ひつじ書房 語の文法へのいざない 由本陽子・杉岡洋子・伊藤たかね著 ひつじ書房 語の文法へのいざない 由本陽子・杉岡洋子・伊藤たかね著
2024年11月刊行

語の文法へのいざない

由本陽子・杉岡洋子・伊藤たかね著

定価2,600円+税 A5判並製カバー装 312頁

ISBN978-4-8234-1259-2

装丁 杉枝友香(asahi edigraphy)

ひつじ書房

An Invitation to the Grammar of Words
Yoko YUMOTO, Yoko SUGIOKA, Takane ITO



【内容】
言語には、複数の語や形態素を結合して新しい語を作るメカニズムが普遍的に備わっている。本書では、そこに見出される規則や原理を「語の文法」と位置づけ、日英語の多様な語形成の現象について、文レベルの文法との関係を考慮に入れながら、語彙意味論・統語論・語用論の観点から豊富な例を使ってわかりやすく解き明かしていく。言語学の初歩を学んだ人への語形成論の入門書・参考書であると同時に、言語学の面白さが語の文法という小宇宙の中で味わえる一冊。

【目次】
まえがき

第1部
1章 語の文法とは

2章 語とレキシコンの基本的性質
2.1. 語彙性―語と句の異なる点
2.1.1. レキシコン
2.1.2. 語彙化
2.1.3. 阻止
2.1.4. 語彙的ギャップ
2.1.5. 生産性
2.1.6. 語彙的緊密性
2.1.7. 音韻・形態・意味的な制約
2.2. 語の構造―語と句の似ている点
2.2.1. 語の階層構造
2.2.2. 二叉枝分かれ制約
2.2.3. 右側主要部規則
2.2.4. 語の再帰性

コラム1 連濁と母音交替

3章 「語の文法」に有用な道具
3.1. 言語情報として必要な名詞の意味
3.2. 動詞の意味をLCSで表す意義
3.3. 動詞の意味クラスによる差異とLCSによる分析
3.4. 2種類の自動詞を区別するLCSと項構造─非対格仮説

コラム2 日本語のアクセント―語と句の違い

第2部
4章 「名詞+名詞」の複合名詞
4.1. 複合名詞を作る二つの名詞の意味関係
4.2. クオリア構造を用いた分析
4.3. 複合名詞と句構造

5章 名詞から動詞への転換
5.1. 名詞から動詞の意味が生み出されるメカニズム
5.2. 転換とは
5.3. 名詞のクオリア構造と転換動詞のLCS
5.4. 転換動詞の用法と語用論的意味
5.5. 転換動詞の用法
5.6. 日本語との比較

コラム3 日本語動詞の形態素分析

6章 形容詞の性質と形容詞から作られる動詞
6.1. 形容詞が表す状態の意味特性
6.1.1. 一時的状態と属性の違い
6.1.2. 段階性と極限値
6.2. 形容詞をもとに作られる状態変化の動詞
6.3. 形容詞由来動詞の意味と自他交替
6.3.1. 英語の形容詞由来動詞のLCS
6.3.2. 日本語の形容詞由来動詞の自動詞と他動詞の交替
6.4. 形容詞の性質と形容詞由来動詞のアスペクト
6.5. 形容詞の特性が派生動詞に与える影響
6.5.1. 接辞「-化」と形容詞が表す状態への価値判断
6.5.2. 形容詞の主観性と動詞化接辞「-がる」

7章 接辞付加の規則性と順序
7.1. 名詞化接辞の生産性
7.2. 接辞付加の音韻的・形態的・意味的規則性
7.3. 英語接辞における二つのクラスの区別
7.4. 英語における接辞付加の順序づけ仮説
7.5. 英語の接辞の配列順序と言語処理
7.6. 日本語の接辞付加の順序づけ
7.7. 規則性・生産性の心理的実在性

8章 接頭辞付加による派生語の意味
8.1. 接辞が表す意味と基体の意味
8.2. 英語の否定を表す接頭辞
8.2.1. 否定接辞のはたらき
8.2.2. 反対と矛盾
8.2.3. 形容詞の性質と否定接辞の意味解釈
8.2.4. 接辞の棲み分けと阻止
8.3. 日本語の否定を表す接頭辞
8.4. 英語の動詞に付加される接頭辞

9章 複雑語の形成と項構造
9.1. 動詞の名詞化と項の現れ方
9.2. 派生名詞の意味と項の受け継ぎ─事象名詞とモノ名詞
9.3. もとの動詞の外項を表す派生名詞
9.4. 英語の転換名詞と軽動詞構文
9.5. 動詞由来形容詞
9.6. 英語の動詞への接頭辞付加

10章 英語の動詞由来の複合語
10.1. はじめに
10.2. 名詞として用いられる英語の動詞由来複合語
10.3. 形容詞として用いられる英語の動詞由来複合語 
10.4. 英語の動詞由来複合語の内部構造

11章 日本語の動詞由来の複合語
11.1. はじめに
11.2. 行為や出来事を表す名詞として用いられる動詞由来複合語
11.3. 述語のはたらきをする動詞由来複合語
11.4. 動詞由来複合語の種類と音韻的特徴
11.5. 物や人を表す動詞由来複合語のタイプと意味

12章 日本語の「動詞+動詞」の複合
12.1. 日本語の「動詞+動詞」複合語の多様性
12.2. 複合語を作る二つの動詞の意味関係
12.3. 語彙的緊密性の異なる2種類の複合動詞―語彙的複合動詞と統語的複合動詞
12.4. 統語的複合動詞の構造
12.5. 統語的複合動詞「~すぎる」の意味

13章 句が関わる語形成
13.1. はじめに
13.2. 句を含む複合語や派生語
13.2.1. 句を含む複合語 
13.2.2. 句への接辞付加
13.3. 句を含むように見える複合語
13.3.1. 非主要部の名詞がもつ意味上の項の現れ方
13.3.2. 非主要部の動詞要素の項による複合語の修飾
13.4. 動詞句が関わる名詞化
13.4.1. 日本語の接辞「-方」による名詞化と英語の動名詞
13.4.2. 時間とアスペクトを表す接尾辞の付加
13.5. 句を選択する接辞が作る複雑述語
13.5.1. 願望を表す「-たい」
13.5.2. 難易・傾向を表す「-にくい」「-やすい」
13.6. 様子や傾向を表す助動詞的な形容名詞化接辞

参考文献
索引
著者紹介



【著者紹介】
由本陽子(ゆもと ようこ)
大阪大学名誉教授
大阪大学大学院文学研究科博士課程修了 文学博士
[主要著作]
『語形成と概念構造』(影山太郎氏との共著,研究社出版,1997)
『複合動詞・派生動詞の意味と統語―モジュール形態論から見た日英語の動詞形成―』(第24 回新村出賞,ひつじ書房,2005)
Variation in N-V Compound Verbs in Japanese, Lingua 120, pp.2388–2404. (2010)

杉岡洋子(すぎおか ようこ)
慶應義塾大学名誉教授
シカゴ大学大学院言語学科博士課程修了(Ph.D.)
[主要著作]
Interaction of Derivational Morphology and Syntax in Japanese and English. (Garland, 1986 / Routledge, 2019)
『語の仕組みと語形成』(伊藤たかね氏との共著,研究社,2002)
Nominalization Affixes and the Multi-modular Nature of Word Formation, in Etsuyo Yuasa et al. (eds.) Pragmatics and Autolexical Grammar: In Honor of Jerry Sadock. (John Benjamins, 2011)

伊藤たかね(いとう たかね)
東京大学多様性包摂共創センター特任教授,東京大学名誉教授
東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学
[主要著作]
『語の仕組みと語形成』(杉岡洋子氏との共著,研究社,2002)
『こころと言葉—進化と認知科学のアプローチ』(長谷川寿一氏,C. ラマール氏との共編著,東京大学出版会,2008)
『ことばを科学する—理論と実験で考える、新しい言語学入門』(朝倉書店,2023)



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