句読法、テンマルルール わかりやすさのきほん|第8回 国語教育における句読点|岩崎拓也

 みなさんは、国語の授業で句読点の使い方について習った記憶はありますか?

 私は残念ながら覚えていません。みなさんのなかにも私と同じように覚えてないという方がいるのではないでしょうか。そんな影の薄い句読点ですが、国語の教科書にはしっかりと取りあげられていて、その使い方が教えられています。

 では、みなさんも毎日必ずと言っていいほど使っている句読点は、一体どのようにして取りあげられ、教えられているのでしょうか。今回は、日本の国語科教育、特に小学校において、どのように句読点が教えられているのかを見ていきたいと思います。

 以下では、まず、教育指導要領においてどのように句読点の指導が記述されているのかを確認します。そして、そのあとに現在の国語の教科書においてどのように書かれているのかを見ていきたいと思います。

『小学校学習指導要領』における句読点にかんする記述

 句読点にかんする内容は、『小学校学習指導要領(平成29年告示)』(以下、「指導要領」)の第2章第1節第2「各学年の目標及び内容」に書かれています。学年ごとにどのように書かれているのか、それぞれの記述を見てみましょう。

 〔第1学年及び第2学年〕では、〔知識及び技能〕の「⑴ 言葉の特徴や使い方に関する事項」の「話し言葉と書き言葉」の欄に句読点ということばが出てきます。

 (「指導要領」では、コンマが使用されており、その表記をそのまま引用しています。以降に引用する『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』も同様です。)

ウ 長音,拗音,促音,撥音などの表記,助詞の「は」,「へ」及び「を」の使い方,句読点の打ち方,かぎ(「 」)の使い方を理解して文や文章の中で使うこと。また,平仮名及び片仮名を読み,書くとともに,片仮名で書く語の種類を知り,文や文章の中で使うこと。(『小学校学習指導要領(平成29年告示)』p.29、下線は筆者(以下同様))

 小学校1・2年生では、間違えやすい助詞である「は」「へ」「を」やかぎカッコの使い方、また、ひらがなとカタカナの表記の使いわけなどとともに、句読点の使い方を学ぶと記されています。このことから、句読点が日本語表記の基礎の一つとして扱われていることがわかります。

 小学校1・2年生では具体的にどのように指導されるべきだとされているのでしょうか。詳細が説明されている『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』(以下、「解説」)を見てみると、次のようにまとめられています。

 句点については,文を書く際には,文末に必ず句点を打つように指導し,文意識を育てていくようにすることが大切である。読点については,文頭の接続語などの後,主語の後,従属節の後,並列する語の後など必要な箇所に打つことを理解することが重要である。(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』p.44)

 句点については、文末にはつけるように指導すること、句点をつけることで「文意識」を育てていくことの大切さが書かれています。また、読点については、「文頭の接続語などの後」「主語の後」「従属節の後」「並列する語の後」などを直後に読点が必要な箇所として取りあげています。これらの箇所が具体的にどのような箇所なのか、教科書を確認してみたところ、「文頭の接続語などの後」は「だから、」「しかし、」のような接続表現、「主語の後」は「太郎は、」の「は」のようなとりたて助詞、「従属節の後」は「食べると、」のような接続助詞、「並列する語の後」は「こと、〜こと」のような例で用いられていました。

 では、次に小学校3・4年生でどのように句読点が扱われているかを見ていきましょう。〔第3学年及び第4学年〕の「2 内容」の〔知識及び技能〕の「⑴言葉の特徴や使い方に関する次の事項を身に付けることができるよう指導する。」にも「句読点を適切に打つこと」という記述があります。

ウ 漢字と仮名を用いた表記,送り仮名の付け方,改行の仕方を理解して文や文章の中で使うとともに,句読点を適切に打つこと。また,第3学年においては,日常使われている簡単な単語について,ローマ字で表記されたものを読み,ローマ字で書くこと。(『小学校学習指導要領(平成29年告示)』p.32)

 ここでいう「句読点を適切に打つこと」とは、どういうことでしょうか。このことについては「解説」に詳しく書いてあります。

句読点を適切に打つことは,第1学年及び第2学年のウの「句読点の打ち方」を理解して文や文章の中で使うことの発展である。句読点は,文の構成と関係している。特に読点は,意味を明確に伝えるために,文頭の接続詞などの後,主語の後,従属節の後,並列する語の後などに適切に打つことが求められる。第3学年及び第4学年では,それらに加え,文を読みやすくまた分かりやすくするために,文脈に合わせて適切に打つことができるようにすることが求められる。その際,「カ 主語と述語との関係,修飾と被修飾との関係,指示する語句と接続する語句の役割,段落の役割について理解すること。」と関連付けて指導することが有効である。(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』p.79)

 小学校3・4年生で学ぶ「句読点を適切に打つこと」は、1・2年生で学んだ句読点の使い方の発展だと述べられています。また、1・2年生と異なる点としては、句読点が文の構成と関係していること、読点が意味を明確に伝えるために適切に打つことという記述が増えている点です。

 このように記述されている句読点を、どのように教えていけばいいのでしょうか。「解説」の「⑴ 言葉の特徴や使い方に関する事項」の「話し言葉と書き言葉」のなかに句読点をどのように教えていくべきかが書かれています。ここには、句読点が「実際に書く言語活動」をつうじて理解し、使えるようになることが重要だと述べられています。では、この「実際に書く言語活動」が具体的にどのようなものなのかを考えるにあたり、小学校の教科書での記述をもとに見ていきたいと思います。

第3学年及び第4学年では漢字と仮名に関するきまりや句読点,ローマ字の読み書き,第5学年及び第6学年では文や文章を読みやすいものにするための漢字と仮名の使い分けや送り仮名,仮名遣いについて示している。これらについては,実際に書く言語活動を通じて理解し適切に使うことができるようにしていくことが重要である。(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』pp.17-18)

小学校国語科教科書における句読点にかんする記述

 小学校国語科教科書に書かれている句読点にかんする記述を見てみましょう。

 まず、1・2年生の教科書を調べて見たところ、 全ての1年生の教科書において、句読点の使い方の説明がありました。大きくまとめると次のとおりです。

・書いた文章を読み返すときの確認項目としての句読点
・文章に句読点を入れる練習
・原稿用紙に書くときの句読点

 では、実際に見てみましょう。「書いた文章を読み返すときの確認項目としての句読点」というのは、次のようなものです。書いた文章をもう一度読み直して確認するさいに文末に句点がついているか、テンを付けたほうがいい箇所があるかどうかを確かめるように書かれています。

光村図書(2021)『こくご 一下 ともだち』p.20

 また、二つ目の「文章に句読点を入れる練習」というのは、学校図書の教科書において見られました。三つの文章に句点だけをつけたり、句点と読点を句読点やかぎカッコをつける練習があります。左下の「まる・てん・かぎのつけかた」を見てみると、「文の おわりには まる、文の 中には てんを つけます。」と書かれているのがわかります。これは、「指導要領」にある「文意識」を意識した活動だと言えるでしょう。

学校図書(2021)『みんなとまなぶしょうがっこうこくご 一ねん 下』

学校図書(2021)『みんなとまなぶしょうがっこうこくご 一ねん 下』

 さらに、句読点の使い方にかんする活動としては、声に出して文を読むことで、読点にたいする意識・使い方を気づかせる、といったものがあります。また、読点を使って文を区切ることで読みやすくなることや、意味が変わってしまうことも書かれています。第3回の連載で、このような例は漢字に置き換えると読点が不要になると書きました。ですが、小学校1年生という、漢字をまだ多く知らない児童にはちょうどよい例文であると言えます(なお、学校図書の教科書では、この文字種の問題もあわせてとりあげられています)。

 三つ目の「原稿用紙に書くときの句読点」を見てみましょう。大人になった今となっては懐かしい原稿用紙の使い方ですが、原稿用紙のマスの右上に句読点を書くことや、句読点が行頭に来ないようにするといった使い方が示されています。

教育出版(2021)『ひろがることば しょうがくこくご 一上』

東京書籍(2021)『新しい国語 二上』p.151

 この原稿用紙の使い方では、かぎカッコと句点を組み合わせて一緒に使うように書かれています。ですが、このかぎカッコと句点を一緒に使う方法は原稿用紙における独特な使い方で、新聞や小説などの書籍ではあまり見られない組み合わせです(第5回の連載の「4)句点とかぎカッコの関係」を参照。とはいえ、原稿用紙を使って文章を書くことが少なくなった今、このような内容が必要なのか個人的には疑問が残ります……。

 では次に、3・4年生の教科書における句読点にかんする記述を見てみましょう。

・原稿用紙に書くときの句読点
・これまでに学んだ言葉としての句読点
・書く練習における修正

 

 一つ目の「原稿用紙に書くときの句読点」は次のような例ですが、書かれている説明は先ほど説明した1・2年生のものと同じような内容ですので省略します。

光村図書(2021)『国語 四上 かがやき』pp.134-135

 二つ目の「これまでに学んだ言葉としての句読点」では、これまでに学習した用語の整理として、句点と読点の使い方がそれぞれ説明されています。また、次の光村図書の三年生の教科書では、句読点に加えて、中点やダッシュ、かぎカッコなどの符号も合わせて紹介されています。

光村図書(2021)『国語 三上 わかば』p.97

 最後の「書く練習における修正」は、例えば次のようなものです。ここでは、手紙を書く練習において、下書きとそれを書き直した例が取りあげられています。書き直した部分を見てみると、日時の部分で時間を追記して示す場合に読点を使っています(並列の用法の読点)。また、「それから」の直後に読点を打つように修正されています(接続表現の直後の読点)。明示的に句読点について言及されているわけではありませんが、「解説」にも示されている「実際に書く言語活動」をつうじて理解し、使えるようになるための活動であると言えます。

東京書籍(2021)『新しい国語 三下』p.32

 一部の教科書では、5年生の教科書でも句読点にかんする記述がありました。教育出版の教科書では、付録に「くぎり符号の使い方」というものがあり、句読点を含め、さまざまな符号の使い方がまとめられています。また、メールの書き方の説明において、「句読点をきちんと打つ」という注意が書かれていました。「きちんと」という表現にはあいまいさがあるものの、メールを書くときに句読点に注意することが明示的に書かれていることは、句読点を意識するよい練習になると言えます。

教育出版(2021)『ひろがる言葉 小学国語 五下』pp.130-131
教育出版(2021)『ひろがる言葉 小学国語 五下』p.134

 横書きのコンマについても教科書に書かれています。たとえば、手紙を書く練習では、縦書きではテンを、横書きではコンマを、というように使いわけが見られます。

学校図書(2021)『みんなとまなぶしょうがっこうこくご 一ねん 下』

 また、一部の教科書では、「よこ書きのときに気をつけること」として「点(、)では なく コンマ(,)を つかう ことが ある。」と丁寧に説明がされていました。このように横書きにコンマを使用しているのは、『くぎり符号の使ひ方』と「公用文作成の要領」に依拠しているためです(参考:「教科書の言葉 Q&A 第21回横書きの文章の読点は 「、」? それとも「,」?」)。

 とはいえ、今後の文化庁の方針(「公用文作成の考え方(建議)」)を見るとわかるように、縦書き/横書きにかかわらずテンを使うことが原則となるため、このような説明はなくなるかもしれません。

東京書籍(2021)『新しい国語 二上』p.73

まとめ

 いかがでしたでしょうか。現在の小学生がどのように句読点を学んでいるのか、その一端がわかったかと思います。学習指導要領をもとに、各教科書において工夫をもって句読点の使い方を取り扱っていることがわかります。私自身、今回改めて教科書を調べてみて、句読点を含む符号がしっかりとまとめられ、一覧表になっているものさえあるということに驚きました。しかし、やはり一番の問題は、これだけしっかりと考えられているのにもかかわらず、句読点について習った記憶がない人が多いという現状なのではないかと思います。句読点を適切に使うことが、読みやすくわかりやすい文章を書くうえで重要な要素であることを、授業のなかで児童に伝えていく必要があると思います。

参考文献

  • 文化庁(2022)「公用文作成の考え方(建議)」(https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/kokugo/hokoku/pdf/93651301_01.pdf)2022年5月11日確認
  • 文部科学省(2018)『小学校学習指導要領(平成29年告示)』東洋館出版社
  • 文部科学省(2018)『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説【国語編】』東洋館出版社

教科書

  • 東京書籍(2021)『新しい国語 二上』
  • 東京書籍(2021)『新しい国語 二下』
  • 東京書籍(2021)『新しい国語 三下』
  • 光村図書(2021)『こくご 一下 ともだち』
  • 光村図書(2021)『こくご 二下 赤とんぼ』
  • 光村図書(2021)『国語 三上 わかば』
  • 光村図書(2021)『国語 三下 あおぞら』
  • 光村図書(2021)『国語 四上 かがやき』
  • 教育出版(2021)『ひろがることば しょうがくこくご 一上』
  • 教育出版(2021)『ひろがることば しょうがくこくご 一下』
  • 教育出版(2021)『ひろがることば 小学国語 二上』
  • 教育出版(2021)『ひろがることば 小学国語 二下』
  • 教育出版(2021)『ひろがることば 小学国語 四下』
  • 教育出版(2021)『ひろがる言葉 小学国語 五下』
  • 学校図書(2021)『みんなとまなぶしょうがっこうこくご 一ねん 下』
  • 学校図書(2021)『みんなと学ぶ小学校こくご 二年 上』

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