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2025.1.28(火)

まもなく刊行!『ディスコース研究のはじめかた』


この間までお正月気分だったのに、気づけば1月も最終週となっていました。年度末に刊行する書籍の編集作業が大詰めを迎えており、ひつじ書房は繁忙期の真っ只中です。私も来月・再来月刊行予定の担当書籍が何冊かありまして、てんやわんやしております。
今日はその中から2月中旬刊行予定の近刊、『ディスコース研究のはじめかた 問いの見つけ方から論文執筆まで』(井出里咲子・青山俊之・井濃内歩・狩野裕子・儲叶明著)ご紹介したいと思います。

本書はタイトルどおり、社会言語学・言語人類学・語用論・談話分析・会話分析など、ことばと文化社会を分析する「ディスコース研究」に興味のある学生向けに、ディスコース研究の入門的なトピックを解説したり、調査の方法を紹介したりする入門書です。各章の解説では興味深い研究事例が豊富に紹介されており、「そもそもディスコース研究って何?」という学生でも、その面白さがわかるようになっています。「ディスコースなんてことば、聞いたことない」という学生でも、自分を取り巻くこの世の中はディスコースで溢れており、とても身近なものであり、社会を考える上で非常に大事な概念なんだと本書を読めば気づくはずです。
執筆者の井出里咲子先生は第1章で以下のように述べています。ディスコースというものがとても身近なもので、そこに研究をはじめるためのタネがある、という意識の下に本書が執筆されたことがうかがえると思います。
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この本を手に取った方の中には、普段からことばが気になる、ことばが面白いと感じている人がいるのではないでしょうか。地元の方言に関心があったりJ-POP の歌詞をじっくり味わうのが好きだったり、SNSで見かけたちょっとしたことば遣いに面白さや違和感を抱く人がいるかもしれません。身の回りのことばに対する関心があり、「なぜ」や「どうして」と考えがちな人がいるほかに、卒業研究や課題のレポートのために新聞記事や雑誌の広告、インタビューを分析する必要がある人もいるでしょう。本書は私たちの日常生活の中で使われ、創り出されるさまざまなことばをディスコースとして分析するための技法を紹介したいわばガイドブックです。
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本書の特徴はそれだけではありません。「そもそも研究を始めるための「問い」はどのように見つけるのか」「ゼミを有効活用するためにはどうすればいいか」「卒業論文を書くとはどのようなことなのか」といった(ディスコース研究に限らない)研究のためのノウハウも懇切丁寧に解説しています。本書は単にディスコース研究にまつわる知識を読者に授けるだけの概説書ではなく、副題に「問いの見つけ方から論文執筆まで」とあるように、「どのように研究を始めればいいか/進めていけばいいか/レポート・論文にしていけばいいか」までしっかりサポートするような構成になっていまして、研究をしていくための伴走者的な一冊となっているのです。
そういった特徴は各章の間に挟まるコラムにも表れていると思います。コラムでは、卒業論文を執筆した学生へのインタビューや、執筆者の先生方がフィールドワークで体験した出来事、卒論ゼミの例など、学生が研究をするにあたって知りたいであろうことを知れるものになっています。
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(目次)
はじめに 井出里咲子

第1章 ディスコース研究をしてみませんか 井出里咲子

コラム①:卒論を書くという体験(1)

第2章 問いのタネの探し方、育て方 狩野裕子

コラム②:卒論を書くという体験(2)

第3章 方法の探り方と調査のプロセス 井濃内歩

コラム③:フィールドワークあれこれ(1)

第4章 ことばのやりとりを分析する 儲叶明

コラム④:フィールドワークあれこれ(2)

第5章 ナラティブ・語りを分析する 井出里咲子

コラム⑤:同意書の作り方

第6章 メディアディスコースを研究する 青山俊之

第7章 ゼミ的な場所のイミとその活用 井出里咲子

コラム⑥:卒論ゼミのスケジュール例
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2月中旬刊行です。新年度からゼミに入って本格的に専門分野を学び始めたり、卒論を書き始めたりする学生にピッタリの一冊となっています。また、「大学で言語を研究するってどんなものなのだろう」ということを考えている、来年から大学に入学する高校生にもうってつけです。春休みのお供にぜひ。
2月末の社会言語科学会には、出展ブースで本書も並べる予定ですので、ぜひお手に取ってもらえたら幸いです。






2025.1.14(火)

境界と周縁


年末年始休暇が終わりまして、繁忙期ムードに入りつつあります。
少し風邪気味ですが、体調を整えつつのりきっていきたいと思います。

休暇中『進撃の巨人』を読みました。途中理解が及ばない部分もありましたが、おもしろくていっきに読んでしまいました。『進撃の巨人』を読みながら、巨大な壁が作りだす境界やそこから生み出される周縁というものをぼんやりと考えていたお正月でした。次はアニメもみたいと思います。

近刊を1冊紹介します。

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『境界と周縁:社会言語学の新しい地平』(三宅和子・新井保裕編)

〇内容
本書は、21世紀の言語・コミュニケーションの課題に「境界」と「周縁」の視点から迫る。ジェンダー、翻訳通訳、危機言語、移動する人々、方言やマイノリティ言語、言語実践のリアリティなどをテーマとする11の論考は、「境界」と「周縁」の恣意性、曖昧性、政治性、暴力性、潜在するイデオロギーを多様な論点と方法で顕在化させ、新たな研究の地平を照らしだす。 執筆者:新井保裕、新垣友子、井上史雄、尾辻恵美、木本幸憲、熊谷慈子、クレア・マリィ、寺尾智史、坪井睦子、滕越、三宅和子

〇目次
まえがき 
序章 三宅和子「「境界」と「周縁」の観点から読み解く社会とことば」

第Ⅰ部 「境界」の引き方
1章 クレア マリィ 「娯楽と社会運動の境界:「LGBTブーム」の言語的レガシー」
2章 坪井睦子 「バルカン・バベル:言語の境界と翻訳」
3章 木本幸憲 「多言語地域における言語シフトと危機言語を考える:フィリピンの事例から」
4章 滕越 「幼少期に中国と日本を往還した若者のアイデンティティ交渉:共通の傾向と年齢に応じた変化」

第Ⅱ部 周縁性がもたらすもの
5章 井上史雄 「方言景観と方言みやげの社会史」
6章 熊谷慈子 「メディアが再生産する方言イメージ:ドラマと翻訳に描かれる東北方言」
7章 寺尾智史 「播州ことばを起点に世界の周縁言語話者と考える言語多様性継承:それでも話し続けることの言語社会学的対照」
8章 新垣友子 「琉球諸語の再生のために:世代を超えて繋がる力」

第Ⅲ部 「研究」の捉え直しと越境
9章 尾辻恵美 「「トランス」の向こう側に:「言語化された世界」の内実」
10章 新井保裕 「研究・教育の越境をめざした本書の学び方」

あとがき 
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各論考の扱うテーマはさまざまですが「境界」と「周縁」という視点から言葉やコミュニケーションの問題に迫ります。本書全体を通して読んでいただいて、新しい視点や方法を感じていただければと思います。
論文の後には「私の研究遍歴」と題したコラムを掲載。各著者の貴重な「自分史」を掲載しています。必見です。

来月末の社会言語科学会にはお披露目したく、鋭意編集中ですので、どうぞよろしくお願いいたします。






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