中高生は本を読んでいる?
さて、この連載は、中学生や高校生とその保護者の方、指導をされている先生方や、YA(ヤングアダルト)コーナーを担当されている図書館司書のみなさんに向けて、10代のみなさんにぜひ読んでほしい本を、来月から毎月数冊ずつ紹介していくというものです。
これまで書いてきたような、私がこのごろ感じている本を「読んでいない」という感覚は、ちょうど今の中学生や高校生にも同じように起こっているように思います。
ときどき新聞やニュースなどで、若者の「活字ばなれ」ということが主張されることがありますね。けれどもこれは、お母さんたちやお父さんたちがかなり昔の子どもたちに対して持っているイメージを、そのまま引きずっているように思います。
なぜなら、特に今の小学生や中学生は、1950年代以降でいちばん多くの本を「読んでいる」世代だからです。
このことは、毎日新聞社と全国学校図書館協議会が小学生、中学生、高校生それぞれ約3000人を対象に毎年6月に行っている「学校読書調査」から見て取ることができます。
たとえば、このアンケートに答えた小学生が2016年5月の1カ月のうちに読んだ本の平均冊数は、11.4冊。2008年、2014年と並んで過去最高の数字でした。3日に1冊。これは、かなり早いペースです。
また、中学生は1カ月平均で4.2冊。これも、過去最高の数字です。
日頃本を読まれている方には少なく感じられるかもしれませんが、中学生が読んでいる本は小学生が読んでいる本よりも厚くなること、読む本の内容がむずかしくなること、読書の時間がどうしても限られてくることを考えれば、とてもよく読んでいるといえます。
これは、文部科学省が進めている「子どもの読書推進活動」や、株式会社トーハンを中心にした「朝の読書」運度(朝読)をはじめ、学校の先生方や公共図書館の図書館員の方が行っているさまざまな活動が実を結んできているものだといえるでしょう。
一方で、小学生や中学生のこうした状況に対して、高校生のほうはなかなか本が読めていないようです。
1カ月の平均読書冊数は1.4冊。中学生のときに比べて、極端に少なくなっています。そして、1カ月のあいだに1冊も本を読まなかった「不読書」の割合が、57.1%。いちばん「読書ばなれ」が進んでいた20年前に比べればやや改善はしていますが、実に半分以上の高校生がまったく本を読んでいない状態にあるようです。
一方で、1カ月に70冊以上もの本を読むような高校生がときどきいます。そのため、本を読む生徒と読まない生徒が極端にわかれている、あるいは、ほとんどの生徒が本を読んでいない中で、ごく一部の生徒だけが本を読んでいるのが高校生の現状です。
けれども、これを単純に「読書ばなれ」といえるかは、むずかしいところです。
私は以前、高校で国語を教えていたことがありますが、高校生は部活や勉強、塾や予備校に通っているために、それだけでほとんど1日が終わってしまうことが多いです。中学校までの「朝読」のような活動も、高校生になるとほとんどの学校でなくなってしまいます。本に触れる機会があるかといえば、それは非常にむずかしいように思います。