皆様こんにちは。おのはん!の時間がやって参りました。今月も日常で見つけたオノマトペを取り上げて、少し掘り下げていきます(上げて下げる)。9月も末になり、だんだん涼しくなってきました。これから秋を迎えて、暑さで参っていた食欲も戻ってきそうです。というわけで、今日は食べ物の話をしていきたいと思います。
ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン
先日の連休で帰省をしておりまして、実家で暇を持て余しておりました。実家はずっとテレビがついているので、ぼーっとEテレを見ていたところ、「ゴー!ゴー!キッチン戦隊クックルン」という料理番組が始まりました。アニメと実写と学園生活とヒーロー物と料理番組を混ぜ込んだ内容で、「最近の料理番組はもはやひとりでできるものではないのだなぁ」と思っていたところ、突如敵役として「ネバネバオクーラとネバネバナメーコ」という名前の怪人(?)が出てきて、なにやらコントめいたやりとりを始めました。内容としては、ナメコの方が「今までネバネバ同士コンビを組んできたが、自分はネバネバとよりは『ヌメヌメ』なので、もうコンビを続けられない、抜けさせてもらう」とオクラに対して脱退宣言をしたところ、オクラが一人を嫌がって追いすがる、という感じでした。確かに、ナメコはあんまり「ネバネバ」という印象は個人的にはありません(どういう料理にするかにもよるかもしれませんが)。
その後、メインキャラクターのうち3名が、オクラやナメコの粘性物質についていろいろ語った後、一人が「大発見!『ネバネバ』も『ヌメヌメ』も『ネトネト』も、全部ナ行で始まるね!」ととても鋭い指摘をするのですが、他の二人からはあえなくスルーされるという、個人的には悲しい一場面もありました。そこを音象徴として突き詰めていくと面白いと思うんだけどなぁと考えていたら番組が終わってしまいました。あの天下のEテレの、語学系番組でなく料理番組でオノマトペに出会えるとは、テレビもまだまだ捨てたものでは無いのかもしれません。
ネバネバなのかヌメヌメなのか
その後、オクラとナメコが仲違いする原因になってしまった、両者の粘性物質には違いがあるのか、ざっくりネットで調べてみたところ、どうもどちらも「ムチン」と呼ばれる糖タンパク質による粘り気であることがわかりました。このムチンは里芋や納豆、モロヘイヤにも含まれており、様々な食材のネトネトやネバネバ、ヌメヌメの素のようなのです。では、オクラは「ネバネバ」で、ナメコは「ヌメヌメ」である、という認識はどこから来たのでしょうか?個人的には「ナメコ」に含まれる音が「ヌメヌメ」に部分的に一致するためにそのように感じられたのかな、と思っていたのですが、どうもそうではないようです。
ナメコの食用としての活用方法として、以下の説明があります。“食用で味噌汁やそばの具、おひたし、炒め物をはじめとして、料理に多用される。傘の開ききっていない小さなものはツルツルとした喉越しが楽しめる。”(https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%B3 より引用)
ナメコはキノコの表面に粘性物質が付いており、しかも食用にされる際は汁物や具材として混ぜ込まれることから、口に入れる時点でこの粘性物質が薄まっており、ネバネバどころか「ツルツルとした喉越し」になってしまうのでは、と推察されます。対してオクラは、実の内部に粘性物質が蓄えられており、粘性物質の濃度が高い状態で口に入るため、食感が「ネバネバ」していると感じられるのではないでしょうか。
粘性の強度とオノマトペの関係
様々な物理尺度とオノマトペ表現との対応関係を明らかにしようとする試み・研究はいくつかありますが、粘性に関して行っている事例は、今のところ寡聞にして聴いたことがありません(https://www.tatourui.com/trivia/trivia_vol.1 ←こちらでは少しオノマトペが取り上げられています)。実験においてオノマトペを提示するのはかなり簡単なのですが、物理刺激を段階的に細かくコントロールして提示するのはなかなかに困難ですし、物質に関する専門知識が必要になるため、なかなか手を出しにくいのです(それもあり、コントロールが難しい刺激ほど扱われない傾向があります)。粘性物質は多様ですし、加わる力によって反応も変わりますので、かなり難しい部類に入りそうです。材料工学の研究者との共同研究が望まれます。まったくどうでもよいのですが個人的に長年「グミ」の弾性とオノマトペに関する研究がやりたいな…と思っています。製菓メーカーの研究者のお声がけを是非お待ちしております。
・参考文献/サイト
https://jspp.org/hiroba/q_and_a/detail.html?id=3861&key=&target=#:~:text=%E3%82%AA%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%81%AA%E3%81%A9%E3%81%AB%E8%A6%8B%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B,%E4%B8%A1%E8%80%85%E3%81%8B%E3%82%89%E5%90%88%E6%88%90%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82
https://www.maff.go.jp/j/pr/aff/1109/spe2_01.html
https://www.iijan.or.jp/oishii/products/mushroom/post-76.php#:~:text=%E4%BB%8A%E5%9B%9E%E3%81%AE%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%81%AB%E3%81%AA%E3%81%A3,%E3%81%AE%E3%82%88%E3%81%86%E3%81%AB%E7%B2%98%E6%80%A7%E7%89%A9%E8%B3%AA%E3%80%82
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%A1%E3%82%B3
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%81%E3%83%B3