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2024.2.20(火)

今月刊行の新刊2冊を紹介します。

毎年2月・3月は出版助成金をいただく関係で年度末までに刊行する必要がある書籍が続々とできてくるので、おそらく一年で一番社内がドタバタしている時期だと思います。
私が編集を担当した書籍もこの2月中に2冊刊行いたします。1冊は先週末できてきまして、もう1冊は今週末にできてきます。どちらも非常に面白い研究だと思うので紹介させてください。

○『音声・音韻の概念史』(阿久津智著)
例えば日本語では「発音」と「発声」という、どちらも「人が口から音を出す」時に用いられる似た語がありますが、それぞれの語の意味のニュアンス(概念)は微妙に異なります。こうした日本語の音声・音韻にまつわる語の意味の歴史的成立過程を、本書では従来の語史研究の手法だけでなく、研究の手法だけでなく、専門的な概念の形成や名称の成立の過程を重視する概念史的な方法を用いて分析しています。
個別の語句の分析だけでなく、本書の第I部は専門語の語史研究の方法や概念史による研究方法についての検討も綿密に行われており、語史研究の新たな地平を切り拓く一冊になっているかと思います。

『音声・音韻の概念史』詳細ページhttps://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1227-1.htm


○『流暢性と非流暢性』(定延利之・丸山岳彦・遠藤智子・舩橋瑞貴・林良子・モクタリ明子編)
言語学の書籍には多くの発話・会話が例文の形で載っているかと思いますが、「あのー、そのー・・・」とフィラーが混じった発話や、「ま、マケドニア?」と詰まった発話が例文として掲載されることは稀かと思います。しかし、実際の発話はほとんどがこうした非流暢な発話です。こうした今まで言語学の分析対象となってこなかった非流暢な発話を分析することで、言語学に新たな視点をもたらすのがこの論文集です。
分析分野は記述言語学・コーパス言語学・会話分析・日本語教育・言語障害・合成音声など非常に幅広く、多角的に「言語において非流暢とは何か」ということが検討されています。「日本語学習者や音声AIに非流暢な発話を教えた方が、むしろ自然な発話を話すようになる」など、目から鱗の知見も満載です。

『流暢性と非流暢性』詳細ページhttps://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1208-0.htm


どちらも刺激的かつ今後の研究になくてはならない一冊かと思います。ぜひ手に取ってみてください。



2024.2.7(水)

マルハラスメント!?

土曜の夜のニュース番組で「マルハラスメント」が取り上げられていました。
LINEで句点の「。」が使われると、若者は怒っているような印象を受けて怖いと感じるそうで、マルハラスメント(略してマルハラ)と呼ばれているとのこと。ネットのニュースでも話題になっていました。

若い世代はリアルに会話を再現したいと思うため、終わりをわざわざつける必要はない。吹き出しの中に入っているものにわざわざ「。」をつけなくても分かる。と、番組で石黒圭先生が解説していました。

一文や一言を1つの吹き出しで送る時、最後の「。」が余計だと思うのはなんとなくわかります。終わりを示すという機能を吹き出しが担っている訳ですね。ただ、長い文章を送りたい時は吹き出しがいっぱいになってしまって、それこそ吹き出しハラスメントになりそうですが、そもそもリアルな会話を志向するとすると、一度にたくさんの情報を送るのは向かないのでしょう。リアルな会話を目指しているかどうかという点に、すでに世代間というか個々のギャップがあるように思います。

わたしはどちらかというと句点や読点をつけないと落ち着かない方ですが、世の中には句読点をつけない文章もあります。これは弊社のウェブマガジン「未草」の岩崎拓也先生の連載で知ったのですが、賞状や招待状などでは句読点がつかないそうです。

■句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん|第11回 身の回りにある句読点(最終回)|岩崎拓也
https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2023/01/12/punc11/

(句読点の歴史や研究が分かる!連載第1回はこちら→https://www.hituzi.co.jp/hituzigusa/2021/10/04/punc01/)

結婚式の招待状などは句点で終わりを印象づけないようにという配慮が働いているようです。LINEの会話とはちょっと違いますが、終わりを強調しないというある種のマナーがあるのですね。

マルハラスメントという言葉では、「。」の機能とは別にそこに意図しない感情が見えるというのが興味深いですが、一概に「ハラスメント」と言ってしまうのもどうなのでしょうか。





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