スコットランド住民投票
スコットランドの独立賛否を問う住民投票のニュースは、日頃日本になかなか届くことのないスコットランドの現状(の一端)を伝えるものであったと思います。開票された当日は朝からずっと気になっていた方も多いのではないでしょうか。
そんな今に、スコットランドを知る1冊としてご紹介したいのが、2013年2月に刊行した、米山優子先生の『ヨーロッパの地域言語〈スコッツ語〉の辞書編纂−『古スコッツ語辞典』の歴史と思想』。スコットランドのアイデンティティの複雑さを言語の面から知ることができる書籍です。
本書では、古英語と共通の素地をもち、中世のスコットランド王国では国家語として幅広く用いられたスコッツ語(Scots)が、英語との近似性ゆえに複雑なアイデンティティを抱える一方で、英語の地域変種とみなされたことにより、OED(Oxford English Dictionary) の内容を補完する大辞典編纂の機会を得た、その辞書編纂における思想と2002年に完成するまでの歴史が描かれます。はじめは、OEDを補完する、という目的だった古スコッツ辞典が、辞書編纂者たちの情熱によって、OEDの辞書編纂方針を超えた独自の編纂方針を打ち出していく過程には目頭が熱くなります。古スコッツ語をうつしだす「かがみ」として辞書編纂に取り組む編纂者たちにとって、この「かがみ」という言葉はどれだけ重いことか。私にとって、これまで編集を担当した書籍の中でもひときわ思い出深い1冊です。
本文、カバーともに、丸井栄二氏による素晴らしい装丁。こちらも注目です!
たまたま、なのでしょうが、今秋から放映のNHK朝の連続テレビ小説「マッサン」 は、スコッチ・ウィスキーを日本に伝えた竹鶴政孝が主人公のようで、今年はスコットランドづいている、のでしょうか。今後もスコットランド・ウォッチを続けたいと思います。
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