外国人に「日本」を紹介できますか?
アルバイト先のお店で、外国の人から声を掛けられるとします。もしそこで、「これからどこかへ遊びに行きたいんだけれど、おすすめの場所ない?」と聞かれたら、どこを紹介しますか?
ほんの数年前までなら、これはほとんど起こらないことだったと思います。
たとえば2010年に日本を訪れた外国人旅行客は800万人、2014年は1300万人でした。ところが、2016年に初めて2000万人を越えて一気に2400万人となり、2017年はもっと多くの方が日本を訪れています。わずか数年で激増しており、週末の京都や奈良は宿を予約するのもたいへんです。
これといった資源がなく、技術の分野でも中国が台頭してきているために、商品を開発し、売っていくことが難しくなっていくこれから先の日本では、外国人観光客の受け入れが重要な産業のひとつになると考えられています。そのため政府も主導しながら、熱心に外国人観光客の受け入れを進めているのです。
さて、最初の質問に戻しましょう。秋葉原の電気街ですか? 東京ディズニーランドですか?
たとえばディズニーランドを訪れる人は、はじめからそこを目指してやってきています。そのため、あえて紹介することはないでしょう。
電気街は一時期、中国からの旅行者が家電製品を大量に買う「爆買い」が、非常に話題になっていました。けれども、今ではもうだいぶ落ち着いています。何かを買う目的での旅行は、手に入ったらそれでもう満足してしまうので長続きしません。
現在、外国人旅行客が日本を訪れる目的は、日本でしか体験できないものを体験するという段階に入っていると言われています。温泉や銭湯に行くことや、茶道や書道などの文化体験、意外なところでは居酒屋でお酒を飲んでみたいということも含まれているそうです。
そういう人たちに訪れてほしい場所を紹介するときには、どうしても古くからの歴史や文化にまつわる場所になります。日本人が日本のことをどれだけ外国の人に伝えることができるか、もっと言えば、私たちがどれだけ日本を知っているか、日本の歴史や文化についてどれだけ知識、教養を持っているかが試されることになるわけです。
このとき、そうした教養の入口になるのが、古典の勉強です。けれども、古典の勉強をすることは、中高生にとってかなりハードルが高いことのようです。
今までに見たことがない言葉があったり、たとえば「めづらし」「おどろく」のように、昔から残っていても、現在では古典で使われているものと大きく意味が変わってしまった言葉もあったりします。特に古典文法を勉強するのがたいへんだという高校生は多いでしょう。また、今とは時代背景が異なっているので、文章を読んでもなかなかどういう状況が描かれているのか理解できないところも多いと思います。
角川ソフィア文庫や講談社学術文庫などから、原文に現代語訳がついているものが出版されてもいますが、それでも難しいという中高生は多いかもしれません。
そこで今月は、中学生・高校生が古典を勉強するための入口として、日本の古典に興味を持ってもらえそうな本をご紹介していきたいと思います。