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3月

2020.3.25(水)

本の手前


新型コロナで学校がお休みになった影響か、会社の近くの公園にはいつも子どもが遊んでいて、お昼に外に出ると賑やかです。

会社の裏の方の通りや周辺には、印刷製本関係の小さな町工場がいくつかあって、入口の前にはよく印刷が終わった紙が積まれたりしています。
おそらく思う以上に分業がされている業界ですが、細かくはあまり知られていないかもしれません(私も知らないことばかりです)。

以下の画像は、上製本の表紙(裏表)と、印刷された本文です。




表紙は背に箔押しと表4側に空押しがされています。これは凸版屋さんが凸版を作っています。

裏側を見ると、クロスの内側に灰色のボール紙が貼られていることがわかります。これは表紙貼り屋さんの仕事です。

このクロスは、表紙に使う布クロスはロールで巻かれているので、それを伸ばして断裁をする、クロスの断裁屋さんで加工されたものです。

右側には印刷して折られた本文がありますが、印刷所から来た本文をこのように折り、見返しと合わせて背を固める一連の加工屋さんもあります。

そうして、これらを花布やスピンなども合わせてそれぞれのパーツを合体させ、スリップや投げ込み、カバーや函も装着させて本の形に仕上げるのが、製本のクライマックスというところでしょうか。

会社の規模によって分業の状況も異なると思いますが。

本が好きで本について詳しい方も、実際の本になる前のパーツになっている状態を見ることはあまりないのではないでしょうか。

私はこういったパーツに愛着を感じてしまうのですが、人によっては本未満の何か、としかうつらないかもしれませんね。






2020.3.12(木)

まもなく刊行、『そのまんまの日本語』


弊社は年度末(2月)に合わせて刊行する本が多いため、毎年1〜2月が忙しくなります。
3月に入ると概ね落ち着くのですが、私に限ってはなぜか今年は3月に刊行する本も多く、いまだ喧騒の中におります。今週でひと区切りつくはずと念じつつ、来たものから打ち返すような仕事の日々です。

そんなわけで、校了ほやほや、3月末に出来上がってくる書籍のご紹介をしたいと思います。
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『そのまんまの日本語 自然な会話で学ぶ』
遠藤織枝 編 阿部ひで子・小林美恵子・三枝優子・高橋美奈子・高宮優実・中島悦子・本田明子・谷部弘子 著
http://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-89476-921-2.htm
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いかにも「教科書的」な作られた会話ではなく、実際の会話を使って作った、中級学習者向けの日本語会話教科書です。実際の会話とは、過去に弊社から刊行した『女性のことば・職場編』『男性のことば・職場編』『談話資料 日常生活のことば』から取っています。
音声CD(同じデータのダウンロードも可能)付きですが、個人情報や雑音などの問題からそのまま資料を使うわけにはいかないので、俳優さんに頼んで録音を行いました。このときに使った台本は、発話の重なりやいいよどみ、つまづきまで指示が入った詳細なもので、この通りに読むのは難しいだろうと私は思っていたのですが、プロの力はすごいです。
例えばこんな会話です。職場での休憩時間での3人の会話です。

1 池田:鹿児島行ってみたい、旅行で。
2 山本:鹿児島行くと、男の人がえばってそう。
3 池田:えっ?
4 吉川:えばってそう。
5 山本:鹿児島、男の人がえばってそう。
6 池田:でも、薩摩おごじょ、っつってー、強いんじゃないの、なんか。
7 山本:そうなんですか?
8 池田:うーん、てよく聞くけど、我慢強いってことなのかなあ。
9 吉川:ハハハハハ。表面的には男をたててるんだけど、裏では、実はちゃんと手綱を握ってて。
10 池田:実はねえ、手綱を引っ張ってるのは女。九州ではだいたいそうなの。
11 山本:そうなんですか? なんか、腑に落ちないな、それって。
(第10課 九州の女性より)

文章だけだとわからないのですが、音声を聞くと、特に前半はかなり発話が重なった部分の多い会話です。いかにも休憩時間にありそうな井戸端会議で、非常に臨場感があります。学習者が教室を出るとこのような会話の中に放りこまれるわけで、練習に役立つのではないでしょうか。スピード感がありすぎるのも教科書としてはあまりよくない、ということで、録音中は「ゆっくり」の指示がとんだ会話もありました。

余談ですが、アニメの会話は重なったりすることが少ないと聞いたことがあります。アニメの会話に違和感がある/現実感がないという意見にはそのあたりに原因があるのではと思いますが、今回の教科書はその真逆をいっています。

ちなみに本文は13課構成の140ページで、別冊で40ページ弱の語彙リストがつきます。語彙リストは、日本語の語彙に英訳・韓国語訳・中国語訳がついています。
ぜひご覧いただければうれしいです。


↑カバーの色校正。おもて面に書かれているのは、テキスト内からとった会話の一部。






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