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オノマトペハンター おのはん!|第14回 今回のオノマトペ:「サクッ・スルッ」|平田佐智子

朝晩少しずつ冷えてきましたが、皆様いかがお過ごしでしょうか。昼夜の気温差で知らないうちに身体が冷えてしまい、体調を崩している人が多いようです。これから本格的に寒くなる前に、きちんと寒さ対策を進めておきたいものです。

 

さて、今回のオノマトペは、チキンに関するオノマトペです。チキンといっても、クリスマス用のローストチキンの話ではなくて(あれはもともとチキンではないですし)、某ファーストフードの新しいチキンスティックのCMがとてもオノマトペのことを考えているなぁと感じたので、紹介してみます。

まずはこちらをご覧ください。

 

短いCMですが、オノマトペの特性の重要さがよくわかるCMになっています。

オノマトペは言語の一部なので、その言語を話す人にとって発音しやすい音列で構成されていなくてはなりません。日本語のオノマトペであれば、日本語の音韻で構成されている必要があるわけです。そのため、いくら「チキンを頬張る際に出る衣のくだける音」が素晴らしいからと言って、それをそのまま品名にすると、だれも発音として再現できず、オーダーもできないことになってしまうのですね。

ボイスパーカッションや、鳴き真似などの類は、言語ではありませんので(まれに言語っぽく聞こえることもありますが)、オノマトペとは別の物になります。なお、おそらく同じ音を表現しているはずのオノマトペが、言語によって少し異なるのは、各言語がもつ音韻システムがかなり異なるからであるというのが理由の一つだと考えられます。

さて、チキンのCMを見ていたので、少しお腹が空いてきました。某M社は新しいチキンの宣伝をしていますが、チキンの大御所といえば、某K社ですね。某K社のCMにはどのようなものがあるのでしょうか。もしかしたら同じように工夫をしてチキンのおいしさを伝える工夫をされているのかもしれません。少しCMを見てみましょう。

 

はい。よくわかりませんでしたね。

なお、K社の他のCMも見てみましたが、K社は衣がやわらかいチキンを提供しているせいか、音による特徴があまりなく、オノマトペの出番もないようです。むしろ、K社のチキンの味については誰もが知るところですので、いかに「食べたい状況に持っていくか」という戦略になっているように見えます。そのため、女優さんがしきりに「今日はチキンの日にしよう」と主張しています。どこも自社製品の強みをふまえて宣伝を打っていることがよくわかります。

 

話は変わって、この間たまたま見つけたCMがオノマトペ満載だったので、こちらも紹介します。ある塗り薬のCMです。乾燥するこの時期は肌荒れが発生しやすく、皮膚の触覚が敏感になります。そのため、手荒れ・肌荒れのための薬用品のCMや、肌触りの良い衣類・寝具などのCMが多く見られ、それらにオノマトペが多用されています。

なんともやさしいCMですね。特に手は常に様々な物に触ってしまうので、ベタつきやネバつきが気になる部位です。そのような部位に塗る薬としては、塗った後の心地よさ・違和感の無さは重要視されているのだと考えられます。

そういえば、ハンドクリーム(ハンドミルク)の新商品でも、オノマトペが多用されていました。こちらです。

「ポン・スルッ・サッ」という三拍子揃ったオノマトペで、ハンドミルクの使いやすさ・手軽さと、使用に適した状況をうまく例示しています。使った後に蓋を閉めなくてもよいクリームは便利なので、私も欲しくなってきました。

ハンドクリームの大御所と言えば、青い缶入りが有名なあのクリームなのですが、こちらのCMはK社と少し似ていて、使用状況のエピソード描写がメインとなっています。こちらです。

親子、そして孫の三世代が一つの商品を使い続けていることを描くことで、息の長いブランドであることを印象づけていますね。また、使用感については周知のものとして、そこまでアピールしません。この点はK社と似ている部分があります。

というわけで、今回は5本ほどCMを見てきましたが、どうも新製品・新商品を売り出すときに、その使用感や食感・触感を効果的に伝える役割をオノマトペが持っている、ということがわかったように思います。また、すでに十分行き届いている定番商品に関しては、触感や使用感は一般的に知られているため、再度伝えるのではなく、「今が使いどき」という使用状況をアピールする戦略にシフトするのだ、ということも見えてきました。このご時世、物を買ってもらうのはなかなかに大変なので、さまざまな企業努力が日々成されているのですね…

 

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