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2025.12.24(水)

カバーはイチョウ色です



12月を「師走」と呼び始めた人はほんとうに言葉のセンスがあるとしみじみ感じる、年末進行の今日この頃です。
そんな12月の新刊をご紹介します。
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『人間失格』の「のです」をどう翻訳するか
日独語対照文学研究
宮内伸子著

太宰治『人間失格』の全1176文のうち227文が「のです」ないしは「のでした」で終わっている。「のです」は日本語にとって自然で不可欠な表現だが、外国語には訳しにくい。これらはどう翻訳されるのか、それは正しく受け取られているのか。他にも吉本ばななや川端康成、宮部みゆき、三島由紀夫らの作品に加え、俳句の「日本語らしい」表現に注目し、ドイツ語への翻訳の方法を見ることで日本語文学の魅力を再発見する。

https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1284-4.htm
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村上春樹の作品は英語に翻訳しやすい、という話はしばしば耳にします。この本はその反対の、「訳しにくい」日本語表現がどのように訳されてきたのかということ、その訳しにくさは何に由来するのかということを考えるものです。
長年にわたって翻訳を通した日独語対照研究に取り組んできた著者が、研究者以外の人にもわかるようにということで様々な作品を題材に論じています。章立ては以下の通りですが、各章の作品ラインナップを見ていただくと、「たしかに訳しにくそう!」と感じてもらえるのではないでしょうか。

第1章 吉本ばなな『キッチン』―「してしまう」「気をつかう」に見る自然の成り行きと空気
第2章 川端康成『山の音』―省筆の美・曖昧さの魅力
第3章 三島由紀夫『愛の渇き』―華麗なる直喩の世界
第4章 太宰治『人間失格』―「のです」が示唆するもの
第5章 宮部みゆき『火車』―「てくれる」を手がかりに地上の視点を探る
第6章 山田太一ファンタジー三部作―終助詞「ね」と「よ」が伝えるもの
第7章 トーマス・マンと北杜夫(1)―ユーモア表現の違い
第8章 トーマス・マンと北杜夫(2)―語りの態度の違い
第9章 開高健『夏の闇』―人称代名詞の省略と主観的把握
第10章 俳句の翻訳の変遷

テーマがあまりに面白かったので、この面白さを伝えるべく第4章の内容をそのまま書名にさせていただきました。
ちなみに多くの例文でドイツ語のほかに英訳も併記しています。
年末年始の1冊にいかがでしょうか!





2025.12.10(水)

数字のフォント



みなさまは本を読んでいるとき、数字(算用数字)のフォントに注目されることはあるでしょうか。私は数字の形を見るのが好きで、つい目がいってしまいます。先日読んでいた本のノンブル(ページ数)のフォントが可愛いくていいなと思い、似た雰囲気のフォントが無いか探そうと手元でいくつかのフォントを見比べてみました。その本は1994年刊で、今とは組版の環境が違うので同じフォントは見つからないだろうと思います。

いいなと思った数字。


手元で数字を打ち込んでみたもの。


同じセリフ体(和文でいう明朝体)でも、よく見ると雰囲気が随分違います。今回は、ひつじ書房の本でよく使っているもの、一般的によく見かけるもの、そして個人的に好きなものなど、いくつかのフォントを試してみました。

本文での使用を考える場合は、和文フォントとの相性が重要なので、数字だけを基準にフォントを選ぶことはできませんし、和文フォントと組み合わせる時は、欧文と数字のフォントは同じものを使用することがほとんどなので、数字単体で検討することはまずありません。その分、ノンブルにあると目立つので、ノンブルの数字フォントは注目してしまいます。

似たフォントはあまり見つからなかったものの、さまざまな数字の形を見比べて楽しんでしまいました。

みなさまは、どの数字がお好みでしたでしょうか。





2025.12.9(火)

なぜ?を大事にする



昨日出社すると、先輩スタッフ2名が週末に髪を切ったようでさっぱりしていました。実は私も週末に髪を切ったのですが、整える程度だったので家族にさえ気づかれていません。美容師さんと「よいお年を」とご挨拶をして、今年も終わりに近づいていることをしみじみと感じました。

さて、ひつじ書房で仕事をしていて、さまざまなことを教わりながら最も痛感するのは、物事には理由があるということです。最近教わったのは、ゲラの校正作業に修正液を用いるのはあまり望ましくないということ。はじめはなぜだろう?と思いましたが、理由を聞いて納得しました。修正液は乾くのに時間がかかるからです。乾くのを待つ間に、続きの校正作業を進める人が多いのではないかと思います。するとどうなるか。乾くのを待っていたことをそのまま忘れて、修正液で消しただけになってしまう可能性があります。そういった理由なので、使うなら修正テープはOK(ただし、使う場合は他の場所を消さないように気をつけること)だそうです。もしくは、間違えた赤字にそのまま赤ペンで取り消し線を引いて消すのがよいと教わりました。やみくもに「修正液は使わない」と覚えるのではなく、「なぜ使わないのか」という理由を大事にして、きちんと仕事に生かしたいと思います。

こまめに目薬をさし、肩も首もぐるぐると回しながら、校正作業に勤しむ日々です。体もほどほどに労りながら、ひとつずつ学んで成長してゆきたいです。






2025.12.3(水)

名刺と名刺入れ



12月に入り、寒さも乾燥も一段と厳しくなってまいりました。「サブクレードK」という名前の、変異株のインフルエンザが流行しているそうです。体を温めて、栄養もしっかりと摂取し、予防に努めたいと思います。

さて、この頃の私は3つの学会に参加いたしておりました。新人が学会に参加したら必ず行う重要なこと……そのうちのひとつは、名刺をお渡しすることです。諸先輩スタッフの過去の日誌でも幾度か言及されていますが、ひつじ書房の名刺は少し変わっています。二つ折りなのです。お渡しすると、「ほほう、二つ折り!」等とおっしゃる方はとても多いです。この話題だけで、アイスブレイクになるので助かっています。「2枚重なっていますよ、1枚で大丈夫です」とお申し出いただいたこともあるので、よほど珍しい形状なのだろうと感じます。

弊社の名刺の形状も変わっていますが、私の名刺入れも少し変わっています。鮮やかなピンクのグラデーションカラーの、革製のものです。実は、この少々珍しい名刺入れに目を留めていただいて、アイスブレイクになればいいなと目論んで選んだのですが、弊社の名刺自体の形状があまりに珍しいので、今のところ目論みは不発に終わっています。しかし、二つ折りの名刺はかさばるのでこまめに補充しなければならないのですが、思いがけず私の名刺入れは大容量だったので幸運でした(容量のことは全く考えになく、色が気に入って選んだものでしたので)。

時節柄、みなさまもどうぞご自愛くださいませ。






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