認識的モダリティと推論 木下りか 著 ひつじ書房 認識的モダリティと推論 木下りか 著
2013年2月

認識的モダリティと推論

木下りか 著

A5判上製 定価7,600円+税

ISBN978-4-89476-630-3

ひつじ書房



研究の蓄積が豊富な認識的モダリティ形式について、推論という新たな切り口から体系的意味記述を行った待望の書。本書の分析を貫くのは、非現実世界の認識に推論が介在するという視点である。これにより、証拠、蓋然性等の従来の記述概念は相互に関連付けられ、意味記述が精緻化される。さらに、人間の認識や思考を支える演繹・帰納等の推論の型、類似性・隣接性等の関係性が、認識的モダリティ形式の意味に塗り込まれているさまが詳述される。



【目次】

第1章 はじめに

1. 問題の所在
2. 考察対象設定の問題
2.1 多義的な意味を持つ形式
2.2 認識的モダリティ形式の範囲
3. 認識的モダリティと非現実世界
3.1 作用面・対象面
3.2 非現実世界の蓋然的特徴
4. 非現実世界への接近と推論
4.1 証拠性
4.2 英語法助動詞の分析
5. 分析の枠組みとしての推論と推論の多義的解釈
5.1 論理的妥当性
5.2 認識の手掛かりと結果との異質性
5.3 根拠の明示性
5.4 何らかの根拠の存在
6. 本研究の構成と概要
6.1 第1章のまとめ
6.2 第2章以降の構成

第2章 認識的モダリティ分析の視点

1. はじめに
2. 証拠性・蓋然性・主観表現
2.1 証拠に基づく認識
2.2 「はずだ」の位置付け
2.3 「だろう」の主観性
3. 根拠と帰結との関係に関する特徴
3.1 演繹推論・帰納推論
3.1.1 推論の妥当性
3.1.2 演繹・帰納と話者の捉え方
3.2 異なる認知領域
3.3 隣接関係・類似関係・含有関係
3.4 日常言語の推論と論理学における推論
4. 推論の帰結(認識内容)に関する特徴
4.1 可能性・必然性・蓋然性
4.2 変化可能性
5. おわりに 分析の枠組みとしての推論の諸特徴

第3章 証拠に基づく認識

1. はじめに
2. 証拠に基づく認識
3. 証拠とcontent domainにおける含意関係
3.1 「広義因果関係」と認知領域
3.2 「広義因果関係:pならばq」の操作的定義
4. 「広義因果関係」における原因推論と証拠
4.1 原因pの「推論」と証拠
4.2 演繹推論・帰納推論
4.3 蓋然性の出所と唯一の原因
5. 「広義因果関係」の原因推論と日常語としての証拠
6. 証拠に基づく認識と既定性
6.1 既定性
6.2 「広義因果関係」の原因推論と既定性
7. おわりに

第4章 「広義因果関係」をさかのぼる二つの推論

1. はじめに
2. 「広義因果関係」の二つの捉え方
2.1 捉え方の相違
2.2 「ようだ」と「全体的類似性」の認識
3. 「広義因果関係」をさかのぼる推論との整合性
3.1 問題の所在
3.2 「広義因果関係」と「カテゴリー帰属(志向的)認識」
3.3 「原因・結果」と「カテゴリー帰属(志向的)認識」
4. 「広義因果関係」の捉え方と全体・部分
4.1 曖昧な感覚の言語化
4.2 内包の全体と部分
5. 二つの捉え方と表現の差異
5.1 認識内容に対する責任
5.2 伝聞表現との親和性
5.3 描写性
5.4 聞き手への配慮
6. 「ようだ」「らしい」共通性の基盤
6.1 本体把握
6.2 客観的な事実に基づく認識
7. おわりに

第5章 「ようだ」の多義的な意味の広がりとカテゴリー帰属認識

1. はじめに
2. 非対称性・修辞性
3. 「全体的類似性」の認識と個人の容貌
3.1 個人の容貌との類似性
3.2 カテゴリーの創造を可能とする類似性
3.2.1 個人の容貌の指示機能
3.2.2 「カテゴリー帰属(志向的)認識」
4. 「全体的類似性」の認識を表すことを示す事実
4.1 顕著な特徴を持つ有名人の容貌との類似性
4.2 想像上のモノとの類似性
4.3 類似度の表示
5. 「部分的類似性」と認識的モダリティ
6. おわりに

第6章 隣接関係を用いたメトニミー的推論

1. はじめに
2. 推論過程の特徴
2.1 動的な事態
2.2 状態
2.2.1 状態の分類
2.2.2 本来確認不可能な状態
2.2.3 知覚可能な状態
3. 隣接関係とメトニミー的推論
3.1 隣接関係と全体・部分
3.2 ひとまとまり性
3.3 「そうだ」と隣接関係
4. 高次認識
4.1 高次認識と全体・部分
4.2 全体から部分へ向かう推論
4.3 能力についての認識と三種類の解釈
5. 「そうだ」の知識
6. 未確認のニュアンスの出現
7. 証拠に基づく認識と「そうだ」
8. おわりに

第7章 日常言語の推論における暗黙の前提

1. はじめに
2. 演繹推論
3. 日常言語の推論と「前提E」
3.1 「前提E」
3.2 論理的推論と現実との乖離
3.2.1 例外的な事態
3.2.2 仮定的推論
3.3 蓋然性を表す理由
4. おわりに

第8章 根拠の非明示性と推論の方向性

1. はじめに
2. 可能性と確信
2.1 可能性の高低
2.2 可能性の存在・確信
3. 「可能性」と「必然性」
4. 「認識結果重視型」・「原因探索型」の原因推論
4.1 「広義因果関係」と原因/結果の推論
4.2 「認識結果重視型」・「原因探索型」
5. 二つの原因推論と原因推論表示の適否
5.1 「かもしれない」と二つの原因推論
5.2 「認識結果重視型」原因推論の成立条件
5.2.1 疑問の答
5.2.2 根拠と帰結の関係表示
5.2.3 名詞に後続する場合
5.3 「にちがいない」と二つの原因推論
6. 論理の飛躍
6.1 「かもしれない」と論理の飛躍
6.2 「にちがいない」と論理の飛躍
7. おわりに

第9章 非現実世界の蓋然的特徴と主観性

1. はじめに
2. 談話現場における判断形成過程
3. 非現実世界の変化可能性
4. 認識的モダリティ形式と主観性
4.1 「だろう」と主観性
4.2 認識的モダリティ形式と否定形・過去形
4.2.1 否定形・過去形と主観性の三段階
4.2.2 「段階1」・「段階2」
4.2.3 「段階2」・「段階3」
4.3 「かもしれない」と客観性/一般性
5. 「だろう」と推論の方向性
5.1 「だろう」と「原因探索型」の原因推論
5.2 「だろう」と論理の飛躍
6. 「だろう」の主観性と多義性
6.1 認識と情報領域
6.2 多義性と意味拡張の動機
7. おわりに

第10章 おわりに

1. 総括
2. 分析の視点と認識的モダリティとしての各形式の意味
2.1 推論という枠組みから得られる視点
2.2 演繹推論・帰納推論(視点1)
2.3 推論の知識(視点2・視点3)
2.4 推論における例外の排除(視点4)
2.5 可能性と必然性(視点5)
2.6 非現実世界の「変化可能性」(視点6)
2.7 蓋然性
3. 推論の諸特徴から見た形式間の類似性
4. 本書の意義と今後の課題


参考文献
あとがき
索引


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