2004年8月19日(木)の日誌 本作りの振り返り(1)
8月19日(木)の日誌

本作りの振り返り(1)

書籍の編集者という職種は孤独な職種である。作った本について、その本の内容、体裁、造本などについて誰かから講評されるということは少ない。一人が作った本についてみんなでコメントするということはほとんどないだろう。新人のころはともかく、慣れてくるとだんだんと一人で一人の知識とスキルの範囲で作るようになってしまう。もちろん、スキルにしろ、知識にしろ、本を作りながら、覚えていくものであるし、編集という仕事は、そもそも好奇心がなければ、つとまらない仕事だから、自分で学んでいく姿勢というものが基本的に必要である。ただ、個人の好奇心に依存していると下手をすると独りよがりの上塗りになってしまいかねない。

優れた職業人であれば、好奇心を持っていることは、あたりまえのことで、それでも多くの職種で研修が、必要とされていることを重く見たい。行政の様々なセクションだって、企業の営業だって、非営利団体だって、それぞれの職能のための研修というものがある。研修が行われる理由は、何かの職業を持っている人が、共同の学びの場を持ち、研修をすることによって、一人でコツコツ学んでいるよりも、学ぶという点で可能性が広がるということなのだろう。たとえば、NPOではかなりいろいろな研修が行われていると思う。NPOというものが新しいタイプの組織なので自然に人々が学ぶのを待っている余裕がなく、急速に人材を育てなければならないという事情があるのだろうが、そのようなNPOに関わっている人々の研修に参加している時も、応用した編集の学びあいの方法を探していた。図書館の司書のレファレンス研修などを見て、編集という職種において、研修ができないかと思っていた。(司書と編集者というのはかなり似ている部分があると思うのだが、実際の育て方などが結構違う。それは出版社という企業の研修のあり方と司書が公務員であることが多いということによるのだろうか)




われわれが成長する編集者であるなら、もう少しお互いに研鑽できるようなあり方が必要だ。そんなことを思っていた。それで本作りの振り返りの機会を作ったわけである。これは前回インターン生の発表会に続く2回目。今回、マチネスタッフの黒岩さんと谷川さんが本を作り上げたということもこの機会に行った理由である。

思うのだが、学術専門書のレベルで、会社の枠を越えて、本づくりの勉強会のようなものができるとよいのではないだろうか。我々は、私企業であると同時に、知の公共性へ奉仕しているという二面性を持っている。公共的な使命があるのなら、オープンに技能を向上していく勉強会もできるのではないだろうか。

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