まもなく刊行!『ディスコース研究のはじめかた』
この間までお正月気分だったのに、気づけば1月も最終週となっていました。年度末に刊行する書籍の編集作業が大詰めを迎えており、ひつじ書房は繁忙期の真っ只中です。私も来月・再来月刊行予定の担当書籍が何冊かありまして、てんやわんやしております。
今日はその中から2月中旬刊行予定の近刊、『ディスコース研究のはじめかた 問いの見つけ方から論文執筆まで』(井出里咲子・青山俊之・井濃内歩・狩野裕子・儲叶明著)ご紹介したいと思います。
本書はタイトルどおり、社会言語学・言語人類学・語用論・談話分析・会話分析など、ことばと文化社会を分析する「ディスコース研究」に興味のある学生向けに、ディスコース研究の入門的なトピックを解説したり、調査の方法を紹介したりする入門書です。各章の解説では興味深い研究事例が豊富に紹介されており、「そもそもディスコース研究って何?」という学生でも、その面白さがわかるようになっています。「ディスコースなんてことば、聞いたことない」という学生でも、自分を取り巻くこの世の中はディスコースで溢れており、とても身近なものであり、社会を考える上で非常に大事な概念なんだと本書を読めば気づくはずです。
執筆者の井出里咲子先生は第1章で以下のように述べています。ディスコースというものがとても身近なもので、そこに研究をはじめるためのタネがある、という意識の下に本書が執筆されたことがうかがえると思います。
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この本を手に取った方の中には、普段からことばが気になる、ことばが面白いと感じている人がいるのではないでしょうか。地元の方言に関心があったりJ-POP の歌詞をじっくり味わうのが好きだったり、SNSで見かけたちょっとしたことば遣いに面白さや違和感を抱く人がいるかもしれません。身の回りのことばに対する関心があり、「なぜ」や「どうして」と考えがちな人がいるほかに、卒業研究や課題のレポートのために新聞記事や雑誌の広告、インタビューを分析する必要がある人もいるでしょう。本書は私たちの日常生活の中で使われ、創り出されるさまざまなことばをディスコースとして分析するための技法を紹介したいわばガイドブックです。
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本書の特徴はそれだけではありません。「そもそも研究を始めるための「問い」はどのように見つけるのか」「ゼミを有効活用するためにはどうすればいいか」「卒業論文を書くとはどのようなことなのか」といった(ディスコース研究に限らない)研究のためのノウハウも懇切丁寧に解説しています。本書は単にディスコース研究にまつわる知識を読者に授けるだけの概説書ではなく、副題に「問いの見つけ方から論文執筆まで」とあるように、「どのように研究を始めればいいか/進めていけばいいか/レポート・論文にしていけばいいか」までしっかりサポートするような構成になっていまして、研究をしていくための伴走者的な一冊となっているのです。
そういった特徴は各章の間に挟まるコラムにも表れていると思います。コラムでは、卒業論文を執筆した学生へのインタビューや、執筆者の先生方がフィールドワークで体験した出来事、卒論ゼミの例など、学生が研究をするにあたって知りたいであろうことを知れるものになっています。
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(目次)
はじめに 井出里咲子
第1章 ディスコース研究をしてみませんか 井出里咲子
コラム①:卒論を書くという体験(1)
第2章 問いのタネの探し方、育て方 狩野裕子
コラム②:卒論を書くという体験(2)
第3章 方法の探り方と調査のプロセス 井濃内歩
コラム③:フィールドワークあれこれ(1)
第4章 ことばのやりとりを分析する 儲叶明
コラム④:フィールドワークあれこれ(2)
第5章 ナラティブ・語りを分析する 井出里咲子
コラム⑤:同意書の作り方
第6章 メディアディスコースを研究する 青山俊之
第7章 ゼミ的な場所のイミとその活用 井出里咲子
コラム⑥:卒論ゼミのスケジュール例
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2月中旬刊行です。新年度からゼミに入って本格的に専門分野を学び始めたり、卒論を書き始めたりする学生にピッタリの一冊となっています。また、「大学で言語を研究するってどんなものなのだろう」ということを考えている、来年から大学に入学する高校生にもうってつけです。春休みのお供にぜひ。
2月末の社会言語科学会には、出展ブースで本書も並べる予定ですので、ぜひお手に取ってもらえたら幸いです。
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