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オノマトペハンター おのはん!|第7回 今回のオノマトペ:「ふっパリ」|平田佐智子

 

春です。オノマトペが好きな皆様も、特にそうでもない皆様もいかがお過ごしでしょうか。今月から生活の変化があった方も多いかと思います。半月が過ぎた今くらいが第一次疲れの波が来るあたりだと思いますので、適度にこのようなコラムを読んで息抜きをしてみてください。私は大型連休を指折り数えて待っている状態です。

 

ハンター、コンビニへ行く。

前回は花粉症というややネガティブものを扱ってしまいましたので、今回はゆるく身近な例を取り上げようと思います。こちらの写真をご覧下さい。

 

見事な複合オノマトペ(オノマトペとオノマトペをくっつけて、新しいオノマトペにした物)です。長らくオノマトペハンターを続けていると、活きのいい(新しい)オノマトペが見つかる場所にもなんとなく見当がついてきます。それはファッション雑誌だったり、スーパーのお菓子売り場やパン売り場だったり、コンビニエンスストアであったりするのです。これらに共通するのは、「新しい言葉が求められている場所」であるという点でしょうか。最近会社員をやっている著者は、毎日のように(ほぼ毎日)コンビニでお昼ごはんを買ってくるのですが、いつもお世話になっているコンビニでこちらの写真を撮影しました。最近はコンビニのフードもめまぐるしくラインナップが変わるので、飽きずに過ごせて良い時代ですね。さておき、今回はこの「ふっパリ」について少し考えてみましょう。

 

ちょっと無理があるシリーズ

複合オノマトペは、二つのオノマトペをちぎって合わせて一つの新しいオノマトペにするという、遊び心あふれる言葉です。また、簡単な操作をするだけで簡単に新しいオノマトペが作れてしまうので、創造性が高く、あるいはコストパフォーマンスもよいと言えます。日々新しい言葉、新しい表現を求めている業界にとってはうってつけの言葉ですね。例えば、メロンパンの表現として「カリモフ(カリカリ+モフモフ)」や、食パンの「もちふわ(もちもち+ふわふわ)」、はたまた唐揚げの「さくジュワ(さくさく+ジュワー)」なんて表現もありますね。

それでは、今回の「ふっパリ」をじっくり観察してみましょう(後ほどさらに後方に見えている「具っこみ」についてもつっこみたいのですが…)。実はこちらの写真をTwitterに投稿するときに「無理があるシリーズ」とコメントを入れて流しておりました。「ふっパリ」、と聞いて、前情報なしでどのような情景を思い浮かべるでしょうか?個人的には「ふっ」と誰かが力を込めた瞬間に何かが「パリ」と破れるような、そんなアクシデントが起きている情景がなんとなく思い浮かびました。この写真の例ですと、真上に複合前の形「ふっくら」と「パリパリ」が書いてあるのでそういうことか、と理解できるのですが、おそらく何も無ければ「ふっパリ」から「ふっくら+パリパリ」は復元できないと予測されます。これが、この複合オノマトペがしっくりこない原因であるように考えられます。

 

復元可能な複合オノマトペ

では、その他の比較的意味が分かりやすい複合オノマトペはどういう構造をしているかというと、元々の形が「カリカリ」「モフモフ」「もちもち」「ふわふわ」など、繰り返しの形を取っています。元々の形が冗長であるとも言えます。そのため、半分にちぎってしまっても、繰り返すだけで元の形に復元できるので、意味が分かりやすいのだと考えられます。「さくジュワ」の「ジュワー」だけやや異質ですが、こちらも元の形がほぼそのまま残っていますので、復元可能性は高いと言えるでしょう。

ひるがえって「ふっパリ」はどうかというと、「パリ」は「パリパリ」から来ているので、復元がしやすいのですが、「ふっ」を元の形に戻すことができず、宙に浮いてしまいます。「ふっくら」なのか「ふっさふさ」なのか「ふっかふか」なのか、混乱してしまうわけですね。かくして、「ふっパリ」は単独では意味の取りにくいオノマトペとして、頭の中に???を残したまま、ということになってしまうのだろうと思います。

また、おにぎりを食べる時に発生する音の時系列的順序と、複合オノマトペの順序が異なっている点も謎な部分の一つです。通常乾いた海苔が巻かれたおにぎりを食べるときは、まず海苔が破れ、パリパリと音が出た後に、中のごはんがやわらかくふっくらしている点に気づく、という時間の流れになるかと思います。「ふっパリ」だと、ごはんのやわらかさが先に来てしまっているので、手で押してから半分に割ったのかな…どうなのかな…などとイレギュラーな事態を想像してしまいます。

 

「ふっパリ」の代替案

ここまでいろいろと文句ばかりでしたので、代替案も提示しておきましょう。おにぎりを食べるときの音の順序を崩さず、かつ復元可能な複合オノマトペとしては「パリふわ」あるいは「パリふく」でいかがでしょうか。「ふく」から「ふくら、ふっくら」を復元するのはやや距離があるので難しいかもしれませんが、「ふっ」よりはたどり着きやすくなったかと思います。今後採用されるといいなぁと思います。にしても、毎度思うのですが、新しい言葉の表現を追い続けなければならない広告関連のお仕事は大変そうですね。

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