藤岡 岳哉
様々な偶然が重なり、去年の十月から半年の間、私は「ひつじ書房」でインターン生として働かせていただきました。(1)今春から私が他の出版社で働くため、その前に出版事業の概観をつかんでおきたい (2)編集者として将来役立つようなスキル(またはそのきっかけ)をつかんでおきたい という2点が、大学四年の時点でインターンを行おうと考えた動機だったように思います。そしてインターン募集をかけている出版社を探していく中で、採用直結形式ではなく、「他の会社へ就職する予定の大学四年」をその募集条件にしている「ひつじ書房」に、運良く私はめぐり会えたわけです。
次に、私が経験した「ひつじ書房」でのインターンの特徴を、(1)業務内容面、そして(2)それ以外の面、にわけた上で紹介してみたいと思います。
(1)はさらに2つにわけられるように思います。倉庫での書籍運搬、データ入力などの「事務作業」がその一つに、作成中の書籍の校正(私の場合初校から刊行時点まで)、その書籍に関するプレスリリース作り、献本先の策定などの「編集作業」がもう一つにあたります。
(2)については、「ひつじ書房」自体がとてもアットホームな会社であり、そしてそのアットホームさが、「質問のしやすさ」などという意味でも、働きやすい環境につながっていると感じた、ことをあげたいと思います。
では、そのようなインターンを通じ、私は何を得られたのでしょうか。
まず、「事務作業」「編集作業」この双方に取り組む中で、書籍の作成から流通に至る流れを、私はしっかり学び取ることができたように思います。また、採用直結形式のインターンのほとんどが、形だけの就業体験機会を用意するにすぎないに対し、それらの作業は文字通り就業体験と呼べる、とても裁量の大きなものであり、それゆえ「自分自身で考え、実行する習慣」を、そしてそこで必要とされる「スキル」を、私は身に付けられたように思います。結果的に私がそこで得たものは、私がインターンを始めようと思った動機に見事に答えてくれるものでした。
日本ではまだ無給かつ、採用直結形式のインターンが多いのに対し、このような「ひつじ書房」のインターンは、ある意味半ボランティア的な試みであるようにも思います。そのような貴重な経験を提供していただいた、代表の松本さんをはじめスタッフの方々、本当にありがとうございました。