語用論研究法ガイドブック 加藤重広・滝浦真人 編
2016年11月刊

語用論研究法ガイドブック

加藤重広・滝浦真人編

A5判並製カバー装 定価2,800円+税

装丁 大崎善治

ISBN 978-4-89476-835-2

ひつじ書房

A Guidebook for Research in Pragmatics
KATO Shigehiro and TAKIURA Masato


【内容】
一見とっつきやすいかに見える語用論研究の鍵は「方法」にある。 本書は、理論・枠組み・方法論などの基礎を正しく理解して研究を進めるためのガイドブックとして企画された。総説、ダイクシス、社会語用論、対照語用論、実験語用論、 会話分析、応用語用論、統語語用論、語用論調査法にわたり、第一線の専門家が詳しく実践的に解説する必携の一冊!

執筆者:澤田淳、椎名美智、堀江薫、松井智子、清水崇文、熊谷智子、木山幸子、加藤重広、滝浦真人

【目次】

はじめに

第1章 総説
 加藤重広
1. はじめに
2. 語用論とは何か
 2.1 言語学と語用論
 2.2 意味論と語用論
 2.3 方法論としての語用論と視点
3. 会話の原理という考え方
 3.1 会話の協調原理
 3.2 協調原理の整理と修正
4. 行為としての発話
 4.1 発話と遂行
 4.2 発話行為の種別と特性
5. 推意と関連概念
 5.1 推意の区分と特性
 5.2 推意の定義の変異
 5.3 含意と前提
6. 文脈
7. 話者と聴者の関係
 7.1 聴者の数と種類
 7.2 話者交替
 7.3 伝達と配慮
8. 語用論的研究の広がり

第2章 指示と照応の語用論
 澤田 淳
1. はじめに
2. 指示詞の用法
 2.1 現場指示
 2.2 文脈指示
 2.3 記憶指示
 2.4 コ・ア対ソ
3. 現場指示詞と聞き手の注意・視点
 3.1 指示詞が三系列体系をなす言語の中称(非近称・非遠称)
 3.2 指示詞が二系列体系をなす言語の遠称
4. おわりに

第3章 社会語用論
 滝浦真人
1. はじめに
2. 語用論の問題としてのポライトネス
3. 社会語用論の視角
 3.1 つの位相:規範・偏移・変化
 3.2 B & L が引き起こした用語と概念の問題
4. 社会語用論を研究する
 4.1 言語行為の(対照)語用論
 4.2 会話のダイナミズムを捉える
 4.3 規範の変化を捉える:「させていただく」の考察
5. おわりに

第4章 歴史語用論
 椎名美智
1. はじめに:歴史語用論の基本的な考え方
2. 歴史語用論のサブカテゴリーとアプローチ
 2.1 語用論的フィロロジー
 2.2 通時的語用論
3. 歴史語用論の抱える諸問題
 3.1 データ問題:何が歴史語用論のデータになり得るのか?
 3.2 語用論的変化の過程には普遍的な法則はあるのか?
 3.3 実際の分析における留意点
4. コーパスとコーパス言語学:データと方法論
 4.1 コーパス言語学によるパラダイムシフト
 4.2 三世代のコーパス:どんなコーパスがあるのか?
 4.3 コーパスアノテーション
5. 研究対象となる言語現象とデータの種類
6. 歴史語用論研究において外せないポイント
7. おわりに:今後の展望

第5章 対照語用論
 堀江 薫
1. はじめに:対照語用論と語用論的類型論
2. 対照語用論の2 つのケーススタディ
 2.1 韓国語の「kes-kathun(것 같은)」と日本語の「みたいな」の対照語用論的研究
 2.2 日本語のヘッジ表現の中間言語語用論的研究
3. おわりに

第6章 統語語用論
 加藤重広
1. はじめに
2. 文法と語用論の関わり
3. 語用論的な説明の導入
4. 情報構造ととりたて詞
5. 語用論が関心を持つ文法現象
 5.1 助動詞の過去形の推意
 5.2 可能の語用論的機能
6. 構造を崩す用法
 6.1 文の幻想と言いさし
 6.2 いわゆる人魚構文
7. 統語語用論の展開:まとめに代えて

第7章 関連性理論・実験語用論
 松井智子
1. はじめに
2. 関連性理論における発話解釈プロセス
 2.1 意図明示的コミュニケーションにおける伝達意図の認識の役割
 2.2 発話解釈と認識的警戒心
 2.3 推論的発話解釈と心の理論
3. 発話解釈プロセスの実験的検証
 3.1 いつごろから話し手の伝達意図を理解できるのか
 3.2 話し手の信頼性を見抜くのはいつごろか
 3.3 言葉にならない話し手の意図や態度の理解はいつごろからでき
るのか
 3.4 発話解釈プロセスと語用障害
 3.5 発話解釈プロセスと脳活動
4. おわりに

第8章 応用語用論
 清水崇文
1. はじめに
2. 研究の目的
 2.1 異文化間語用論
 2.2 中間言語語用論
3. 研究テーマと研究課題
 3.1 異文化間語用論
 3.2 中間言語語用論
4. 研究デザイン
 4.1 研究方法
 4.2 データ収集方法
5. 分析例
 5.1 量的研究の分析例
 5.2 質的研究の分析例

第9章 会話分析と談話分析
 熊谷智子
1. はじめに
2. 会話分析と談話分析:異なる2 つのアプローチ
3. 会話分析と語用論研究
 3.1 “ 今・ここ” で立ち現れる「発話の働き」
 3.2 会話分析におけるさまざまな分析概念
 3.3 会話の転記:データ整備の手法
4. 談話分析と語用論研究
 4.1 談話分析のアプローチ
 4.2 談話分析の対象データ
5. 分析方法・分析データの効果的選択・活用に向けて

第10章語用論調査法
 木山幸子
1. はじめに
 2. これまでの量的方法論に基づく語用論研究
 3. 統計分析のための基本事項
 3.1 変数の種類
 3.2 仮説検定
4. 語用論の量的研究の一例:クロス集計表に基づいたカイ二乗検定
 4.1 お母さんを何と呼ぶ?:質問紙による頻度データの分析例
 4.2 カイ二乗検定の手続き
 4.3 セルが3 つ以上のクロス集計表の分析:残差に注目する
 4.4 統計分析の報告
5. 語用論的機能の評定の信頼性:形式的手がかりがないとき
6. おわりに

あとがき
索引
執筆者紹介



【編者紹介】
加藤重広(かとう しげひろ)
北海道大学・大学院文学研究科 教授
主な著書:『日本語語用論のしくみ』(研究社、2004)、『日本語統語特性論』(北海道大学出版会、2013)、など。

滝浦真人(たきうら まさと)
放送大学・教養学部・大学院文化科学研究科 教授
主な著書:『ポライトネス入門』(研究社、2008)、『日本語は親しさを伝えられるか』(岩波書店、2013)、など。


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