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2023.2.22(水)

『21世紀日本文学ガイドブック3 平家物語』刊行しました


「21世紀日本文学ガイドブック」の一冊として、『平家物語』が出来上がってきました。
本書の製本形式は仮フランス装というもので、通常の並製本より手間暇のかかる作りとなっています。この製本をできる製本屋さんも限られており、本シリーズを作るときはいつも同じ製本屋さんに頼んでいます。

大変なだけに今回は製本時にいろいろとトラプルがあり、製本所から届いた包みを開いて、無事出来上がってきた本を手に持ったときにはほっとしました。

本書は「ガイドプック」として読者を平家物語の世界に誘うものですが、様々な読み方の切り口で論じられているのが特徴になっています。一本ご紹介すると、「『平家物語』の女性像 排除された女の視点から」(本橋裕美)の章では、巴、祇王、仏、静など平家物語に登場する女性は様々に論じられてきたけれど、それらを総体的に論じたものは少ない、という観点から、平家物語の女性像について論じられています。とくに本章では、その女性たちの結末がどうなったか、というところから論が始まっており、たくさん女性が登場するけれどもその描かれ方には一定の方向性が見られるという指摘はなるほど鋭い指摘!と思うと思います。

興味を持たれた方はぜひ本書をご覧ください。

21世紀日本文学ガイドブック3
平家物語



2023.2.7(火)

刊行! 『言語学習における学習ストラテジーと動機づけ』


大学受験シーズンの真っ只中ですね。おそらくこれから試験会場に向かうのであろう高校生の姿を電車の中で見かけて、受験当日はとても緊張したなあ、もっとあのとき勉強していればなあ、などと昔を思い出していました。
受験科目の中で、英語が特に苦手だった私は、なんとか志望校に受かるため必死に受験英語の勉強に取り組んでいました。努力はしていたのですが、今振り返るとがむしゃらに問題集を解いたり、ひたすら単語を頭に詰め込もうとしたりと、あまり効率がよい勉強法ではなかったと思います。あのときにもっと勉強法に意識的だったり、「志望校合格」以外の語学の目的を見出せていたりしたら、その後の大学生活や語学学習の成果はもう少し豊かになっていたのではないかと思います。

受験勉強をしていた頃の自分のことを思い出しながら編集をしていた書籍が、今月刊行しました。大和隆介著『言語学習における学習ストラテジーと動機づけ 理論と実践の創造的キュレーション』です。
一言で言うと「学習ストラテジー」とは「どのように学ぶか」、「動機づけ」は「何を目的(目標)として学ぶか」ということです。このような学習に対するメタ認知能力は、言語学習においては言語の習得に大きく関係するものだとされています。また、こうしたメタ認知能力は近年注目されている「アクティブ・ラーニング」や「主体的な学び」などとも密接に関わる概念で、現代社会において必要とされる学習能力だと定義されることもあります。

本書では学習ストラテジーと動機づけに注目した言語指導のあり方を研究してきた著者の大和隆介先生が、これまでの教育・研究活動を土台として、現代社会が求める能力を育成する言語指導のあり方について考察しています。
本書の特徴の一つとして「理論と実践」を架橋するような内容、構成になっている点が挙げられます。本書の前半部分では、言語学や言語教育全般の研究史も踏まえながら、学習ストラテジーと動機づけにまつわる先行研究や議論について整理を行い、その整理をもとにして、後半では統計分析などを駆使しながら「どのような学習ストラテジーが効果を発揮しているか」などを実証的に分析しています。さらにそこから、分析から得られた知見を実際の英語授業で活かしていくにはどうすればよいか、授業実践例を紹介しながら提案をしています。単なる机上の空論でも、理論的な裏付けのない実践の提案でもなく、説得力のある議論と実践が本書では展開されているのです。

多くの受験生は、昔の私と同じく学習ストラテジーや動機づけなど意識する余裕もなく勉強しているのではないかと思いますが、本書が広まれば、学校でメタ認知能力が身に付くような授業がもっと行われるようになり、より豊かな言語学習を行える児童・生徒が増えていくのではないかと思います。また、現代社会に必要な教育とはどのようなものか論じている点で、英語教育・言語教育だけでなく教育に興味のある人には得るものが大きい一冊になっています。ぜひご一読ください。


『言語学習における学習ストラテジーと動機づけ』詳細ページ
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1116-8.htm







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