそのとおりだ。
この考え方に基づいて、読者との対話の方法を作って行くのが、これから数年にかけてひつじ書房が行うことだ。これは、新規なことではなく、むしろ商売の基本とも言える。昔の八百屋さんは当然のように行っていた。顔が見える範囲だからこそできることだ。このことがちゃんとできる学術書の出版は、21世紀は大きく飛躍するはずだ。これは、たぶん一般書の出版社にはできないことのように思われる。21世紀は学術書の時代である。
「本の出し方」・「学術書の刊行の仕方」・スタッフ募集について・日誌の目次