紙がない!
最近、書籍の紙を発注しようとして、「在庫切れです」と言われることが多々あります。
今年の2月頃から本文用紙やコート紙の品薄は常にありました。工場の火事や流通経路の問題、生産数の減少などが原因だそうですが、一時期回復していたので油断しており、7月に出来る本では代替の紙を探すのにてんやわんやでした。
本文用紙なんてなんでも同じでは、と思われるかもしれませんが、紙の厚さや透け具合、色味などが微妙に違います。
本文用紙は、弊社の学術書等の多くは、真っ白ではなく薄いクリーム色の書籍用紙を使っています。また、同じ銘柄の紙でも、「斤量」(紙の重さ)が何種類かあり、これは紙の厚さに反映されます。紙の厚さは、めくりやすさもありますが、例えば写真が多い本だったらあまり透けない紙の方が読みやすい、というようなことに関係します。
見た目でより明確に変わってくるのは、束幅(本の厚さ)です。
予定していた銘柄・斤量の用紙が品切れで別の紙にするとなると、高確率で束幅が変わります。1〜2mm程度ではありますが、表紙やカバーの印刷前に調整が必要です。
また、「ひつじ研究叢書(言語編)」のように函に入った本だと、事前に必ず束見本(実際の紙・頁数で作った白紙の本)を作っています。これに合わせて函を作るので、本文用紙が変わってしまうと函のサイズが合わなくなることがあり得ます。
辞書をつくる過程を描いた三浦しをんの小説『舟を編む』では、紙を吟味しているシーンが印象的でした。辞書の場合は、極薄の、めくりやすさを重視した紙になるのではと思います。辞書は頁数も多いので、紙厚と束幅の関係も顕著でしょう。
今回は幸いなことに代替の紙が見つかりましたが、今後はより計画的に、事前の用紙確保が重要になりそうです。「紙がない!」というフレーズはお手洗いにいる人だけのものだと思っていましたが、印刷・出版関係者にも回ってきてしまいました。
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