ひつじ書房 世界の配慮表現 山岡政紀・西田光一・李奇楠編
2025年5月刊行予定

世界の配慮表現

山岡政紀・西田光一・李奇楠編

定価3,600円+税 A5判並製カバー装 232頁

ISBN978-4-8234-1295-0

装丁 杉枝友香(asahi edigraphy)

Considerate Expressions in the Worldʼs Languages
Edited by Yamaoka Masaki, Nishida Koichi, Li Qinan

ひつじ書房

【内容】

コミュニケーションにおける対人関係調整機能としてのポライトネスはあらゆる言語に通じる普遍的現象とされている。日本語ではポライトネスが慣習化して成立する配慮表現の研究が近年盛んだが、ポライトネスが慣習化する傾向はどの言語にも見られ、各言語に固有の配慮表現が成立している。本書では日本語、英語、中国語、韓国語、タイ語、アラビア語の配慮表現について各言語に詳しい専門家と共同研究を重ねた成果を報告する。執筆者:山岡政紀、西田光一、李奇楠、小野正樹、金玉任、スワンナクート・パッチャラーパン、リナ・アリ、牧原功、甲田直美


【目次】

まえがき

第 1 章 配慮表現の普遍性と個別性 山岡政紀・西田光一・李奇楠
1.1 配慮表現とポライトネス
1.2 日本における配慮表現研究の出現
1.3 慣習と動機づけ
1.4 《依頼》の配慮表現における4段階の慣習化
1.4.1 英語における《依頼》の配慮表現の慣習化
1.4.2 中国語における《依頼》の配慮表現の慣習化
1.4.3 日本語における《依頼》の配慮表現の慣習化
1.4.4 他言語における《依頼》の配慮表現の慣習化
1.5 配慮表現の言語間対照における5つのタイプ
1.6 配慮表現の普遍性と井出祥子の「場」
1.7 本章のまとめ

第 2 章 日本語の配慮表現 小野正樹・山岡政紀
2.1 はじめに
2.2 言語による慣習化の異なり
2.3 敬語とポライトネス
2.3.1 日本語の敬語の背景にある時代の変遷
2.3.2 ポライトネス理論の基礎にある宗教的聖性と人間的配慮
2.3.3 時代と敬語―古代から近代、そして現代へ
2.3.4 国語審議会に見る敬語から敬意表現への拡張
2.3.5 敬意表現から配慮表現へ
2.4 「配慮表現」とは
2.4.1 「配慮」に対する関心の高まり
2.4.2 賞賛表現「すごい」の機能
2.4.3 謙遜表現「自分で言うのも何ですが」の機能
2.5 まとめ

第 3 章 英語の配慮表現 西田光一
3.1 はじめに 
3.2 ポライトネス理論と配慮表現 
3.3 マルチトラックモデル 
3.3.1 言語的メッセージを包む容器 
3.3.2 言語的メッセージを包む容器の複層化 
3.3.3 サブトラック 2 の使い方 
3.4 リンガフランカとしての英語
3.5 本研究の理論的含意
3.5.1 配慮表現の言語学での位置づけと語用論の役割
3.5.2 他の配慮表現との関連
3.5.3 配慮表現とネガティブポライトネスの違い
3.6 結論

第 4 章 中国語の配慮表現 李奇楠
4.1 はじめに
4.2 先行研究
4.3 出会いにおける《挨拶》の表現
4.4 《依頼》における配慮表現
4.5 《忠告》におけるヘッジ表現
4.6 おわりに

第 5 章 韓国語の配慮表現 金玉任
5.1 はじめに
5.2 配慮表現とポライトネス
5.3 《依頼》における配慮表現
5.3.1 授受表現
5.3.2 前置き
5.3.3 副詞的表現
5.3.4 文末表現
5.4 《忠告》におけるヘッジ表現
5.5 出会いにおける《挨拶》
5.6 おわりに

第 6 章 タイ語の配慮表現 スワンナクート・パッチャラーパン
6.1 はじめに
6.2 出会いにおける《挨拶》
6.3 《依頼》における配慮表現
6.4 《忠告》におけるヘッジ表現
6.5 《主張》における配慮表現
6.6 《感情表出》における配慮表現
6.7 まとめ

第 7 章 アラビア語の配慮表現 リナ・アリ
7.1 はじめに
7.2 アラビア語の配慮表現
7.2.1 出会いにおける《挨拶》
7.2.2 《依頼》における配慮表現
7.2.3 《忠告》におけるヘッジ表現
7.2.4 《賛同》における配慮表現
7.3 最新の研究成果
7.4 おわりに

第 8 章 配慮表現に関わるテンスの日英対照 牧原功・西田光一
8.1 はじめに
8.2 NPS としてのテンス
8.2.1 日本語における NPS としてのテンス
8.2.2 英語における NPS としてのテンス
8.3 PPS としてのテンス
8.3.1 テンスの操作はどこで行われるのか―接触(Contact)
8.3.2 英語における PPS としての現在時制
8.3.3 日本語における PPS としてのテンスの操作
8.4 対人配慮はどこに現れるのか
8.4.1 談話構造からみた対人配慮
8.4.2. 文構造からみた対人配慮
8.5 まとめと課題

第 9 章 マイナス評価の配慮表現に関する日中対照 李奇楠・山岡政紀
9.1 はじめに
9.2 ポライトネスとマイナス評価
9.2.1 発話機能としての《評価》の位置づけ
9.2.2 対者評価としての《賞賛》と《非難》
9.2.3 インポライトネスとマイナス評価
9.3 プラス評価とマイナス評価
9.4 《非難》における配慮表現
9.4.1 《非難》に対する緩和表現のいろいろ
9.4.2 副詞「ちょっと」と “ 一句 ”、“ 一下 ”、“ 有点 ”
9.4.3 タイ構文と “ 想~ ”
9.4.4 反語的表現
9.5 まとめ

第 10 章 副詞による賛同表現の日英対照 甲田直美・西田光一・山岡政紀
10.1 はじめに
10.2 日本語の事実性の副詞による賛同表現への慣習化現象
10.2.1 事実性を表す副詞「たしかに」
10.2.2 事実性の副詞から会話における賛同表現へのシフト
10.2.3 副詞から応答詞が派生
10.2.4 事実性の原義を喪失して賛同のみに特化する現象
10.3 英語の事実性の副詞による賛同表現への慣習化現象
10.3.1 事実性を表す副詞 “exactly”
10.3.2 事実性の副詞から会話における賛同表現へのシフト
10.3.3 副詞から応答詞が派生
10.3.4 事実性の原義を完全に捨象できるか
10.4 用法の拡張と推論
10.5 まとめ

あとがき
索引
執筆者紹介




【編者紹介】
山岡政紀(やまおか まさき)
1962年生まれ。京都府京都市出身。1989年筑波大学博士課程単位取得退学。博士(言語学)。筑波大学助手、創価大学講師、助教授、カリフォルニア大学バークレー校客員研究員を経て、創価大学文学部教授。
(主著)『日本語の述語と文機能』(くろしお出版、2000年)、『発話機能論』(くろしお出版、2008年)、『新版日本語語用論入門』(明治書院、2018年、共著)、『日本語配慮表現の原理と諸相』(くろしお出版、2019年、編著)

西田光一(にしだ こういち)
1970年生まれ。東京都新宿区出身。2000年筑波大学博士課程修了。博士(言語学)。下関市立大学経済学部准教授、同教授等を経て、山口県立大学国際文化学部教授。
(主論文)“An Anaphora-Based Review of the Grammar/Pragmatics Division of Labor,” (BLS 44, 2019)、「談話内のことわざの代用機能とグライスの協調の原理の再評価」(『語用論研究』20, 2019年)

李奇楠(り きなん、Li Qinan)
1968年生まれ。中国天津市出身。2002年北京大学博士課程修了。博士(文学)。北京大学助手、講師、准教授を経て、北京大学外国語学院教授。
(主著)『言語の主観性―認知とポライトネスの接点―』(くろしお出版、2016年、共編)、『日本語配慮表現の原理と諸相』(くろしお出版、2019年、共著)、『日本語語用論研究』(外語教学与研究出版社、2021年、共著)


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