HOMEへ過去の日誌5月の日誌スタッフ紹介

2021.6.25(金)

編集原本


今月は新たに書籍の組版指定(組版のレイアウトなどを決定する作業)をする機会が何度かありました。1行の文字数はいくつにするか、見出しの文字サイズはどのくらいにするかなど、色々なことを決めなければなりません。
ただ、組版指定は毎回一から考えて決めるわけではありません。今まで刊行してきた書籍を参考にしながら、組版の仕上がりをイメージして指定を行います。
私はどのように指定しようかと悩みながら「編集原本」を色々眺めて、組版指定を行いました。

ひつじ書房では新しく本ができてくると、そのうちの1冊を「編集原本」、いわば見本として確保しています。新刊を刊行したときだけでなく、重版をした際も刷りごとに編集原本を用意しています。
一般的には「原本」、「訂正原本」などと呼ばれ、重版以後の訂正箇所をまとめて記録するためのものですが、組版指定をする際の参考にしたり、シリーズ本を編集する際に今までの書籍と体裁に差異がないかをチェックしたりする際などにも活用されます。

現在、編集原本を作成するのは私の担当です。「作成する」といっても本を確保して「編集用〇刷」と書いた付箋をテープでシールのように貼るだけなので作業自体は単純です。
ただ、刷り数が一目でわかるように、刷り数ごとに付箋の色を変えているので、そこを間違わないように気をつけています。1刷は黄色、2刷は青色、3刷は赤色、4刷以降は緑色の付箋を貼っています。今年の4月ごろは新刊も重版も多く、この色を間違えないように気をつけるのが少し大変でした。
作成した編集原本は編集原本用の棚にしまいます。壁一面を隠すほどの大きな本棚なのですが、そろそろ収容冊数の限界ギリギリに近づきつつあります。今年の夏の大掃除の際には棚の整理をしたいと考えています。



2021.6.23(水)

「鳥獣戯画」を見に行ってきました


4月25日に発出された東京都の緊急事態宣言は、先日2ヵ月弱で解除されました。
解除になったからといってこれまでの生活と何かが変わるということもないのですが、気分的にはほっとします(これが気の緩みというものでしょうか……ね)。

6月に入ってからは映画館や美術館については一部制限が緩和されたこともあり、私も激戦となったチケットを入手し、東京国立博物館で開催されていた『国宝 鳥獣戯画のすべて』展を見に行ってきました。

「鳥獣戯画」はこれまでウサギとカエルの相撲などいわゆる有名なシーンしか知識になかったのですが、そんな私も魅了されるすばらしい特別展でした。
作品自体のすばらしさもさることながら、展示方法も巻物を「動く歩道」にのって見るという工夫もあり、来場者がじっくりと楽しめるように考えられていました。所蔵されている高山寺の明恵上人のお人柄にも惹かれるものがあったので、今度は京都の高山寺で見てみたいなと思っています。

「鳥獣戯画」は、巻物として存在しているものは複数の紙がつなげられたものであり、今回の展示では過去に抜け落ちたと考えられる箇所を、模本や国内外に収蔵されている断簡をつなぎ合わせることで、描かれた当時の巻物を復元してみるという試みをしていました。これまでの研究の成果も感じられ、いかに作品を後世に残すかということについても考えさせられるものでした。

いろいろ便利なよのなかになりましたが、紙の質感や色味、筆の細かな動きはどんなに文明が進んでも実物以外で感じとることが難しいように思います。体感したことはないのですが、このような美術品を3D・4Dなどのデジタル技術でどのくらい再現できるものなのか興味があります。
また一方で、今にも動き出しそうな擬人化された動物たちや、いきいきと描かれた人物たちの暮らしは、案外、現代と変わっていないような気もします。ほんとうにふしぎなものですね。
しかし、12世紀に描かれたものが1000年後の人を愉しませるってすごいことですね。

さまざまな制限がある中ではありますが、日常が戻り、このような展覧会や美術展の開催が行われることはやはり嬉しいことです。




2021.6.18(金)

まもなく刊行! 『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』


今回は私が編集を担当した、もうすぐ刊行される書籍の紹介をいたします。吹原豊先生の『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』です。
著者の吹原先生は以前日本語教師として、インドネシア共和国スラウェシ州の州都マナド市で日本語教育支援活動をされていました。そのときに日本への出稼ぎ労働が盛んなインドネシア人の集落があることを知ります。しかもその集落の多くの人は移住先に東京や大阪のような日本の中心地ではなく、なぜかインドネシア人移住労働者のコミュニティがある茨城県大洗町を移住先に選ぶというのです。このコミュニティに興味を持った吹原先生はコミュニティ内での言語使用についての調査を始めました。本書は10年以上にわたる現地調査によって明らかになった、移住労働者の日本語習得について、その実態をまとめたものです。

本書の中心的なテーマは、同じコミュニティ内のインドネシア人でも、日本語が上達する人と長年日本にいても中々上手くならない人に二分されてしまっている、この不思議な現状の原因を解明し、適切な日本語教育のあり方を示すことです。仕事場ではある程度の日本語能力が必要なはずなのにどうして上達しない人がいるのか、吹原先生は移住労働者へのインタビューや、実際にともに仕事をしながら参与観察をすることで、この理由を明らかにしています。

日本における外国人労働者はこれからますます増えていくことが予想されています。本書は日本語教育に興味のある方だけでなく、多文化共生社会や移民問題などに興味のある方にもぜひ読んでいただきたい一冊です。


『移住労働者の日本語習得は進むのか 茨城県大洗町のインドネシア人コミュニティにおける調査から』詳細ページ
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1096-3.htm





2021.6.11(金)

インタビュー動画を作成しました


先日、私が編集を担当した『日本語学習者による多義語コロケーションの習得』の著者、大神智春先生にインタビューを行い、宣伝動画を作成しました。
大神先生へのインタビューはZoomで行いました。インタビュアーを務めた経験は初めてで、事前に原稿を用意して練習していたにもかかわらずとても緊張してしまい、はじめの挨拶で一番大事な書名を噛んでしまい、撮り直しをすることになってしまいました。
インタビューを終えた後は動画の編集作業を行いました。Zoomの録画機能を使って撮影した動画データを、iMovieというアプリケーションを使って編集をしました。編集作業といっても簡単なもので、上記のようなミスをしてしまった部分をカットしたり、オンラインのせいで私と先生との会話のなかに生まれてしまった不自然な間をカットしたり、動画を見た後、書籍の詳細ページに行けるように、動画の最後の部分にQRコードを表示するようにしたりしました。凝った編集は行っていないのですが、これだけの作業でも慣れてないこともあって意外と手こずってしまいました。

作成した動画は書籍の詳細ページのほか、日本語教育学会、関西言語学会に合わせて作成した特設ページでもご覧になることができます。大神先生によるご著書の説明はとてもわかりやすく、未読の方は読みたくなること間違いなしです。すでにお読みなっている方も、先生がこのような研究を行ったきっかけや理由など、書籍ではあまり触れられなかった部分や記されていないことについてもお話しいただいているので、ぜひ聞いてみてください。

『日本語学習者による多義語コロケーションの習得』詳細ページ
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1067-3.htm





2021.6.9(水)

オンライン学会での書籍展示いろいろ SpatialChat編


以前にオンライン学会での書籍展示の形式について、スタッフ日誌で紹介しました。
https://www.hituzi.co.jp/staff/staff-nisshi202012.html#Part2

この時は、(1)リンク集型、(2)Zoom(発表)型、(3)Zoom(店頭)型、(4)Remo型を取り上げたのですが、もう1つ新しい方式が現れましたので、ご紹介します。
SpatialChatというシステムを使うもので、先日の全国大学国語教育学会で使用されました。この学会では、Zoom発表のあとの交流スペース・若手研究交流企画・紙面発表交流の枠で使用されていました。

SpatialChatの公式ページは以下です。
■SpatialChat https://spatial.chat/

私は最初、名称を「Special」Chatと読み間違えていたのですが、「Spatial」ですね。空間的というところがポイントのようです。

ブラウザでログインすると、画面上に自分のアイコンが表示されます。アイコンは自由に移動できます。アイコンが近い人同士は声が聞こえる、というシステムです。アイコンが近づくと声が大きく聞こえて、遠ざかると小さくなります。距離によって映像も見えます(もちろんカメラオフにもできます)。
Remoを使ったことがある方には、Remoのテーブルがなくなって、アイコンが自由に動けるようになったものと思うと、近いと思います。

音声チャット以外に、テキストはもちろん、Youtube経由で動画をその場に貼り付けたり、資料を貼り付けたりもできます。細かいところはまだまだ発展中のシステムのようで、学会の直前にもアップデートによる仕様変更があったようです。
今回の学会では、ひつじ書房はエントランスの片隅に広告画像と動画を貼り付けておくということをさせて頂きました。当日は社員が(というか私が)その画像付近にいまして、ご用の方は話しかけていただく、ということをしていました。

使ってみた感想としては、雑談がしやすいというのが第一でした。
RemoやZoomだと、ある程度「話すぞ」という気合いが必要なのですが、SpatialChatだと、なんとなく近くにいて話を聞くということがしやすいです。アイコンを近づけることで、話しかけたいという意思表示にもなります。初対面同士が話すということもしやすいと思います。
たくさんの人が近くに集まりすぎると誰が話しているのかわかりづらくなりますので、その点は注意が必要ですが、それは使用者の慣れでどうとでもなりそうです。

今回、全国大学国語教育学会には最初にバナー広告のご案内をいただいたのですが、このシステムを使うということを聞いて急遽、こちらにも出展できないかおたずねいたしました。突然のお願いにもかかわらず、たいへん親身にご対応いただきました。学会のみなさまに御礼申し上げます。
学会の方が、SpatialChatについてブログで詳しく書いていらっしゃいました。
■めらぶろぐ
2021-06-04 SpatialChatを使って学会で交流活動してみたレポ
https://mera85326b.hateblo.jp/entry/2021/06/04/195609

「SpatialChat」「学会」で検索したところ、理系の学会でもいくつかSpatialChatを使っていたようです。
今年は秋もオンラインのところが多そうですが、日進月歩のシステムに感動するばかりです。おいていかれないようにしつつ、こちらでできることをしていきたいと思います。



2021.6.4(金)

「未発ジュニア 2021年春夏号」


今週はひつじ書房の新刊目録「未発ジュニア 2021年春夏号」を発送いたしました。もうすでにお手元に届いている方もいらっしゃるかと思います。
私にとって発送作業はこれで3回目。はじめての発送作業の際はだいぶ手間取ってしまう場面も多かったですが、3回目にもなるとだいぶスムーズに作業ができるようになりました。

発送作業は昨年も行いましたが、今回の「未発」は2つの意味で私にとって「はじめて」があります。
1つ目は、はじめて「未発」の特集ページを作成しました。「未発」の編集に関して校正などは私も今までしてきましたが、ページの作成を担当したのはこれがはじめてです。今年の特集ページのうち、ウェブマガジン「未草」に関するページは私が作成しました。このページをきっかけに「未草」で連載されている記事に興味をもってもらえると嬉しいです。
2つ目は私が編集した書籍がはじめて「新刊」として紹介されていることです。昨年の段階ではまだ私が編集した新刊はありませんでしたが、今年になって刊行することができ、皆様に新刊としてご紹介できることをとても嬉しく思います。 ひつじ書房は今年の1月から5月だけでも40冊近く新刊を刊行しています。ぜひ「未発」を読んでいただいて、どんな書籍が刊行されているのか知っていただけたらと思います。
PDF版も公開しておりますので、こちらでもご覧ください。



『未発ジュニア 2021年春夏号』PDF版はこちら








HOMEへ

過去の日誌

5月の日誌

スタッフ紹介