2004年8月29日(日)の日誌 何度でも、岐路に立つ
8月29日(日)の日誌

何度でも、岐路に立つ

岐路というと、分かれ目ということ。右の道に行くのか、左の道に行くのか。英語では実はこの岐路のことをクライシスというのだということを昔聞いたことがあり、そういえば、クライシスという雑誌が社会批評社からでていた。といっても、雑誌よりもイギリスのプログレバンドのイエスというバンドがあって、そのグループにはクライシスというレコードがあったことの方が印象深い。そのクライシスのジャケットの絵は、不思議な絵で、キノコやら神秘的な樹木の生えた神話の中の水源地帯のような絵であった、ということが思い出される。

イエスのジャケット(記憶が間違っているようだ。クライシスではなく、危機という日本語タイトルのようである。神話の中の水源地帯みたいなのは、何というアルバムであったろうか、調べてみます。)

昔話はさておき。

資本金を300万円から700万円に増資した。最後の段階で、資料を間違えて、法務局に2回も行かなければならなかったというお粗末な経験もしたが、それはさておき、この資金の元手は私と妻(専務)の預金である。最初に設立したとき、それから、商法が変わって300万円必要になったとき、これで3回目の出資である。今回は一番金額が大きい。ひつじ書房の社会的な存在が大きくなり、それに見合う資金規模が必要になったためである。

14年目にして、はじめて予算というものを作っている。出版社は仕入れが不安定であり(原稿が予定の通りには入らないということ)、予算を組んでも、空論になってしまいかねないという危険性とむなしさがあるのだけれども、事業として運営していくためには、仮説であっても計画は必要だ。あたりまえのことだ。出版社には仕入れの不安定さと販売も基本的に全て消費者に買ってもらうと言うことから、予測が付きにくいという要素が濃厚であるため、事業計画・事業予算を作るのが難しい。小さい出版社で、作っているのはどのくらいあるのだろうか。少ないのではないかと思う。

計画を作るとなると不確定な要素をどのくらい組み込むのか、予定以外のものが途中で入ってきた場合をどのように換算するのか、初歩的な疑問がわいてくる。一方、予算は、事業を遂行するための基礎だから、縛られ過ぎないようにもしなければならない。

今期の収支予測は、3年ぶりに単期黒字となり、私たち夫婦の虎の子を出した増資分と含めて債務の超過が消える。昨年は、単期500万以上の赤字であったことからすると、急速な業績の改善である。この改善は、社員が、がんばってくれて研究書の刊行冊数を増やすことができたことによる。(ありがとう!)今年を入れて、3年で、基本的に健全な経営状態を作り上げることが目標である。

企業が成り立っていくためには、ランチェスターの法則のとおり、何かのジャンルでトップになる必要がある。ひつじ書房の場合、ここ2年間の間目指してきた方法は、ひとつのジャンルでトップになること。それは言語学(言語教育)のジャンルで、研究書をだすということで一番になることである。今年の春の段階で、それは冊数にしろ、ボリュームにしろ、内容のレベルにしろ、実現したということが言えるだろう。このことを維持し、出版社としての活力にしていく。3年位しないと伝わらないことなのだろうか。そうであるなら、やはり踏ん張らなければならない。

ランチェスター経営

できるだけ、お金をかけないで、情報を伝えていく。そのために、インターネットの機能をフルに使っている。たとえば、学術書ということや学術書の出し方ということばで、グーグルで検索していただければ、トップかその近くに出てくるようになっている。研究書を執筆するのに重要な「執筆要項」ということばで検索しても、トップにくる。現在、人材を募集しているが、「編集経験者募集」ということばで、ひつじ書房がでてくる。したがって、グーグルの評価の中ではかなり高い位置に位置づけていると思うが、その効果は実際のところどのくらいなのだろうか。

グーグルから飛んできてもらったページに問題があるのか、現時点では実感として、問い合わせをくれる人が増えているとは感じることができない。まだ、少し早いからなのだろうか。

いつも岐路に立っているような気がする。通念にとらわれず、いつも、知恵を絞って、普通では思いつかないことあるいは少し早すぎることをアイディアとしてだし、それを実験し、試しながらすすんでいく。少し無謀なこと、狭い意味では論理的に困難であると思われることを次々と乗り越えてきたような気がする。できないと思わないこと、できないことを他人のせいにしないこと。たぶん、それは宿命の道なのであろう。

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