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2021.7.26(月)

東京オリンピック


いよいよ東京オリンピックが始まりました。直前に開会式の担当者の辞任騒動などがあり、コロナも収まっていないこともあって複雑な思いもありますが、開催されるからには選手の方々にはベストなコンディションで試合に臨めることを願っています。

さて、開会式で話題になったことの一つに、「各国の選手団の入場が五十音順」だったことがあります。伝統的に最初に入場するギリシャや難民選手団は例外ですが、それに続いて入場してきたのは「アイスランド」、「アイルランド」、「アゼルバイジャン」……、と五十音順で出てきました。出場順が五十音順だったのは、世界に日本固有の文化を発信する狙いがあったそうですが、Twitterを見てみると「アルファベット順ではなく五十音順で海外の人は自国の選手の入場タイミングがわからない」と話題になっていました。
これ以外にも「言語にまつわること外国人が不便をしているニュース」を見かけました。例えば、カナダ代表のテニス選手、Gaby Dabrowskiさんが「エアコンのリモコンが日本語表示しかなくて操作できない」とInstagramで投稿して話題になりました。メインプレスセンターではアラビア語による案内がほとんどなくムスリムの方から不評だというニュースも見かけました。
こうしたニュースを見ると、日本は海外から外国人を招き入れる体制が不十分だったのではないかと残念に思います。言語について外国の方への配慮が行き届いていない部分があったのだと思います。オリンピックという一イベントだけでなく、これから日本には海外から移住してくる方も増えてくることが予想されていますが、オリンピックで明らかになった問題点は今後改善されていくことを願っております。

こうした問題を考えるうえで、ウェブマガジン「未草」に先月まで連載していた永田高志先生の「「やさしい日本語」は在留外国人にとって「やさしい」のか?」はとても参考になるかと思います。この連載では「やさしい日本語」についてだけでなく、そこから派生して多言語表示や機械翻訳など、在留外国人が暮らしやすいようにするためにはどのような言語的な配慮が必要かについても議論をしています。
外国人のためにどのような言語的な配慮をすべきなのか、このオリンピックを機会に考えてみませんか。


永田高志先生の「「やさしい日本語」は在留外国人にとって「やさしい」のか?」はこちらから。
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/category/rensai/yn/



2021.7.21(水)

朝ドラの方言


最近、わたしとしては珍しく、NHK連続テレビ小説を見ています。
現在は『おかえりモネ』が放送されています。主人公のモネの故郷である気仙沼の島(海)と、登米(山)と、東京の3つの場所を拠点として物語が進んでいます。

10週目の今週はちょうど主人公が東京に行ってしまったのですが、9週目までは島と山を行き来する展開でした。海や山の自然の美しさとともに、話されていることばも面白いなあと思いながら見ています。
朝ドラを見て宮城のことばに興味を持った方には、次の本がおすすめです。

『生活を伝える方言会話[資料編・分析編]―宮城県気仙沼市・名取市方言』東北大学方言研究センター編(2019年)

この本の資料編には、「荷物運びを頼む」「旅行へ誘う」「朝、道端で出会う」などなど、145の場面の方言会話が収められています。さらに、会話の音声データ付き(MP3形式)なので、音で気仙沼の言葉を楽しめます。名取の方言との比較もできます。
音声データは全部で409ファイルで、編集時にこれを全部聞いて文字資料と引き合わせをしたのは大変でしたが、『モネ』を見ているとその時聞いていた言葉が懐かしく思い出されました。

この資料は生活の中の様々な場面が数多く収録されているので、ドラマなどの方言の指導などにも使えるのではないかとひっそり思っています。

方言指導といえば、『関西弁事典』(真田信治監修、2019年)には「関西弁と方言指導」という項目があります。
ここで「このような方言指導の領域では現実をそのまま反映させることに徹するべきか否かについては議論のあるところであろう」と書かれているように、作品の中での方言の方針というのはなかなか難しい部分もあるのではないかと思います。

年代や地域性やことばの変化への対応や、全国放送のドラマでは別の地域の人が聞いて「分かる」ように調整する必要があるのかなど、気になるところです。
わたしは宮城の言葉のネイティブではないので、今回の朝ドラの「実際」との違いについて詳しくは分からないのですが、こういった作品で地域のことばやその表現のされ方に関心を持つ人が増えればいいなと思っています。そして、ことばの研究が表現活動の中でもどんどん役立てられていくと嬉しいです。

方言が面白いおすすめの作品があれば、ぜひ教えてください。




2021.7.16(金)

参考文献チェック


今週は組版所に組版を依頼した原稿の初校ゲラが出てきました。
初校ゲラが出てきてはじめに行うのは参考文献チェックです。
参考文献チェックでは引用箇所や参考文献リストについて、以下のようなことをチェックしています。

・本文中で言及や引用されている書籍や論文が、巻末(論文集の場合は各論文の末尾)の参考文献リストに記載されているか。
・著者や書名の表記、刊行年などが間違っていないか。
・刊行年や出版社名など、記載漏れがないか。
・書名は二重カギ括弧、論文名は一重カギ括弧が使われているか。
・文献が五十音順やアルファベット順など規則通りに並んでいるか。
・英語の文献では書名がイタリックになっているか。
・参考文献の記載方法が統一されているか。(例:ページ数を示す際に「ページ」「頁」「pp.」などが混在していないか)

引用箇所や文献をひとつひとつチェックするのは集中力を必要とする作業です。とくに先行研究整理を行っている章のチェックは、引用箇所も多いので大変です。しかし、参考文献や引用が正確であることによって学問の厳密さは成り立っていますので、気を抜かずに丁寧に作業するよう心がけています。



2021.7.6(金)

電子書籍の著者見本


ひつじ書房では、書籍の電子化をすこしづつ進めています。

個人の購入者の方向けで、AmazonのKindle版と、最近、Google Playブックスでも日本語の教科書がメインとなりますが販売を開始しました(その他の電子書店で取り扱っている本もあります。詳細は 「電子書籍について」のページをご覧ください)。

電子書籍が出来た時、著者の先生から、著者見本のようなものは提供されませんか、とご質問をいただきました。

紙の本でしたらすぐお送りできるのですが、電子書籍の場合は簡単にできなくてとても悩ましいです。

調べたところ、Google Playブックスでは、コンテンツレビュー(書籍のプレビュー)という機能を使って、著者の先生に書籍へのアクセス権を付与して、先生が閲覧できる状態にすることが可能でした。

しかし、AmazonのKindle版は、弊社では電子取次店をとおして販売しているのですが、担当の方によると現時点ではそのような機能は無いとのことです。

紙の本なら物なので見え方は同じですが、電子書籍だと書店や形式やデバイスによって、見え方が異なる場合もあると思います。このあたりも悩ましいですね。全部用意するのは困難なので、AmazonのKindle版は著者見本のようなことができると良いな、と思っているところです。

他の出版社のみなさんはどうしているのでしょうかね。気になるところです。



2021.7.2(金)

打ち出し原稿


最近、何度か先生方から最終原稿をお送りいただく機会がありました。ひつじ書房では最終原稿を提出していただく際に、電子データとは別に紙に印刷した打ち出し原稿もお送りいただいております。なぜメールで送ることができる電子データだけでなく、打ち出し原稿もお送りいただいているのでしょうか。
以前のスタッフ日誌で「割付作業」についてお話ししました。割付作業は組版の指定を原稿に書き込んでいく作業ですが、このとき、お送りいただいた打ち出し原稿に指示を書き込んでいます。
この打ち出し原稿をお送りいただく際に、著者の先生方には、組版上のご要望や注意点がある場合は打ち出し原稿に記入していただくようにお願いしています。例えば、詩を引用するときに、「原文と同じように2行目は行頭を揃えずに、1行目より〇文字分下げてほしい」といったご要望があったときは字下げの指示などしていただいております。また、特殊な文字を使う際などは、組版した際に文字化けしていないかチェックするために、印や文字の説明などを書き込んでもらっています。他にも図などをこちらで作図する必要がある際は、その作図の指示なども書いていただいています。
組版の指定を行う際はなるべく先生の意図をくみ取りながら指定を行っておりますが、どうしても漏れてしまう部分もあるかと思います。そうした齟齬をなくして、組版をスムーズに進めていくために打ち出し原稿の送付もお願いしているのです。






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