ひつじ書房 近代日本語の時制体系 H. A. スィロミャートニコフ著 鈴木泰・松本泰丈・松浦茂樹訳
2025年5月刊行予定

言語学翻訳叢書 23

近代日本語の時制体系

H. A. スィロミャートニコフ著 鈴木泰・松本泰丈・松浦茂樹訳

定価8,800円+税 A5判並製カバー装 400頁

ISBN978-4-8234-1243-1

装丁 村上真里奈

The Tense System in Modern Japanese
Н.A.Сыромятников

ひつじ書房

【内容】

狂言やキリシタン資料から近代日本文学までを分析し、日本語の時間表現の発展の頂点として現代標準語を位置づける。過去や完了の助動詞の交代や減少を、古代語の単純化とは捉えず、発話時を介さない直接的な相対時制の普遍化と、時制関係の近代的一般化として捉える。原著は1971年にモスクワで刊行。日本の近代語の成立を起点から終点まで綿密に論じた重要な研究成果であるにもかかわらずこれまで顧みられてこなかった。本邦初の翻訳。
原著者:Н.A.Сыромятниковスィロミャートニコフ(1911-1984)原著:Система времен в новояпонском языке


【目次】


訳者前書き
凡例

序章

第1章 存在の形式としての時間と時制の文法的カテゴリー

第2章 文法的な時制の相対的な意味

第3章 なかどめ活用の時制形式
 第Ⅰ部 序説
1 諸言語における副動詞の時制
 第Ⅱ部 結びあわせの形式
2 接尾辞なしの形式、-te/-de で終わる形式、-nagaraで終わる形式
3 -te+kara形式
4 -te+wa形式
 第Ⅲ部 譲歩形式
5 -te+mo形式、-nagara[mo]形式、およびトレド[モ]のタイプの形式
6 トリタレド[モ]のタイプの形式
7 推量法における譲歩形式
8 トル-トモのタイプの形式
9 トリタリトモ のタイプの形式
10 16–17世紀の日本語における譲歩形式の概観
11 譲歩のつなぎ ケレド[モ]の出現
 第Ⅳ部 条件─時制形式
12 現代語の条件─時制形式とその形態論
13 近代日本語の条件─時制形式の歴史
14 トラバ(タカクバ、トラズバ)のような形式
15 トレバ(タカケレバ、トラネバ)のような形式
16 トッタラ[バ]のような形式
17 トッタレバのような形式
18 現代語における条件─時制形式の用法と解釈
まとめ

第4章 文法書における いいおわりの時制形式の問題
1 三時制論
2 絶対的二時制論─過去と現在-未来(非過去)
3 絶対的二時制論─過去と未来
4 一時制論
5 -ta形式における時制的同音異義論
6 四時制論
7 時制形式におけるアスペクト的意味の論
8 時制システム不在論
9 アスペクト─テンス形式の退化論
10 時制基準における主観性論
11 時制基準における非恒常性論
12 継続相─現在時制論
13 多時制論
14 相対的時制論
まとめ

第5章 つなぎ要素とおわりの前の時制形式
 第Ⅰ部 序説
1 つなぎ要素の定義と本章の構成の論拠
 第Ⅱ部 同時性を表すつなぎ要素の前の時制形式
2 つなぎのトの前の時制形式
3 つなぎ小詞 ト トモニ の前の-u形式
4 つなぎ小詞 ト イッショニ(漢語 一緒 から)の前の-u形式
5 つなぎ小詞 ト ドージニ(漢語 同時 から)の前の時制形式
6 つなぎ ヤイナヤ と ガイナヤ の前の-u形式
7 つなぎ ヤ の前の-u形式
8 つなぎ単語 マニ の前の時制形式
9 つなぎ単語 タビ[ニ]の前の-u形式
10 つなぎ-接尾辞 ゴトニ の前の-u形式
11 つなぎ-接尾辞 カタワラ の前の時制形式
12 つなぎ小詞 ニ シタガッテ の前の時制形式
13 つなぎ小詞 ニ ツケ[テ]の前の-u形式
14 つなぎ小詞 ニ ツレ[テ]の前の-u形式
15 つなぎ小詞 ガ ハヤイカ の前の-u形式
 第Ⅲ部 将来性(後続性)を表すつなぎ要素の前の時制形式
16 つなぎ-接尾辞 マデ[ワ、ニ、ニワ] の前の時制形式
17 つなぎ単語 マエ[ニ、ワ、ニワ、モ、カラ]の前の時制形式
18 つなぎ単語 タメ[ニ、ニワ]の前の時制形式
19 つなぎ単語 ヨーニ の前の時制形式
20 つなぎ単語 ホド の前の時制形式
21 ツモリ-デの前の時制形式
 第Ⅳ部 先行性を表すつなぎ要素の前の時制形式
22 つなぎ単語 アト[デ]と ノチ の前の時制形式
23 つなぎ単語 ウエ[ニ、デ]の前の-ta形式
24 つなぎ単語 ブンデワ(漢語 分 から)の前の-ta形式
 第Ⅴ部 同時性、後続性あるいは先行性の意味を、単一のまたは基本的な意味としてもっていないつなぎ要素の前の時制形式
25 つなぎ単語 トキ[ニ、ワ、ニワ]の前の時制形式
26 つなぎ単語 ウチ[ニ]の前の時制形式
27 つなぎ単語 アイダ[ニ]の前の時制形式
28 つなぎ単語 ナカ[ニ、デ]の前の時制形式
29 つなぎ単語 コロ[ワ、ニ、カラ、マデ]の前の時制形式
30 つなぎ単語 トコロ[ガ、デ、ニ、オ、エ]の前の時制形式
31 つなぎ-接尾辞 ニ[ワ、モ]の前の時制形式
32 つなぎ ナラ[バ]の前の時制形式
33 つなぎ ナリの前の時制形式
34 つなぎ-接尾辞 マギワの前の時制形式
35 名詞 トチュー(漢語 途中 から)、チュート(先行する動詞といっしょに「道すがら」の意を表す)の前の-u形式
36 つなぎ-接尾辞 イゼン(漢語 以前 から)の前の-u形式
37 つなぎ-接尾辞 イジョー(漢語 以上 から)の前の時制形式
38 つなぎ単語 ママ[ニ、デ]の前の時制形式
39 つなぎ単語 カワリニ の前の時制形式
40 つなぎ単語 ジブン(漢語 時分 から)の前の時制形式
41 つなぎ単語 ヒョーシニ(漢語 拍子 から)の前の時制形式
42 つなぎ単語 ハズミニ の前の時制形式
43 つなぎ単語 トタン[ニ](漢語 途端 から)の前の時制形式
44 つなぎ-接尾辞 ヨリ[モ]の前の時制形式
45 つなぎ トモナク の前の-u形式
46 つなぎ単語 トーリ[ニ]の前の時制形式
47 つなぎ単語 カギリ の前の時制形式
48 つなぎ-接尾辞 クライ の前の時制形式
49 ト ミエ[テ]の前の時制形式
50 つなぎ カラ[ニ、ワ]の前の時制形式
51 つなぎ ノデ の前の時制形式
52 つなぎ ノニ の前の時制形式
53 つなぎ小詞 [ノ]ニ[モ]カカワラズ の前の時制形式
54 つなぎ モノノ、モノオ の前の時制形式
55 つなぎ ケレド[モ]の前の時制形式
56 つなぎ ガ の前の時制形式
57 つなぎ シ の前の時制形式
58 つなぎ単語 ホカ[ワ、ニ、ニワ、ニモ]の前の時制形式
59 つなぎ小詞 バカリ[デ、ニ]、バカリデナク、バカリカ の
前の時制形式
60 つなぎ小詞 ダケ[デ、デモ、ニ、ワ]の前の時制形式
 第Ⅵ部 補助語+格接尾辞+補助動詞タイプ:おわりの前の時制形式
61 おわり ヨーニ ナッタの前の時制形式
62 おわり ヨーニ シタ の前の時制形式
63 おわり コト-ガ(-ワ、-モ、-ノ)デキ[ナカッ]タの前の-u形式
64 おわり コト-ニ ナッタ の前の時制形式
65 おわり コト-ニ シタ、コト-ニ シテ イタ の前の-u形式
66 おわり ワケ-デ[-ワ、-デワ]ナカッタ の前の時制形式
67 おわり ワケ-ニワ イカナカッタ の前の時制形式
68 おわり ハズ-ガ(-ワ、-モ)ナカッタ の前の時制形式
 第Ⅶ部 補助語+前に述べられた述語素(プレディカティヴ)を代行するむすびタイプ:おわりの前の時制形式
69 おわり:ホド+むすび の前の時制形式
70 おわり:タメ+むすび の前の時制形式
71 おわり:カラ+むすび の前の時制形式
72 おわり:限定小詞+むすび の前の時制形式
73 おわり:クライ+むすび の前の時制形式
 第Ⅷ部 (「時」の意味をもつ)名詞+むすびタイプ:おわりの前の時制形式
74 おわり:コロ+むすび の前の時制形式
75 おわり:トキ+むすび の前の時制形式
76 おわり:ジブン(時分)+むすび の前の時制形式
77 おわり:トコロ+むすび の前の時制形式
まとめ

第6章 規定語のポジションでの時制形式
 第Ⅰ部 序説
1 印欧諸語とウラル-アルタイ諸語における形動詞の時制
 第Ⅱ部 えせ-規定的な述語文の時制形式
2 名詞化接尾辞-noの前の時制形式
 第Ⅲ部 形式-規定的な述語文の時制形式
3 後置詞 コトによって名詞化された文の述語の時制形式
4 後置詞 モノによって名詞化された文の述語の時制形式
5 補助的な単語 ホー(漢語 方 から)の前の時制形式
6 日本語における名詞化の本質についての問題
 第Ⅳ部 規定文の述語、および独立的な名詞に対する規定的な述語素の時制形式
7 規定語の役割をする動詞の時制形式
8 規定語の役割をする形容詞の時制形式
まとめ

第7章 主文の述語の時制形式
1 テキストの段落における時制使用の問題
2 直説法形式の用法
3 否定法形式の用法
4 様々なテキストの断章における時制形式
5 「歴史的現在」
6 (過去についての発話で)後続の文をはじめる ト、ト ドージニの前の主文の述語の時制形式
まとめ

第8章 時制形式の意味におけるパーフェクトと継続の
ニュアンス、および大過去
 第Ⅰ部 パーフェクト的な意味的ニュアンスをもった動詞形式
1 日本語におけるパーフェクトの問題
2 -ta形式
3 -te iru (oru)形式
4 -te aru形式
 第Ⅱ部 継続のニュアンスをもつ動詞形式
5 継続相についての問題
 第Ⅲ部 二重の先行性または、大過去
6 -te ita形式
7 -te atta形式
 第Ⅳ部 動詞派生の形容詞
8 動詞派生の形容詞 -ta/-te iru
9 動詞派生の形容詞のなかどめ形
10 動詞派生の形容詞の先行時制
まとめ

結論
1 時制のシステムについて
2 時制関係のパラダイム

使用文献リスト
資料の略称リスト
ロシア語動詞要覧
索引
訳者後書き




【著者・訳者紹介】
著者紹介

H. A. スィロミャートニコフ(1911―1984)
〈略暦〉ウクライナ、ハリコフ生まれ。1933年極東大学東洋学部卒業。1938年レニングラード大学大学院入学。1950年ソ連邦科学アカデミー東洋学研究所に入所、終生勤務。
〈業績〉1965年『新日本語の形成』(キリシタン・狂言)、1971年『近代日本語の時制体系』(本書)、1978年『近世日本語の進化』(江戸時代語、博士論文。植村進訳2006)、1972年『古代日本語』(上代語、英語版1981)、1984年『古典日本語』(中古語)。1971年「近代日本語のムード体系」(論集『日本語の諸問題』)。1973年H.И.コンラッド監修『和露大辞典』で、ソ連邦国家賞を受賞。


訳者紹介

鈴木泰(すずき たい)
1945生まれ。博士文学。東京大学名誉教授。日本語史専攻。特に、平安時代のテンス・アスペクト論。ロシア語は30代後半から、国立国語研究所の勉強会に出席し宮島達夫氏の教えをうける。著作には『古代日本語の時間表現の形態論的研究』(ひつじ書房)ほかがある。

松本泰丈(まつもと ひろたけ)
1941年生まれ。埼玉県秩父出身。東京大学大学院人文科学研究科修士課程修了のころより言語学研究会で奥田靖雄のおしえをうけ、ロシア語もまなぶ。専攻日本語学、方言学(奄美語ほか)。著作書には 『連語論と統語論』(至文堂)ほかがある。

松浦茂樹(まつうら しげき)
1947年生まれ。早稲田大学第一文学部(露文専攻)卒業。商社、旧ソ連の通信社に勤務の後、フリーあるいはプロダクションに所属して語学、教育関係の執筆、翻訳、編集に従事。



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