2003年12月15日(月)
本を読むスキル
第二言語習得研究会に本を売りに行った。大会のテーマは、語彙の習得と言うことであった。発表の中に、神奈川県の日本語を第一言語としないこどもたちの学習についての研究があった。授業についていけるかどうか、を調査し、ついていけないこともたちに対してはそれをサポートすることで、かなり日本語を使う能力が向上するなど意味があったという例も報告されていた。36週間以上の滞在で、かなり授業についていけるようになるということがあるそうだ。それと同時に、勉強ができる子どもは、日本語の能力についての危機意識があるが、逆にひらがなも書けないような生徒が、問題ないと応えているということが報告されるなど、そもそも危機意識がないと日本語を学ぼうというモチベーションがでてこない、ということもあるということであった。
発表を聞きながら、私は、本を読むというスキルは、もはや意図的な習得がなければ、習得できない技能であるのではないかとずっと考えていた。本を読むというスキルは、何らかのきっかけで動機を持ち、苦労して読みながら、習得していくものなのではないだろうかと。そうであるのなら、本を読まなければと言う意識のないところでは、読もうという動機が生まれず、生まれなければ本を読むスキルが身に付かず、という循環の中に入ってしまう。そうであれば、本は読まれないだろう。
出版産業としての危機ということを言いたいのではなく、それもあるが、市民の読解力、思考力の危機と言うことになるのではないだろうか。
小さいときに童話を読ませようとして盛んに読書指導を行っても、それは、文章が中心の思考を使うような読書には結びつかないのではない。小説を読むスキルと考えを表明したり、説明文を読むスキルは異なっている。
アメリカでは、アカデミックリーディングという授業も研究もあるが、日本にはまだほとんどない。第二言語習得研究会で門倉先生のアカデミックジャパニーズについての中間報告書が部数限定で配布されていたが、そのような研究はこれからなのだろう。
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