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2021.8.27(金)

「未草」で連載中「〈社会システム〉として言語教育を観察していく」


ウェブマガジン「未草」で私が連載ページの更新を担当している、新井克之先生の「〈社会システム〉として言語教育を観察していく」の第2回が先週公開されました。
この連載では「言語教育」について、単に単語や文法事項を学ぶようなものとして狭く限定してとらえるのではなく、それによって学習者自身の「こころ」の変化や、その学習者たちが言葉を通じてコミュニケーションをすることで変化する「社会」も含めた大きな「社会システム」として考察を行ってます。

先日公開された第2回「学習による成長とは何か?いわゆる〈主体〉とは何か? ―変容しつづける人と社会―」では、「いったい、なぜ、第二言語を学ぶのか。」という問いかけから始まります。その答えは本当に、よく言われるような「仕事や将来のため」、「成長のため」なのだろうか。では、言語教育における「成長」とは何なのか……、と言語教育の根本的な部分が次々と問い直されていきます。
こうした問いに対して社会学者ニクラス・ルーマンの有名なオートポイエーシス概念などを用いることで、言語教育を俯瞰的にとらえ、「人」「ことば」「社会」の結びつきについて明らかにしていくのです。
読めば言語教育と社会に対する関心が高まることの間違いなしの連載です。ぜひご覧ください。



2021.8.25(水)

『自由研究 ようこそ!ことばの実験室(コトラボ)へ』刊行しました


私が言語学という学問に触れたのは、大学に入ってからでした。大学の講義で初めて言語学という授業を受けました。卒業して自分が作り手側に回り、大学生向けの入門書を作ってもいますが、もっと早くから言語学に触れる機会があれば、たとえば外国語を習うにしてもことばについての俯瞰的な視点を持つことができてより理解をしやすくなるのでは、という思いを持つようになりました。

また、自分の子どもの夏休みの課題を見ていると、読書感想文は自分が子どもの頃と違ってかなり定型に当てはめていく形で指導がされているのに、自由研究に関しては、相変わらず完全に自由、工作が研究?という雰囲気で、子どもでもちゃんとした研究フォーマットにのっとって課題を出来た方が良いのではないかと感じていました。

そして何より、小さい頃から言語学に親しみを持ってもらえれば、将来有望な言語学者が誕生するのではないかと考えました。

そんなときに、松浦年男先生がリサーチマップで「言語学関係夏休み自由研究ネタ7連発」という記事を書いていたのを知り、書籍の相談をしたのが本書の始まりでした。

出来上がった本書の内容は、周りの大人も協力しつつやらないとなかなか難しいかもしれませんが、かなり面白いトピックが並んだ充実した内容になったのではないかと思っています。言語学になじみのない親御さんにも、本書が届くようにプロモーションを頑張りたいです。

アマゾンではおかげさまで、24日の夜の段階で「小学生の国語の売れ筋ランキング6位」「Amazonの売れ筋ランキング868位」となっていました。「うんこドリル」と並んでいるのはなんだかすごいことのように感じています。


ぜひ将来の言語学者を育てるためにも、本書の宣伝につきましてもお力添えをいただけますと幸いです。

どうぞよろしくお願いいたします。

『自由研究 ようこそ!ことばの実験室(コトラボ)へ』(松浦年男著)





2021.8.12(木)

大掃除


先週、ひつじ書房では夏の大掃除を行いました。今年の夏の大掃除は、「1日目は社内全体の掃除、2日目は各自のデスクや棚など身の回りの掃除」というように2日間にわたって大掃除を行いました。

1日目の社内全体の大掃除では、私はエアコン掃除を主に担当しました。フィルターなどに思っていたよりホコリがたまっており大変でしたが、掃除の後にエアコンをつけたら、以前よりオフィスが涼しくなるのが早くなった気がして嬉しくなりました(気のせいな気もしますが)。
2日目は自分のデスクや、ゲラなどがしまってある棚の整理をしました。昨年の大掃除のころはまだ担当している書籍も少なく、荷物もそんなにありませんでしたが、1年経った今では、すでに刊行した書籍のゲラで満杯になっており、「この1年でずいぶん変わったなあ」という感慨に耽りながらゲラの山や書類を整理していました。

入社してから1年以上が経ちまして、まだまだ編集者としては未熟ですが、刊行した書籍も増えてきて、担当中の書籍も昨年よりも多く、少しずつ経験は棚の中のゲラと同じように積み重なってきているのではないかと思います。これからも毎日精進していきたいと思います。
ただ、ゲラや書類の山を整理するのは大変だったので、これからは大掃除だけでなくこまめに身の回りを片付けようと思いました。



2021.8.4(水)

音楽とことば


先日、リチャード・F・トーマス著、萩原健太監修、森本美樹訳『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』(ヤマハミュージックエンタテインメントホールディングス)を読みました。古典文学の教授である著者による、ハーバード大学でのディランの詩についての講義を書籍にまとめたもので、これを読むといかにディランの歌詞が詩の伝統に基づいたものかがよくわかり、2016年に彼がノーベル文学賞を受賞したことにも頷けます。
この書籍を読んだこともあり、最近、音楽におけることばの重要性について考えることが多くなりました。『ハーバード大学のボブ・ディラン講義』は文学の観点から歌詞を分析した本ですが、言語学もその一助になるように思います。

昨年、元THE BLUE HEARTSの甲本ヒロトが「若い世代は歌詞を聴きすぎ」と発言して物議を醸していましたが、私自身は数年前まで歌詞の意味など全然考えずに音楽を聴くことがほとんどでした。
そんな私が歌詞を気にしながら音楽を聴くようになったのはヒップホップを聴くようになってからでした。ラッパーのリリック(歌詞)が持つ強いメッセージ性は、歌詞を聴き流しがちだった私でも頭から離れないようなインパクトを持っていましたし、ライミング(韻を踏むこと)というかたちで歌詞が音楽的な技巧に直結するスタイルは、それまで歌詞と音を別個のものとして考えていた私にはとても新鮮に感じました。

ところで、突然ですが社会言語学に関心のある方にぜひおすすめしたいラッパーがいます。それはmoment joonというラッパーです。彼は韓国出身のラッパーですが、今は大阪に住んでおり、日本語でラップをしています。彼の歌詞は韓国人であることによって受けた差別や偏見などをテーマにして、日本の世相を鋭く切り取っています。また岩波書店のウェブマガジン「たねをまく」で連載を持っているのですが、そこではラップの歌詞でよく出てくる差別語(いわゆる「Nワード」など)について考察しており(連載の第5回、第6回)、社会とことばの関係についてとても深く考えているラッパーであることがうかがえます。(https://tanemaki.iwanami.co.jp/categories/904)

ヒップホップが世界の音楽のトレンドと言われるようになってから数年が経ちましたが、ヒップホップを言語学的に分析する研究をまとめた書籍があってもよいのではないかと考えています。すでに川原繁人先生は音声学の観点からラップを研究されて、『「あ」は「い」より大きい!?』でも日本語ラップについて取り上げていますが、moment joonのようなラッパーの歌詞を社会言語学の観点から分析したり、ラッパーの用いる比喩や表現法についても分析したりできるのではないか、など、音楽を聴きながら考えています。






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