広東語文末助詞の言語横断的研究 飯田真紀著 広東語文末助詞の言語横断的研究 飯田真紀著
2019年3月刊行

ひつじ研究叢書(言語編) 第158巻

広東語文末助詞の言語横断的研究

飯田真紀著

ブックデザイン 白井敬尚形成事務所

A5判上製函入り 308頁 定価8,400円+税

ISBN 978-4-89476-958-8

ひつじ書房
Cantonese Sentence-Final Particles from a Cross-Linguistic Perspective
Iida Maki


広東語は中国語の代表的方言の1つであるが、文末助詞(終助詞)という語類の発達が一大特色を成す。本書は、個々の文末助詞の精緻な意味記述、語類全体の体系分析を行い広東語の文末助詞の全体像を明らかにした。さらに、同じく文末助詞が発達した日本語との偶然とは見なしがたい多くの共通点を指摘し、東アジア・東南アジア言語によく見られる文末助詞という言語カテゴリーを言語横断的視点から再考する手掛かりを提供した。


【目次】

 まえがき
 例文グロス略号一覧
  
第1章 序論
1. 本書の目的
2. 広東語とは
3. 本書の執筆に至る背景
 3.1 日本語の視点から見た広東語の文末助詞
 3.2 言語横断的な文末助詞の研究に向けて
4. 本書の方針
 4.1 用語について
 4.2 使用するデータ
5. 本書の構成

第2章 広東語の概要と文末助詞の研究史
1. はじめに
2. 広東語の言語学的特徴
 2.1 共通語との異同
 2.2 音韻論と文法の要点 文末助詞との関連において
  2.2.1 音節構造
  2.2.2 文法的特徴 共通語と対比して
3. 文末助詞の研究史
 3.1 初期の包括的研究
  3.1.1 Yau (1980)
  3.1.2 Kwok (1984)
 3.2 多様な理論的枠組みによる展開
  3.2.1 意味論・語用論的アプローチ
   3.2.1.1 梁仲森(1992)
   3.2.1.2 Fung (2000)
   3.2.1.3 方小燕(2003)
  3.2.2 生成文法による統語論的アプローチ
   3.2.2.1 Law (1990)
   3.2.2.2 Sybesma and Li (2007)
  3.2.3 談話分析・会話分析的アプローチ
 3.3 その他
 3.4 先行研究で残された問題

第3章 文末助詞体系の整理
1. はじめに
2. 中心形式と周辺形式
3. 中心形式の体系
 3.1 文末助詞の連用についての従来の見解
 3.2 従来の見解の問題点
 3.3 本書の分析
  3.3.1 概要
  3.3.2 各類の成員
   3.3.2.1 A類の自由形式
   3.3.2.2 B類の自由形式
   3.3.2.3 C類
  3.3.3 単用・連用の具体例と表記法の凡例
 3.4 まとめ
4. 周辺形式の整理
5. 本章のまとめ

第4章 〈伝達態度〉を表す文末助詞C類
1. はじめに
2. 文末助詞と文類型、発話行為類型の関係
 2.1 文類型と文末助詞
 2.2 文末助詞付き文の発話行為類型
3. 一方向型伝達
 3.1 はじめに
 3.2 aa3 聴取要請
 3.3 wo3 認識更新要請
 3.4 aa3とwo3の対立
 3.5 関連形式aa4とwo4、wo5
  3.5.1 aa4 聴取による受容
  3.5.2 wo4 認識更新による受容
  3.5.3 wo5 責任逃れの情報伝達
 3.6 aa3とwo3と関連諸形式の意味的関連
4. 同意形成型伝達
 4.1 laa1 同意形成企図
 4.2 lo1 同意形成済み
 4.3 関連形式aa1 反想定的提案への同意取り付け
5. 対命題的態度を含む伝達態度
 5.1 aa1maa3 自明命題
 5.2 gwaa3 推測命題
 5.3 me1 成立を疑う命題
 5.4 maa3 成立可否判定要求
6. その他の伝達態度
 6.1 ne1① 対比的項目提示と思い惑い
 6.2 ne1② 聞き手認知領域内の事物の指し示し
 6.3 le5 成立承認誘導
 6.4 le4 行為の押しつけ
7. 本章のまとめ

第5章 〈相対定位〉を行う文末助詞B類
1. はじめに
2. l系形式の意味 新事態としての位置付け
3. z系形式の意味 低ランク事態としての位置付け
4. B類自由形式の伝達態度
 4.1 かばん形態素としてのB類自由形式
 4.2 個々のB類自由形式が表す伝達態度
  4.2.1 l系の伝達態度
  4.2.2 z系の伝達態度
 4.3 拘束形式を立てた意味的根拠
5. l系形式とz系形式の意味の共通点
6. 本章のまとめ

第6章 〈恒常化〉を行う文末助詞A類
1. はじめに
2. 文末助詞ge3と構造助詞“嘅”(ge3)の区別
3. A類形式の意味
 3.1 事態の恒常化
 3.2 構造助詞“嘅”との意味的つながり
4. A類自由形式ge3の伝達態度
5. 関連形式gE2 事態恒常化及び対立事態の存在示唆
6. 本章のまとめ

第7章 文法化型の周辺形式
1. はじめに
2. “添”(tim1)、“先”(sin1)
 2.1 “添”(tim1)
  2.1.1 “添1” 動作の追加
  2.1.2 “添2” 事態の追加
  2.1.3 “添3” 予定外の事態発生
  2.1.4 “添4” 指令の追加
 2.2 “先”(sin1)
  2.2.1 “先1” 事態の先行発生
  2.2.2 “先2” 動作の優先的実行
  2.2.3 “先3” 返答の優先的実行
3. その他の形式
 3.1 “話”(waa2) 聞き手発話引用wh疑問
 3.2 ge2 予期に反する事態
4. 本章のまとめ

第8章 意味分析を踏まえた文末助詞体系の再解釈
1. はじめに
2. 中心形式
 2.1 中心形式の体系についての再解釈
 2.2 範疇と配列の関係
  2.2.1 〈時間的安定性〉と〈相対定位〉
  2.2.2 〈伝達態度〉
 2.3 意味的階層構造
 2.4 共通語との比較対照から見える文法化の進展
3. 周辺形式の位置付け
4. 本章のまとめ

第9章 文末助詞の位置付け
1. はじめに
2. 広東語文法体系内における位置付け
 2.1 本書が考える文末助詞の機能
 2.2 隣接する言語カテゴリーとの異同
  2.2.1 機能が類似するとされる他の言語カテゴリーとの異同
  2.2.2 伝達態度を表す他の言語手段との異同
3. 言語横断的位置付け 広東語と日本語の文末助詞の対照
 3.1 類似する諸特徴
  3.1.1 統語的特徴 句末、従属節末に生起する用法
  3.1.2 音韻的特徴
    3.1.2.1 母音
    3.1.2.2 音調
 3.2 文末助詞の使用の義務度
4. 言語横断的研究への示唆
 4.1 共時的な視点から
 4.2 通時的な視点から
5. 本章のまとめ

第10章 結論
1. 本書の見解の総括
 1.1 文末助詞の体系分析
 1.2 個々の文末助詞の意味記述
 1.3 文末助詞という語類の位置付け
2. 本書の課題と今後の展望


 参考文献及び例文出典一覧
 索引




【著者】
飯田真紀(いいだ まき)
〈略歴〉
北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院准教授。東京外国語大学外国語学部中国語学科卒業。東京大学大学院人文社会系研究科博士課程修了(2005年)。博士(文学)。2000年から約2年間、香港中文大学中国文化研究所にて客員研究助手を務めた。2006年より現職。

〈主な著書〉
『NHKテレビ アジア語楽紀行―旅する広東語』(2006年、日本放送出版協会、監修・執筆)、『ニューエクスプレス  広東語』(2010年、白水社、単著)、「広東語」『事典 世界のことば141』(2009年、大修館書店、分担執筆)、「共通語と方言―バイリンガリズム」『中国文化事典』(2017年、丸善出版、分担執筆)。



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