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2026.4.21(火)

英語教育関係者以外にもおすすめです。『先生、英語ってなぜそう教えるんですか?』



私は学部生の頃、教員免許の取得を目指して教職課程も受講していました。色々と思い出はありますが、一番印象的なのはやはり模擬授業だったり教育実習だったりと、実際に授業をした経験です。教員免許は取得したものの教員にはなりませんでしたが、必死で授業準備をして拙いながらもなんとか教壇に立って授業をしたのは今でも良い思い出です。
それでも今思い返せば「教壇に立つ前に、もっと教育・授業について考えて勉強すべきだったのでは」と思うこともあります。模擬授業で取り入れたグループワークは、本当に必要な活動だったのかとか、振り返るとただ「なんとなく」で授業を成立させるために取り入れていたこともあった気がします。

前置きが長くなってすみません。なんでこんなことを振り返っているかと言いますと、先月3月に刊行したばかりの新刊『先生、英語ってなぜそう教えるんですか? 学生の疑問から考える英語科教育法』(仲潔・亘理陽一・藤原康弘著)の紹介をしたかったからです。
本書は、架空の大学を舞台にしてまして、英語教師志望の学生が、三人の著者の先生の一人に英語教育についての疑問や悩みを持ち込んできて、それに先生方が応える「オフィスアワー編」、その後に先生が他二人の先生にも学生の疑問を共有して意見交換をし、英語教育について多様な視点から検討する「グループチャット編」、学生が先生とのやりとりをノートにまとめた(各章のまとめの役割の)「ノート編」の3つのパートから、各章が構成されています。
「オフィスアワー編」は学生たちと先生の、グループチャットは先生方同士のやりとりですので、全て会話形式で進んでいきます。そのためとても読みやすいです。
各章で先生方に持ち込まれる学生の疑問(=章タイトル)は以下の通りです。
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1 文法って生徒に教える意味あるんですか?
2 楽しんでできるようになる授業はできる?
3 言語教師はやっぱり「ネイティブ」?
4 言語活動を通して基礎表現を定着させられる?
5 主体的に学習に取り組む態度って評価できるんですか?
6 英語の授業って英語で行った方がいいの?
7 教育に関するデータってどう捉えたらいいの?
8 オンラインで英語を使う機会は役に立つ?
9 リテリングって話すことの指導になってますか?
10 教科書ってどう使ったらいいですか?
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本書は英語の授業ですぐに役立つテクニックを教えるタイプの書籍ではありません。それよりも「どのようなテクニックが有効で生徒のためになるのか」「どうしてそのテクニックは有効なのか」といったようなことを考える教育的な本質の部分、「どう教えるか」ではなく「なぜそう教えるか」について(言語)教育研究の理論的な背景までしっかり学べる1冊になっています。

さて、冒頭で私が教職課程を受講していたことをお話ししましたが、私は英語ではなく社会科の教員志望でした。それでも私は、本書の編集をしながら「過去の自分に読ませたい!」と思いました。というのも、トピックは英語教育が中心ですが、中には他の教科の教育法にも役立つ知見がたくさん盛り込まれています。
冒頭で私が模擬授業でグループワークを「ただなんとなく」取り入れたことを反省したのはそのためです。「本当にグループワークを取れる必要のある授業だったのか。ただ単に生徒に作業的なことをさせるためだけに取り入れていなかったか」、そんなことを「9 リテリングって話すことの指導になってますか?」の原稿を読みながら考えたのでした。
9章でメインで扱われている「リテリング」自体は英語(外国語)教育での指導法の一つですが、この章で議論されていることの本質的な部分は、他教科の教員にも考えさせるものがあると思います。

英語教育関係者にはもちろん読んでいただきたいのですが、ぜひ英語以外の教育関係者にも手に取っていただきたいと思います。おそらく授業や教育を見つめ直すきっかけになるはずです。

『先生、英語ってなぜそう教えるんですか? 学生の疑問から考える英語科教育法』詳細ページ
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1245-5.htm







2026.4.7(火)

「シリーズ フィールドインタラクション分析」2冊目刊行!



このたび「シリーズ フィールドインタラクション分析」第5巻『「三夜講」で火祭りを準備する 野沢温泉道祖神祭りの伝承を支える仕組み』(榎本美香編)を刊行いたしました。

1巻の『多職種チームで展示をつくる 日本科学未来館『アナグラのうた』ができるまで』(高梨克也編)は、2018年の刊行でした。1巻の刊行から時間がたってしまいましたが、このたび第5巻を出版することができました。5巻ですが、「シリーズ フィールドインタラクション分析」の2冊目となります。

「「シリーズ フィールドインタラクション分析」の狙い」(シリーズ監修 高梨克也)より抜粋---------

本シリーズでは、これまで主に会話分析やジェスチャー研究の手法によって言語使用の研究をしてきた研究者たちが、展示制作や鮨屋、介護施設、ロボット演劇、火祭りといった特色のあるフィールドにおける人々の間の自然なインタラクションをビデオ収録し、分析するものである。タイトルの「フィールドインタラクション分析」における「フィールド」には、「自然な日常生活場面(フィールド)でのインタラクション」を分析するという対象としての側面と、インタラクション分析を「フィールドワークとして行う」という方法論の側面の両方の意味が込められている。
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本書では長野県野沢温泉村をフィールドに、野沢道祖神祭りの準備をになう「三夜講」という約100人の集団の相互行為を分析しています。榎本先生をはじめとする本書の執筆者の先生方は、野沢温泉村の人々に導かれて「三夜講」に出会います。「第1章 フィールド調査をする前に何が分からなかったか(榎本美香)」を読んでいただくと、最初はなにも分からないところから始まっていることが分かります。

「三夜講」というのは、野沢温泉村の公式ホームぺージで「男の厄年を迎える数えで42歳・41歳・40歳の3つの年代が「三夜講」と呼ぶ組織を編成し、この同じ仲間で3年間行事を行う。」とありますように、道祖神祭りを担う三世代の集団です。3つの年代の関係性や、前や次の代の「三夜講」との関係性は、祭りを伝承していくうえで大事なシステムとなっているのですが、その詳細や全体的な仕組みについては本書で明らかにされています。第2章の図2.2もご覧いただきたいです。

「第2章 どんなフィールドか(伝康晴)」以降、著者たちが長年のフィールドワークを通して知った野沢の人々の姿が描かれていきます。

「猿田彦の舞」、祭りを支える「縄結び」、「里曳き」(御神木のうちの2本を二組に分かれて山腹から祭りの会場まで曳き出す行事)など、身体技法の伝承に注目した章や、祭りの準備を行っている人々の様々な身体動作を分析・考察しているものなど充実した内容です。

フィールドでは、移り変わるものと変わらないものとが混在していて、それを見事にインタラクション分析という手法で浮かび上がらせています。

それから、本書では何度か「一升瓶」が登場します。コラムで出てくることが多かったと思いますが、本書のコラムやTipsは、フィールドでの研究の舞台裏を知ることができ、臨場感にもあふれています。必読です。6章の冒頭にでてくる、特別純米酒「水尾」もおいしそうでした。野沢温泉村にある水尾山が採水地とのことです。
https://www.mizuo.co.jp/

ぜひ『「三夜講」で火祭りを準備する』ご覧ください。よろしくお願い申し上げます。

(2巻、3巻、4巻は未刊です。どうぞご期待ください!)







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