ひつじ書房 芥川龍之介における海外文学受容 旧蔵書越しに見える風景 澤西祐典著 ひつじ書房 芥川龍之介における海外文学受容 旧蔵書越しに見える風景 澤西祐典著
2025年3月刊行

ひつじ研究叢書(文学編) 18

芥川龍之介における海外文学受容

旧蔵書越しに見える風景

A5判上製カバー装 定価7200円+税

ISBN978-4-8234-1279-0

装丁:坂野公一(welle design)

Through Akutagawa Ryunosuke’s Bookshelves: Western Literatures He Read and the Works He Wrote
Sawanishi Yuten

ひつじ書房




【内容】
「あらゆるものを本の中に学んだ」(「大導寺信輔の半生」)とする芥川龍之介はどのような洋書を読み、どのように執筆に活かしていたのか。焼失した卒業論文(ウィリアム・モリス論)の正体、代表作「地獄変」の典拠、翻訳体験が芥川の文体へ与えた影響、旧蔵書に挟まれた押し花や書簡など、日本近代文学館等に残された芥川龍之介旧蔵書・洋書を手がかりに実証的に辿る。巻末には旧蔵書・洋書への書き込み一覧・読書年譜付き。


【目次】

第1章 作家旧蔵書研究の可能性 芥川龍之介旧蔵書・洋書を例に考える
1 本書の構成について
2 旧蔵書を通して見えてくるもの
2.1 作品の材源
2.2 手沢本と未読本(アンカット本)について
2.3 伝記の更新:読了日、学習参考書
2.4 作家の文学観・読書傾向:アンデルセン、ゲーテ評伝、『ピーター・パン』、ドーデー、森鷗外
2.5 旧蔵書全体の傾向
3 書物を通したネットワーク
3.1 謹呈本など
3.2 散逸した芥川旧蔵書:松村みね子、堀辰雄文庫
3.3 他作家の旧蔵書書き入れとの比較:トルストイ『アンナ・カレーニナ』
4 結語に代えて

第2章 芥川龍之介と卒業論文ウィリアム・モリス研究 旧蔵書への書き込みを手掛かりに
1 芥川龍之介の卒業論文ウィリアム・モリス論をめぐる問題点
2 卒論提出までの経緯
3 詩人モリス
4 モリス関連書籍を手掛かりに
5 「MYSTERIOUSな話し」への興味
6 モリス研究を通して
7 その他の書籍について
8 失恋者、放浪者、そして一大橋梁としてのモリス

第3章 芥川龍之介のバーナード・ショー受容について 受容遍歴・東京帝国大学時代・「西方の人」を中心に
1 先行研究
2 受容の時期について
3 戯曲家としてのショー(東京帝国大学時代)
4 大正期後半の受容
5 「小説の戯曲化」とThe Admirable Bashville序文
6 ショーと芥川の〈ジヤアナリズム〉観
7 キリストの精神錯乱
8 「西方の人」の先行研究(典拠論を中心に)
9 Androcles and the Lion序文と正続「西方の人」
10 結びに代えて

第4章 「地獄変」とピエール・ルイス「芸術家の勝利」 〈プロメテウス〉から〈地獄変〉へ
1 はじめに
2 「地獄変」執筆経緯:薄田泣菫宛書簡など
3 「芸術家の勝利」と芥川の読了時期について
3.1 「芸術家の勝利」の梗概
3.2 読了時期について
4 「地獄変」と「芸術家の勝利」の共通項
4.1 「芸術家の勝利」第一章と「地獄変」について
4.2 〈プロメテウス〉から〈地獄変〉へ
5 日本におけるピエール・ルイス受容
6 〈火〉を受け継ぐもの

第5章 芥川龍之介旧蔵書の洋書調査 新資料、本を通じての交際など
1 芥川龍之介の旧蔵書・洋書(日本近代文学館所蔵)
2 『出家とその弟子』を求める手紙
3 英英辞典に挟まれていた紙片について
3.1 新資料の紙片について
3.2 資料解題―辞書愛好家としての芥川龍之介
4 『赤い百合』と押し花に込められた想い
5 本を通じての交際
6 モーパッサンの読書記録について
7 アンカット本について

第6章 芥川龍之介編The Modern Series of English Literature テクストの特色、第七・八巻の出典、「近頃の幽霊」・「南京の基督」との関わりを中心に
1 書誌
2 背景
3 編集方針
4 採録されたテクストの特色
5 第7巻More Modern Ghost Stories及び第8巻Modern Magazine Storiesの出典
6 その他の芥川旧蔵書における編集の跡
7 Modern Series収録作品と芥川の諸テクスト
7.1 戦争と幽霊譚
7.2 「南京の基督」と“The Elixir of Youth”
8 田端文士村記念館所蔵〈序文〉原稿について
8.1 翻刻および校異
8.2 特記事項
9 Modern Series収録作品について
9.1 セント・ジョン・G・アーヴィン「劇評家たち」について
9.2 アンブローズ・ビアス「未来人における喪失」と芥川龍之介「鼻」
10 収録作品と出典一覧
11 結語に代えて

第7章 英文との対応から見た芥川の文体 三人称代名詞「彼/彼女/彼等」、文末詞「である」を中心に
1 問題意識
2 方法
3 三人称代名詞「彼/彼女/彼等」
3.1 『バルタザアル』における三人称代名詞の避用
3.2 「彼/彼女/彼等」の変遷
3.3 芥川における「彼/彼女/彼等」の使用規範
4 文末詞「である」
4.1 従属を示すマーカー
4.2 「からである/からだ」
5 結語

第8章 「世界文学」として読まれるとは?
1 芥川龍之介の「翻訳」観
2 「世界文学」市場における芥川作品
3 芥川旧蔵書越しに見える「世界文学」像

第9章 カリフォルニア大学バークレー校C. V. スター東アジア図書館所蔵・芥川龍之介「母」原稿について
1 はじめに
2 原稿について
3 本文翻刻
4 校異
5 解題
6 「母」直筆原稿本文


あとがき
初出一覧
索引
巻末附録
1.芥川龍之介旧蔵書の書き入れに基づく読書年譜
2.芥川龍之介旧蔵書・洋書に関する書き入れ調査結果一覧表



著者紹介
澤西祐典(さわにし ゆうすけ)
1986年生まれ。京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程修了、博士(人間・環境学)、日本近 代文学・比較文学専攻。現在、龍谷大学国際学部准教授。
(主著・主論文)『芥川龍之介選 英米怪異・幻想譚』(柴田元幸氏との共編訳、岩波書店、2018)、『芥川龍之介 ・菊池寛共訳 完全版 アリス物語』(訳補・注解、グラフィック社、2023)、共著に宮坂覺編『芥川龍之介と切 支丹物——多声・交差・越境』(翰林書房、2014)、庄司達也編『芥川龍之介ハンドブック』(鼎書房、2015)、 小説に『フラミンゴの村』(第35回すばる文学賞、集英社、2012)、『文字の消息』(書肆侃侃房、2018)、『雨とカラス』(書肆侃侃房、2019)などがある。



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