句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん|第10回 公用文における句読点|岩崎拓也

 今回は、公用文では句読点がどのように扱われているのか、ということについて見ていきたいと思います。まず前半では、2022年1月に建議された「公用文の考え方(建議)」における句読点についての記述をまとめてみたうえで、課題と私案を挙げてみたいと思います。後半では、公用文の書き方を紹介している書籍をとりあげ、句読点にかんする記述をまとめます。そのうえで、私たちはどのように句読点を扱っていけばいいのかを考えていきます。

そもそも公用文とは

 公用文というのは、国や公共団体が出す文書や法令などに用いる文章のことを指します。たとえば法規や公示といった法律をまとめた文書やそれを一般に知らせるための文書、答申や申請などといった公的なやりとりにかんする文書、場合によっては賞状や表彰状といったものも公用文に含まれます。

 後ほど紹介する文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」では、この公用文の定義・分類が改められ、大きく三つに大別されました(「告示・通知等」「記録・公開資料等」「解説・広報等」)。これにより、官報や府省庁が発する文書などだけではなく、広報誌や府省庁ウェブサイト、SNSアカウントも公用文に含まれるようになりました。これは一つの大きな転機と言えるでしょう。

文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」における句読点

 では、この文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」とはどういった流れで決まったものなのでしょうか。ご存知の方も多いかもしれませんが、あらためて文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」が示されるまでの流れをざっくばらんに説明しておきたいと思います。

 この連載の第1回でも見てきたように、あまり認知されてはいないものの、日本語の句読法には一定の規範が存在しています。それは、1946年(昭和21年)に文部省(現在の文部科学省)教科書局調査課国語調査室によって作成された『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』というものと、1952年(昭和27年)4月4日付けで内閣閣甲第16号依命通知として作成された『公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕』(以下、「公用文作成の要領」)というものです。この「公用文作成の要領」からすでに約70年が経った現在、「基本となる考え方は現代にも生きているものの、内容のうちに公用文における実態や社会状況との食い違いがあることも指摘されて」(文化庁(2022:1)きたため、今回の文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」が示されました。

 このなかでは、上述したような公用文の定義・分類といった基本的な考え方にはじまり、表記の原則、用語の使い方、文体の選択などといった公用文を作成するにあたり必要な要素についてまとめられています。

 今回の連載でかかわる部分は「Ⅰ表記の原則」の「5 符号を使う際は、次の点に留意する」のなかの「(1)句読点や括弧の使い方」です。以下に該当箇所を引用します。

5 符号を使う際は、次の点に留意する
(1)句読点や括弧の使い方
 ア 句点には「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは、読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。ただし、一つの文書内でどちらかに統一する。
 イ 「・」(ナカテン)は、並列する語、外来語や人名などの区切り、箇条書の冒頭等に用いる。
 ウ 括弧は、()(丸括弧)と「」(かぎ括弧)を用いることを基本とする。()や「」の中に、更に()や「」を用いる場合にも、そのまま重ねて用いる。
         例)(平成26(2014)年)「「異字同訓」の漢字の使い分け例」
 エ 括弧の中で文が終わる場合には、句点(。)を打つ。ただし、引用部分や文以外(名詞、単語としての使用、強調表現、日付等)に用いる場合には打たない。また、文が名詞で終わる場合にも打たない。
        例)(以下「基本計画」という。)   「決める。」と発言した。
     議事録に「決める」との発言があった。「決める」という動詞を使う。
     国立科学博物館(上野) 「わざ」を高度に体現する。
 オ 文末にある括弧と句点の関係を使い分ける。文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。
 カ 【】(隅付き括弧)は、項目を示したり、強調すべき点を目立たせたりする。
       例)【会場】文部科学省講堂  【取扱注意】
 キ そのほかの括弧等はむやみに用いず、必要な場合は用法を統一して使用する。

「公用文作成の考え方(建議)」での句読点や括弧といった符号についての記述(p.4)

 この「公用文作成の考え方(建議)」には、「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」(以下、「解説」)というものがついていて、各文について説明されています。句読点にかかわる「ア」「エ」「オ」をこの「解説」とともに一つずつ見ていきましょう。

ア 句点には「。」(マル)読点には「、」(テン)を用いることを原則とする。横書きでは、読点に「,」(コンマ)を用いてもよい。ただし、一つの文書内でどちらかに統一する。

 「ア」は、句読点の組み合わせの問題です。これまで「公用文作成の要領」においてはコンマ「,」とマル「。」が推奨されてきました。そのためにテン「、」とマル「。」の組み合わせとの混在状態が生じており、書き手を混乱に陥れてきました。この「ア」では、原則としてテン「、」を使用するように定めており、句読点の組み合わせが約70年ぶりに実態に即した形になったと言えるでしょう。

 ただ、「読点に「,」コンマを用いてもよい」とあるように、文章のジャンルによっては、コンマの使用を続けているものもあります。私の身の回りでは、論文の句読点は雑誌によっていまだにバラバラです。テンとマル、コンマとマルの組み合わせだけでなく、学会誌によってはコンマ「,」とピリオド「.」の組み合わせ使用するように指定されていることがあります。そのためか「解説」では、「学術的・専門的に必要な場合等を除いて、句点に「.」(ピリオド)は用いない。」(p.17)という追記がなされています。個人的には、投稿する学会誌によってパソコンの設定をいちいち変えるのは面倒なので、できれば今後はテン「、」とマル「。」に統一していってほしいものです。

エ 括弧の中で文が終わる場合には、句点(。)を打つ。ただし、引用部分や文以外(名詞、単語としての使用、強調表現、日付等)に用いる場合には打たない。また、文が名詞で終わる場合にも打たない。

 「エ」では、カッコ(原文は漢字表記ですが、この連載ではカタカナ表記を用いています)と句点の関係について述べています。「括弧の中で文が終わる場合には、句点(。)を打つ」ということなので、一つ目の例「(以下「基本計画」という。)」の「という」という文の後ろには句点がついています。ですが、「公用文作成の考え方(建議)」に書かれている以下の三つの例では「決める」に句点がついている例とついていない例があります。これはどういうことでしょうか。一つずつ見ていきましょう。

 「決める。」と発言した。
 議事録に「決めるとの発言があった。
 「決めるという動詞を使う。
  (下線部は筆者によるもの。以下同様。)

 最初の例では、発話を示したかぎカッコであるため、句点がついているものと考えられます。その一方で、次の例の「決める」の閉じかぎの直前には句点がありません。これは、実際に「決める」と言ったとも考えられるだけでなく、「決めるという旨の発言があった」というような捉え方もできます。この場合、直接的な引用というわけではないため、句点をつけていないとも考えられます。また、最後の例に出てくる「決める」は発言ではなく、単に単語としての使用であるため、句点をつけていないと考えられます。

 ただ、これらの例を見てみると、最初の例「「決める。」と発言した。」の「決める」の直後の句点は不要だと思う人も多いのではないでしょうか。第8回の連載でも触れましたが、新聞や小説などの書籍などでは発話であっても閉じかぎの前に句点はつけません。これは、閉じかぎを使用することで発言の終わりであることを示すことができるため、句点をわざわざ使用して示す必要はない、という考えによるものだと思われます。

オ 文末にある括弧と句点の関係を使い分ける。文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。

 「オ」もカッコと句点の使い分けの問題で、ここでは、特に文末にあるカッコと句点の組み合わせについて問題としています。使い分けの方法として2種類が規定されています。解説には例文があるので、まずはそれを見てみましょう。

文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。
  例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。
 さらに、二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。
  例)当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)

「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」における文末にある括弧と句点の関係の例(p.17)

 一つは、「文末に括弧がある場合、それが部分的な注釈であれば閉じた括弧の後に句点を打つ。」というもので、カッコの中の文の意味が注釈なのかそうでないかによって句点をつけるかどうか、判断するというものです。例を見てみましょう。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である。)。

 いかがでしょうか。閉じカッコ内外にそれぞれ句点がある(。)。)文というのは、非常に珍しいのではないでしょうか。個人的には実態にそぐわないような気がします。また、「部分的な注釈」という説明も曖昧です。この点については、次の二つ目の使い分けを見ながら考えてみましょう。

 もう一つの使い分けは、「二つ以上の文、又は、文章全体の注釈であれば、最後の文と括弧の間に句点を打つ。」というもので、以下の例が挙げられています。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)

 こちらの例では、地の文(「〜予定している」)の末尾とカッコ内の文(「〜付した」)の文に句点がついています。このように句点をつけるのは「二つ以上の文、又は、文章全体の注釈」のときとありますが、この例の解釈として、「別紙として、決定に至った資料を付した」は「当事業は一時休止を決定した。」にたいする「部分的な注釈」として捉えることも可能ではないでしょうか。その場合、以下のように一つ目の使い分け(。)。)が適用されることになるはずです。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した) 。

 カッコ内の文が「部分的な注釈」か「二つ以上の文、又は、文章全体の注釈」かによって句点の位置が変わるのは書き手・読み手ともにやさしくない使い分けのように思えます。

 なお、「解説」では、この点について少し補足説明がされています。

なお、一般の社会生活においては、括弧内の句点を省略することが多い。解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、括弧内の句点を省略することがある。
  例)年内にも再開を予定しています(日程は未定です)。

「(付)「公用文作成の考え方(文化審議会建議)」解説」における文末にある括弧と句点の関係の例(p.17)

 「解説」では、一般の社会生活においては、カッコ内の句点が省略されることが多いとあります。そのため、文で終わっていることがはっきりしている場合に限って、カッコ内の句点を省略できると書かれています。これを踏まえて、先ほどの例を修正してみると、以下のようになります。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(日程は未定である)。
当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している。(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した)

 上の例は「解説」の例と同じですし、よく見るカッコと句点の組み合わせだと思います。問題は、下の例です。カッコの後に句点がないため、文末が分かりにくくなっています。閉じカッコが句点の代わりをするので、不要では?とも思われます。ですが、場合によっては「(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した)最新情報」というように「最新情報」にたいするカッコだと見えてしまします。このように、直後に文が続く場合は、カッコだけでは文末は明示できません。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した) 最新情報は来月までに報告する。

 一番わかりやすいのは、次の例のように、閉じカッコの後に句点をつける方法だと思います。この方が「部分的な注釈」か「二つ以上の文、又は、文章全体の注釈」かに関係なく、「閉じカッコの後には句点をつける」という運用ができ、見た目も統一されます。書き手にとってはこの使い方が一番わかりやすいのではないでしょうか。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した) 。最新情報は来月までに報告する。

 また、「公用文作成の考え方(建議)」と「解説」では触れられていませんが、句点とカッコだけでなく、メールなどでよく使用される改行についても考慮するべきです。例えば、一文が長くなったために途中で改行したい、というようにメールでは、文の長さも考慮することがあります。この場合、以下のように地の文とカッコの文の間で改行するのがわかりやすいと思います。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している
 (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した)

 では、これらの文のどこに句点をつけるべきでしょうか。まず、私が提案した「閉じカッコの後には句点をつける」のルールによると、以下のようになります。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している
 (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した)。

 しかし、このように地の文に句点がないのは、文末が示されていないため、よくありません。では、地の文に句点をつけて、その上で「解説」の「なお、一般の社会生活においては括弧内の句点を省略することが多い」という説明にあるようにカッコの文の句点を消してみるとどうでしょうか。

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している
(別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した)

 閉じカッコが句点の代わりをする、考えから見れば、これでもいいように思えます。ですが、改行をした場合、カッコの文に句点がないというのが気になる人も一定数はいるのではないでしょうか。個人的には、このような場合は「公用文作成の考え方(建議)」の「オ」で示されたように、地の文とカッコの中の文の両方に句点をつけるとわかりやすく示すことができると考えます

当事業は一時休止を決定した。ただし、年内にも再開を予定している
 (別紙として、決定に至った経緯に関する資料を付した。)

 さて、ここまでをまとめてみましょう。2022年の「公用文作成の考え方(建議)」と「解説」では、句読点の組み合わせが原則、テン「、」とマル「。」になりました(テンの代わりにコンマ「,」を使用してもいいという付記されています)。また、カッコと句点にかんしては、カッコの中で文が終わる場合には、句点(。)をつけるように示されました。ただし、引用部分や文以外(名詞、単語としての使用、強調表現、日付等)に用いる場合、文が名詞で終わる場合には句点はつけなくていいとあります。

 さらに、文末にあるカッコと句点については、文末にカッコがある場合、それが部分的な注釈であれば閉じカッコの後に句点をつけること、二つ以上の文・文章全体の注釈の場合は、最後の文とカッコの間に句点をつけること、というようにまとめられています。ただし、解説・広報等では、そこで文が終わっていることがはっきりしている場合に限って、カッコ内の句点は省略することがある、と付記されています。

 では、2022年の「公用文作成の考え方(建議)」と「解説」を踏まえて、公用文の書き方を解説した一般の書籍では、どのようにまとめられているのかを見てみましょう。磯崎(2022)では、[第2次改訂版]として、これまでの「公用文作成の要領」と「公用文作成の考え方(建議)」で改められた点を詳述しています。句読点についても1章割いて記述されています。

 磯崎(2022)では、句読点のルールを解説する前に、こう述べています。

しかしながら、ここでは国語としての句読法(句読点の打ち方のこと。)を論ずるわけではない。ここで説明したいのは、飽くまで公用文作成上必要となる句読点の打ち方である。この点については、特に読者の留意をお願いしたい。こう言うのは、前述のように、句読点についてはその基準となる出典がほとんどなく、以下の記述はおおむね私の個人的体験から体系化したものであるからである。

(磯崎2022:92)(注:太字は筆者によるもの)

 太字で示したように、このような一般の書籍の句読点の記述部分は個人的体験がまとめられ、示されているという現状があるわけです(とはいえ、おそらく新たに示された「公用文作成の考え方(建議)」と「解説」、そして、以前から示されていた『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』や「公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕」を参考にしていると思います)。とはいえ、これは別に磯崎(2022)に限ったことではありません。同様に、公用文の書き方をまとめた書籍である小田(2022)においても、同様の記述が見られます。

 「、」の打ち方については報告書2021には詳しく書かれていないので、以下は私の持論です。読点「、」は、次のような場合に使うと効果的です。

(小田2022:48)(注:太字は筆者によるもの)

このように、私案(試案?)としてまとめているため、それぞれ異なる見解も存在しています。たとえば、句点にかんして言えば、小田(2022)では、文中のカッコが文の場合でも句点をつけないと書かれていますが(一つ目の例)、磯崎(2022)では、「④( ) の中が文になっているときは、「。」を打つ。」と書かれています

閉じ括弧の前には「。」を打ちません。
例)
・申請日の翌日から7日以内(土・日曜、祝日を除く。)に送付します。   ⇨ 申請日の翌日から7日以内(土・日曜、祝日を除く)に送付します。
・当事業は一時休止を決定しました。ただし、年内に再開を予定しています(日程は未定です。)。  ⇨ 同上・・(日程は未定です)。
・イベントに参加した方は、「とても勉強になる。もっと多くの方に参加してもらいたい。」と話してくれました。  ⇨ イベントに参加した方は、「とても勉強になる。もっと多くの方に参加してもらいたい」と話してくれました。

小田(2022)における句点のルール(p.46)

公用文における句点のルールは、次のとおりである。
①文末には、原則として「。」を打つ。
②文末が「〜こと」又は「〜とき」のときは、「。」を打つ。
③文末が体言(名詞)又は「〜もの」のときは、「。」を打たない(一連の文章中ある文を文節のため体言止めにしているような場合を除く。)。
④( ) の中が文になっているときは、「。」を打つ。
 例 本庁各部局(警察本部を除く。)は、予算要求書を本日中に提出してください。なお、( ) の中で体言止めに続いて文がくるときは、例外的に体言の後ろに「。」を打つ。
 例 建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号。以下「区分所有法」という。)第1条の規定に基づき〜

磯崎(2022)における句点のルール(pp.92-93)

 句点だけではなく、読点についても異なる見解が見られます。たとえば、磯崎(2022)と小田(2022)では、ともに七つのルールを示していますが、取りあげている内容が異なっていることがわかると思います。

読点のルール① 文の長短によって打つ場所は変わる
読点のルール② 単文の主語の後には打つ
読点のルール③ 動詞の連用形の後には打つ
読点のルール④ 接続詞の後には打つ
読点のルール⑤ 名詞を列挙する場合は打つ
読点のルール⑥ 重文の場合、主語の後には打たない
読点のルール⑦  接続助詞の後には打つのが原則

磯崎(2022)における読点のルール(pp.94-101)

①主語・主題の提示直後
②日時や場所の提示直後
③ひらがなや漢字表記が続くとき
④対になる句の場合は接続のところだけに打つ
⑤接続詞(旬)の後
⑥動詞の連用形の後
⑦文中に長い句を挿入する場合?!

小田(2022)における読点のルール(pp.48-49)

 ここで注意してもらいたいことは、私はこれらの書籍の書き手を批判したいわけではありません。むしろ、ここまで体系化できていることはすごいことです。ですが、いわゆる文章のプロであっても句読点の打ち方(解釈)が異なっている現状は、問題が山積していること、未整理であることの証拠でもあります。

 私が思うに、句読点の最大の課題は句読点の打ち方をどう教えるべきか、ということです。国語科での教育・指導において、句読点を適切に取り扱い、継続的に指導することが今こそ求められていると思います。句読点の機能が多岐に渡ることは、これまでの連載でも見てきたと思いますが、このことが句読点をどう指導していいかわからない、句読点をどうやって使ったらいいかわからない、という現状に陥っている原因だと思います。今回取り扱った公用文などと小説やブログ、SNSといったテキストとは、使うべき句読点のルールを別に捉える必要があるのではないでしょうか。読点を打つことで主語を明確にしたり、読点を打つことで文の多義性を排除したりするというのは、書き手が読み手に正確に意図を伝えるための読点、言い換えれば「正確さのための読点」です。これは、いわゆる公用文、契約書などといった、間違いがあってはいけないような文書に必要な読点です。その一方で、小説で間を示したり、強調を示したりするような読点は、「表現としての読点」です。いずれにせよ、句読点というのは「読みやすさのために使うもの」であり、そのテキストにふさわしい打ち方を選択できるような能力を醸成する必要があります。

 この文章の始めに書いたように、「公用文作成の考え方(建議)」では、公用文の定義・分類が改められて「告示・通知等」「記録・公開資料等」「解説・広報等」の三つになり、官報や府省庁が発する文書などだけではなく、広報誌や府省庁ウェブサイト、SNSアカウントも公用文に含まれるようになりました。つまり、ひと口に「公用文」と言っても、さまざまな媒体のさまざまなテキストが対象となるのです。句読点やカッコ、そのほかの記号の使い方も媒体によってうまく使い分けができるようになる必要があると思います。今後はより、読み手にわかりやすい句読点をはじめとした符号・記号の使い方が求められるといえるでしょう。

 次回(最終回)は、身の回りにあるさまざまな句読点を取りあげて、句読点を使った表現の多様性をみていきたいと思います。

参考文献

  • 内閣閣甲第16号依命通知(1952)『公用文作成の要領〔公用文改善の趣旨徹底について〕』(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/kento/kento_03/pdf/sanko_2.pdf)
  • 文部省教科書局調査課国語調査室(1946)『くぎり符号の使ひ方〔句読法〕(案)』(https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1126388/1)
  • 文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf)2022年10月31日確認
  • 磯崎陽輔(2022)『分かりやすい公用文の書き方[第2次改訂版]』ぎょうせい
  • 小田順子(2022)『令和時代の公用文 書き方のルール―70年ぶりの大改定に対応』学陽書房

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