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オノマトペハンター おのはん!|第16回 今回のオノマトペ:「キラ・ぴか・モフ」|平田佐智子

 

みなさまこんにちは。毎度おなじみオノマトペハントのお時間です。今回のオノマトペは、教育テレビに出てくるキャラクターかな、と思われてしまうようなトリオですが、この後詳しくご説明いたします。

さて、世間は空前のインフルエンザブームですね。毎朝毎晩混雑した電車に乗っている身ですが、幸いこの冬はまだ体調を崩していません(今、これから崩すフラグが立ってしまったかもしれません)。関東は全く雨が降らずカラカラの日が続いているのも一つの要因だと思いますので、早めに雨が降ることを祈っています。お子さんがいらっしゃるご家庭は特に大変かと思いますので、万事において無理のないようお過ごしください。

そんな中、私は同人誌を作っておりました。先日も2月に発行する同人誌の編集作業を終え、印刷所に入稿しました。この時にふと気になったのが、「紙の種類」です。冊子を印刷する際には、紙の種類によってかなり刷り上がりの印象が違ってきますので、私も素人なりに試行錯誤して決めています。同人誌は基本的にページ数が少ないので、重めでしっかりとした紙を使う傾向にありますね。

印刷を実際に発注したことがない方はあまり気にされないかもしれませんが、印刷用の紙にはとにかくたくさんの種類があります。上質紙やコート紙(表面がツルツルしている、チラシなどに使われる紙)は一般的な印刷用紙ですので、「上質紙90kg」というように、紙の種類と重さで表現されることが多いです(紙の重さが重くなると、ちょっと高級な感じがします)。辞書を作るお話である「舟を編む」では、辞書に使われる紙がめくりやすいかどうか、というお話が出てきますが、辞書はなるべく軽くて薄くて強く、かつめくりやすいという特殊な紙が使われています。このあたりは本当にさわりですが、紙ジャンルは非常に奥深いです。世の中には筋金入りの紙マニアもいらっしゃいますので、私が語るには早すぎるのですが、今日は紙のお話です。

 

特殊紙の名前を調べる

先ほど、紙の名前は「紙の種類+重さ」で区別する、という話をしましたが、特殊な製法で作られた紙は「特殊紙」と呼ばれ、紙の種類として特徴的かつ格調高い名前がついています。印刷所の中には、このような特殊紙も含め、その印刷所で扱っている紙の見本を「用紙見本」として配布しています。単語帳のように一枚一枚異なる紙が綴じてあり、紙の名前が印刷してあります。入稿時、どの紙を使うかを検討する際は、この用紙見本をめくりながらどれにするかを決めます。たまに、「いつかこの紙を使ってみたいな」と特殊紙のところだけをめくったりすることもあります(そして大抵お値段で諦めます)。

今回はそんな特殊紙の名前にオノマトペが含まれないか、調べてみました。…が、前回の会社名と同様、かなり難航しました…。まず、見つけたオノマトペ(怪しいものも含めます)入り特殊紙の名前をご紹介します。参考にさせて頂いたのは、株式会社竹尾さんの「紙の詳細検索ページ」です。各印刷会社さんが、取り扱っている紙のリストを公開されているのですが、一番種類が多そうだったのでこちらのサイトにお世話になりました。

 

OKミューズキララ

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=85

まずは、OKミューズキララです。「キララ」部分をオノマトペと判定しました。キララ、の名の通り、「パールの輝きを散りばめた華麗なカラーヴァリエーションです。」(サイトより)とのことで、キラキラしています。こういった光り物が漉き込まれた紙はお値段が上がってくるのと、印刷する内容を選ぶので、上級者向けだと言えましょう。

 

新だん紙きらら

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=559

再び「きらら」です。ですが、こちらはひらがな表記になっています。なぜひらがな表記かといいますと、こちらの紙が「宮中の儀式にも用いられていた伝統ある和紙『檀紙』を再現した」(サイトより)ものだからのようです。そして、説明を読み進めていくと、どうもこのきららは「雲母」のことらしく、オノマトペ由来ではない可能性が出てきました。雲母が「うんも」以外に読み方を持つ事自体が初耳でしたので、語源に詳しい方がいらっしゃったらご意見を伺いたいところなのですが、とりあえずは初見判断ベースでオノマトペを含むことにさせて下さい(でないとあまりに数が少なすぎるのです)。

 

ヌバテックス】(ピックアップ)

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=556

こちらはオノマトペ由来ではないのですが、名前の響きにインパクトがありましたので、ピックアップしてご紹介します。こちらの紙は独特の質感(ぬめり感)があるそうです。紙なのにぬめり感、というのがなんとも不思議で、是非とも触ってみたい紙のひとつです。ぬめぬめするのでしょうか。

 

ハイピカE2F・ハイピカE2F+

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=281

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=761

こちらは「ピカ」が含まれている、文字通りピカピカした紙です。金ピカと銀ピカ、さらに姉妹品として厚物があります。アルミが蒸着してあるらしいので、金属的なピカピカなのでしょうね。ハイピカの「ハイ」はhighなのでしょうか。

 

モフル

http://www.takeo.co.jp/finder/search/details.php?d_id=529

これは絶対に「モフモフ」から来ているに違いない!と思ったのですが、模様を「毛布」で付けて作るそうなので、毛布由来の可能性があります…柔らかそうで、触り心地のよさそうな質感が特徴的です。なお、カラーバリエーションが多く、全てにアイスクリームの味のような名前がついているのが素敵ですね。

※ここで編集部より情報を頂きました。なんと紙見本帳をお持ちだったようです。紙見本に添付された説明によると、モフルの名前の由来は「…まるでかわいい動物の毛並みのように優しく、温かみのある風合いと手触り。指先でそっとなでてみると、モフモフとしたカラダを触っているみたいな、幸せな気持ちになりました。モフルの名前は、そんな感触と、紙に縦の目を付ける毛布に由来しています。」とのことでしたので、半分くらい「モフモフ」から来てると言ってもよいでしょう!そういうことにいたしましょう。

 

以上、ピックアップも含めて5種類をご紹介しました。オノマトペ由来かと思いきや、ちょっと微妙なのもありましたが、ご容赦下さい。ちなみに、どういった物が多いかというと、高級紙だからか、「ウェイビーウェイビー」「マーメイド」など英語由来の物や、「ヴァンヌーボ」「アラベール」といったフランス語のような響きを持つ物(フランス語は詳しくないので響きで判断してます)、あとは「ケナフ」「サンドカラー」など素材の名前をそのまま使用している物も多かったです。

 

キラキラ

https://www.yoshimori.net/kirakira

さらに編集部より情報を頂きました(さすが、餅は餅屋さんです)。オノマトペそのものが名前として付けられている紙があるそうです。「庶民派的なパール」をイメージしたパール紙の一つである「キラキラ」は、光に当てると細かい光沢がキラキラとささやかにきらめく、奥ゆかしい特殊紙です。こちらは竹尾さんのWebサイトには出てこないのですが、ご紹介しておきます。

 

オノマトペが付いた紙がもっと出て欲しい

オノマトペは触感表現が得意なので、紙の触り心地を表すオノマトペを紙の名前として付けることで、わかりやすくなるのでは、と考えていたのですが、よく考えてみると、これだけ紙の種類が多い中で、例えば「ザラザラ紙」という物があっても、どれくらいザラザラなのかがわからないのですね。ちなみに「ざら紙」は関西方言で「わら半紙」のことですが、あれは対極に上質紙(真っ白でサラサラなコピー用紙)があるから成り立つ表現なのでしょうか(しかしコピー用紙のことを「サラ紙」とは呼ばないのでした)。どれくらいザラザラで、あるいはモコモコで、フワフワなのかを細かく表現するのが難しいオノマトペは、特殊紙の名前には使われないのかもしれません。あるいは、やや幼稚な印象を持たせるオノマトペは、特殊紙特有の格調高い名前としては不適切なのかもしれません。

また、オノマトペは触覚に比べると視覚的表現の種類が少ない傾向にあります。今回はピカとキラが名前に付けられていましたが、そもそも紙の印象は色や見た目、どのような柄がついているか、などの「視覚的な情報」が重要であると考えられます。そのため、光沢が付いているのか、どのような柄が付いているのか、などの情報の多くをオノマトペ以外の表現でうまく伝えているのかもしれません。

にしてもかなり抽象的な名前が多いですね、特殊紙の名前は。マーメイドはさざ波のような柄が付いているからこの名前だそうなのですが、連想ゲームのような付け方です。

 

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