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10月

2019.10.24(木)

手探りを楽しむ言語学マンガ



暑さより寒さを心配する季節になりました。やっと、という心持ちです。
10月は、ひつじ書房にとっては、目録『未発ジュニア版』の発送、科研費申請のお手伝い、学会出展となにかと忙しい月です。今年はこれらに加えてセール開催のため、なにかと社内がざわついています。
ここらで一休みというわけではないですが、言語学を扱ったマンガを見つけましたのでご紹介します。

『ヘテロゲニア リンギスティコ〜異種族言語学入門〜』(瀬野反人著、角川コミックス・エース)

研究者のハカバ君は怪我をした師匠の代わりに、モンスターの言語とコミュニケーションの調査をすることになります。対象は、ワーウルフ、クラーケン、スライム(!)などなど、文字通りの「異種族」。言語が違うどころか、発声器官の形、そもそもその有無からして違います。

最初は「この種族は息を吐く時の音を出すのが苦手」というような、ザ・言語学のような話だったのですが、話を追うにつれてボディランゲージメインの意思疎通をする鳥型モンスター・ハーピーの話が出てきたり(動きが速すぎてハカバ君には読み取れない)、嗅覚が重要な要素になるワーウルフの話、葬送文化の話になったりと、タイトルにある「言語」だけはでなく、文化・認識や概念の違いをコミュニケーションに必要な要素として、切り離すことなく扱っています。

それぞれとの交流に四苦八苦するハカバ君、また、モンスター同士も完全に通じているわけではないらしく、通訳として同行しているススキ(ワーウルフと人間の子)にもわからないことが多い様子。というよりもまずハカバ君とススキの意思疎通も完璧ではありません。わからないなりに試したり考えたりする様子が、淡々とつづられています。登場する言語やコミュニケーション上の謎にも、明確な解答が得られることは少ないようです。
旅の途中でハカバ君は、「私が理解だと思っていたこと 理解ではなく解釈だった 理解への壁は限りなく高い」という言葉に出会います。この姿勢が後の物語にどう繋がるのか楽しみです。

出版社の紹介文を見ると「モンスター言語学者が贈る異種族交流コメディ!」とあるのですが、「コメディ!」というよりも、架空旅行記、エッセイといったほうがよさそうな筆致です。研究日記というのが適切かもしれません。
言語学というよりも、文化人類学(人類ではないということは置いておきます)のフィールドワークでしょうか。じわじわと手探りするのを楽しむマンガだと思います。フィクションにおいて結末ではなく過程を楽しむタイプの物語が好きな方におすすめです。

現在、単行本は2巻まで発売中です。試し読みもあるようですので、興味を持たれた方は是非ご覧ください。





2019.10.8(火)

シリーズ完結!



今回はこの秋に完結となった2つのシリーズのご紹介です。

1つ目は、「英語コーパス研究シリーズ」〈堀正広・赤野一郎監修、全7巻〉。

第1巻 コーパスと英語研究(堀正広・赤野一郎編)
第2巻 コーパスと英語教育(投野由紀夫編)
第3巻 コーパスと辞書(赤野一郎・井上永幸編)
第4巻 コーパスと英文法・語法(深谷輝彦・滝沢直宏編)
第5巻 コーパスと英語文体(堀正広編)
第6巻 コーパスと英語史(西村秀夫編)
第7巻 コーパスと多様な関連領域(赤野一郎・堀正広編)

先日、『第1巻 コーパスと英語研究』が刊行となりましてシリーズ完結です。英語コーパス学会20周年を記念して企画された本シリーズは、編集担当者によりますと、企画のお話を頂戴したのは2011年とのこと。その後2015年に刊行開始となりました。先日の高知県立大学で行われた英語コーパス学会第45回大会では、シリーズ監修者の堀正広先生、赤野一郎先生をはじめとする先生方に完結を喜んでいただけまして、弊社の担当編集者もすっきりとした気分で鰹に舌鼓を打てたそうです。ちなみに、第1巻には総索引もついています。


2つ目は、「真田信治著作選集 シリーズ日本語の動態 」〈真田信治著、全4巻〉。

第1巻 標準語史と方言
第2巻 地域・ことばの生態
第3巻 アジア太平洋の日本語
第4巻 ことばの習得と意識

9月に、第4巻『ことばの習得と意識』が刊行となりましてシリーズ完結です。あとがきには「ひつじ書房社主の松本功さんから、「日本語の動態」に関する既発表の拙論を集成したシリーズ本を編むようにとのお勧めがあったのは、2016年盛夏のことであった。私としては、フリーになれたとはいえ、ある種の空虚感に浸っていた時期で、躊躇するところがあったのだが、しばらく逡巡のあと、〈言語変種〉〈言語接触〉〈言語計画〉〈言語習得〉をキーワードに、4つのテーマ(略)を設定して、各テーマに適う拙文を選び、テーマごとに論述を一本に紡いでみようと考えるにいたった。」とあります。2016年からちょうど3年での完結です。
外国人の受け入れ等をめぐり社会情勢がめまぐるしく変化する昨今、多様なことばの問題を考えるヒントを見つけることができると思います。各巻15章からなり授業でも使いやすい構成となっていますが、手にとっていただきやすい価格とサイズにもなっていますので、コーヒーブレイクのお供にもお勧めです。

来週には、弊社新刊・近刊目録『未発ジュニア 2019秋』の発送を予定しています。今回から目録のサイズが小さくなりました。B5判からA5判への変更です。未発ジュニアジュニア版といった方が良かったかもしれません。
お手もとに届きましたらぜひ今回ご紹介したシリーズも含めご検討いただけますと幸いです。







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