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5月

2019.5.30(木)

東京2020



今月の28日(その後延長されて29日11時59分)まで申込みを受け付けていた、東京2020大会オリンピック・パラリンピックの観戦チケット、みなさんはお申し込みされたでしょうか。
私はどうせ当たらないだろうなと思いながらも、ものは試しといくつか申込みをしてみました。どうなることか、結果が楽しみです。

テレビでの申込みの手順や申込みサイトの混雑っぷりについての放送で、あらためて気づいたことがありました。『東京2020』って「トウキョウ ニーゼロニーゼロ」って読むんですね。コマーシャルなどでもこのように読んでいるので公式的な読み方なのでしょうか。

日本語として西暦を読むときは「ニセンニジュウ」と四桁をまとめて千の位から読むことが一般的と思っていましたが、何らかの議論があったのでしょうか。
国際的にというなら英語圏に合わせて「twenty twenty」と真ん中で区切り二桁ずつ読むと思うのですが。

あらためて考えてみると、西暦に「年」を付けずに読むときは、数字のみを一桁ずつ読むことが多いような気がします。学会での先生方の発表などでも先行研究など「佐藤2009」とあれば「ニーゼロゼロキュウ」などと読み上げるのを耳にします。

そういえば村上春樹の小説は『1Q84』で、(イチキュウハチヨン)と読ませていました。カバーにローマ字読みが明記されていたので、どう読むのかという混乱はなかったように思います。書名を正しく伝えられるようにするというのはとても大切なことだと思うので、こういった点で読者にも書店員にもやさしい本ですね。

ひつじ書房の書名でも書店を困らせているものがあるかもしれません。すみません。

電話で「読めないのですが...」とよく言われるのは『音声学を学ぶ人のためのPraat入門』のPraat(プラート)ですが、先日刊行した『ICT×日本語教育』もICT(アイシーティー)のあとの×を読むか、何と読むかで議論があり、ひつじ書房としては×は読まずに(アイシーティー ニホンゴキョウイク)とすることにしました。

来月の新刊『ELAN入門』は(イーラン ニュウモン)と読んで頂ければと思います。
ELANは(エラン)と読まれることもあるようですが、本書では(イーラン)で統一しています。

覚えて頂けるとうれしいです。
どうぞよろしくお願い申し上げます。






2019.5.15(水)

印刷業界の「特色」




ひつじメール通信ではお伝えしておりますが、この春は新刊をたくさん刊行したほか、重版もたくさん行いました。

重版は、イメージとしては細かな誤字修正などはあるにせよ、基本的には前に作った本と同じ本が出来てくるとイメージされると思いますが、中々大変なところもあります。

その一つが、「特色」です。

ここで言う「特色」とは、一般的な意味では無く、印刷業界ではインキのことを指します。厳密に言うとプロセスカラー印刷(青、赤、黄、黒の4色)ではないインキのことを指します。

印刷は、青、赤、黄、黒の4色を掛け合わせて印刷されている、ということは聞いたことがあるかもしれません。
オフセット印刷は、それぞれの色に分けて版を作成し、それらを順番に刷り重ね合わせてカラーを再現しているわけです(ちなみに家庭用のインクジェットプリンターは、名前の通りインクを吹き付けているのでオフセット印刷とはまったく仕組みが違います。ゼロックスなどのレーザープリンターは、各色のトナー(粉)が紙に転写される形で印刷されています)。

しかし、このプロセスカラー印刷はデメリットもあります。4色を掛け合わせるので、鮮やかな色が出にくい、版を4つ作る必要がある、どうしても再現できない色がある(金・銀や蛍光色など)、などなど。

そこで登場するのが「特色」です。恐らく「特別な色」という意味合いでしょうか。簡単に言うと、いろんな色のインキで、例えば茶色一色で印刷したいなと思えば、特色の茶色を指定して印刷すれば良いのです。わざわざ4色フルカラーにする必要が無いのですね。

特色はインキメーカー各社が出していて、インキの色見本となる「色チップ」という見本帳があります。オーダーメードではなく、あくまでその見本帳から選ぶことになります。特色で一番良く使われているのは「DIC」(DIC株式会社(旧大日本インキ化学工業))です。

見本帳の色チップ

上の写真はほんの一部で、膨大な数が用意されており、自分が望む色を探すのは楽しくもあり大変な作業でもあります。

さて、ここで疑問を持った方もいるかもしれません。
「印刷屋さんは、その膨大な数の「特色」を全色取りそろえているの?」と。

それは不可能なので、通常印刷所では、指定された色にインキを「調色」します。特色には調色のために、カラーガイドと配合表が用意されており、指定された割合で色を混ぜ合わせて特色インキを作成します。配合表があるおかげで、いつでも同じ色が再現できるというわけですね。このインキを調色する作業は、インキを「練る」と呼ばれます。私も実際の作業現場を見たことはないのですが、少し長いですがyoutubeに動画がありました。

特色インキの作り方を紹介します(DIC F258)
youtubeへ

どうでしょうか。
予想以上に、手作業感がありますよね。

それで初めの重版の話に戻るのですが、特色で刷った表紙の本が重版で出来あがってくると、「んっ、何か色がちょっと違うぞ…」ということになりがちなのです。
微妙に色が違う…、ということもあれば、「明らかに色味違いますやん」というところまで色々あります。前の版の本と並べて見比べるのですが、難しいのは本も経年でどうしても色褪せてくるので、見比べている本が色褪せているから新しい本と色が違うのか、分からないこともあります。

さらに、初版を作るときに色校正を見てもうちょっとだけ黄色味が欲しい…、などと言っていると、元々指定していた特色のチップとも色が違ってしまいます。そういう場合は印刷所の記録だけが頼りですね。

そのような訳で、ボタンをポチで本ができてくる訳では無く、様々に人の手が介して出来てくるので、完全に同じモノができてくるわけではありません。なかなか版違いの特色で刷られている本を見比べる機会はないかもしれませんが、あれ、なんかこの本自分のと微妙に色味が違うぞ、と思うことがあるかもしれません。そのときはそういうことなんだなと思い出してもらえればと思います(明らかに違うと刷り直しになるので、実際気付かれることはほとんど無いと思いますが…)。






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